店長
ひょんなことで、俺は、演劇フリーターのヒロセの舞台の打ち上げでキレて帰った。現場にいたヒロセや大学生のマルオやタクマたちからは、その後、鬼のようにLINEが来てたけど、全部スルーしてたからバイトにも行きづらい・・・ 「おい!ぺらいっち!!」…
「なんなんだよ、この店は!!」 店内にお客さんの怒号が響く。 「なになに、どうした?」 俺がホールに出ていくと、大学生のカサハラがお客さんに対応している。 「申し訳ございませんでした・・・」 「もういいっ!もう帰る!」 立ち上がり、店を出ていく…
舞台の稽古で、バイトに入れないと言っていたヒロセが久々にバイト先に顔を出してきた。なにやら色んな人にビラを配りながら話しかけている。 「カサハラ~頼むわぁ~~、 絶対損はさせへんから!」 「いや~、その日はちょっと・・・」 「え~!!じゃぁ、…
先週末、“すずたん”のカラオケ大会も無事終わり、カラオケ大会後の打ち上げは、盛大に盛り上がった。一次会は、焼肉屋で食べて、飲んで、二次会は、もちろん(?)カラオケに行ったけど、酒のせいで声はでんし、マルオはゲロ吐くし、ヒロセは暴れるし、サヨ…
やばい、やっぱりストレス半端ない・・・ きっと、っていうか絶対、ハマーンがうちに居候してるせいだ。 最初は、俺も相手もおっさんだから気を使わなくていいから、少しの間ならなんとかなると思ったけど、一人の時間がないって、意外に結構、辛いかも。 ハ…
今年も残すところあとわずか。でも年末の東京ドームでは、Hey!Say!JUMP、ジャニーズの年越しライブがあるから、俺たちアルバイターは休みなし。そんな俺たちに常連のお客さんからの差入れが。箱を開けてみると、色鮮やかなマカロンが6種類ほどある。 チョコ…
「思い出してしもうた・・・」休憩中、マルオがふいにつぶやく。「思い出してしもうたー!!!」 「なにをや?」 「昨日、youtube見とったら、 丸が田中と菊池とゴールデングラブ賞の 授賞式に出とって・・・」あぁ・・・先日、カープの丸選手の、5年35億と…
アンナと夜景を見ながらの食事は、最高だったなぁ・・・。その日の夜は嬉しすぎて眠れなかったほどだ。次はいつデートできんのかな~そんなことを考えながらバイト先に出勤すると、店長に後ろから声をかけられる。「ちょっと!なにデレっとしてんの?! 準備…
「オノちゃん、ちょっと まかない何か作ってくれる?」 「はい、わかりました!」バイトのまかないは、いつも基本店長が作るのだが、今日は東京ドームが「テイラー・スウィフト」のライブがあるため、うちの店も、少し忙しく、店長が作る暇がないらしい。店…
疲れた・・・ 今日は、忙しかった・・・夜の激しいピークを終え、一瞬お客さんが引いていくと、大学生たちがダベりながら作業を始めた。「就職したくねぇ~」そうボヤくのは3年生のカサハラ。それに2年のトミー、1年のマルオも加わる。「あ~ダるいっすよね…
「あいつの彼女、 絶対『サゲまん』だよな~」店長は、休憩所で寝ているヒロセを指さしている。「あいつ、いっつも寝てるじゃん?」 「まぁ、そうですね」 「毎晩彼女が求めてくるらしいよ。 それも2回も3回も」 「え?!」羨ましいやら妬ましいやら。でも毎…
東京ドームには、競馬の場外馬券場WINSがあるため、バイトの大学生たちは競馬部というものを作り、休憩になるとみんなの予想大会が始まる。俺も直感で参戦。「おれ、この馬にしようかな」 「いや、今日は1600mの短距離だから、 適正はこの馬だね。 前走で4…
「あいつ!なんで来ねえんだよ!!!」朝から店長が怒りMAXだ。糖尿病を患っている派遣社員ハマーンが月曜から2日間出勤していないらしい。月曜、火曜と「病院に行く」と電話してきたらしいが3日目の今日はついに連絡もつかない。「クソっ!しょうがねぇな…
「ちょっとオノくん、来てくれる?」先日、朝に出勤してすぐに店長に呼ばれた。その横にはオレンジ色の髪をした男の子が。いかにもチャラそうだ。「この子、今日から働くタクマくん」「うぃ~す。おねしゃーす」でも中々端正な顔立ちをしてて坂口健太郎にち…
「ユイちゃん、まじかわいい」演劇フリーターのヒロセは、舞台で知り合った年下彼女を自慢してくる。よっぽど自慢の彼女なのか、以前、店にもわざわざ連れてきて、見せびらかせられた。今日も嬉しそうに彼女の写メを見せてくる。 こいつ・・・なんでこんなカ…
ある時、お店に病院から電話がかかってきた。社員の健康診断の結果についてで、その中でも寿司職人ハマーンの血糖値が異常に高いという。平常な人が80くらいのところ、ハマーンは300あるという。原因は明らかに、毎日びっくりするほど、まかないを食べ、毎晩…
「店長さんいる?」 昼のピークが過ぎ、休憩しようかというときに、紫色に髪を染めた白衣のおじいさんが店に入ってきた。バイト先は飲食店なので、定期的に外部の「監査」が入り、抜き打ちで店内の衛生面をチェックされる。ちょうど、店長が会議に店を出た後…
「みなさんでどうぞ~」毎日のように店に来てくれる常連客ハラダさんは、会社の経営者らしく、いつも気前よく差入れをくれる。今日はあのハーゲンダッツ!ハーゲンダッツなんて高級品は、自分では買う事はほとんどないので、ホントにありがたい。「わぁ~、…
「オノちゃん、ちょっといい?」急に何だろう。休憩室についていくと、重々しい表情をした店長が椅子に座っている。 「頭痛いから、 ちょっと肩揉んでくれない?」「いいですよ」昔から母親の肩をよく揉んでいたのもあって、腕にはそこそこ自信がある。「い…
「オノくん、写真持ってきた?」店長にそう言われたが、なんのことだかさっぱり分からない。「証明写真」あー!!忘れてた!建物に入るための従業員証を作るから、今週末までに証明写真を撮って来いって店長から言われてたんだった。「えーー!たのむよ~明…
「ぺらいちさん、今日終わった後、 飲みに行かないスか」大学生の中でも酒好きなトミーは、やたらと飲みに行きたがる。「だれが来るの?」「今日シフト入ってる人っス。 ねぇ、たまには行きましょうよ~」お酒があんまり好きじゃない俺は、日頃飲み会には消…
店長が、ふいに「オノくんは結婚とかしないの?」と聞いてきた。そんな予定はないと答えると、「しないほうがいいよ・・・」としみじみと言ってきた。店長には娘が二人いるが、上の娘の高校受験で、家庭内が、特に奥さんがピリピリしているらしい。疲れて帰…
「オハヨーーー!!」後ろから急にやたらとデカい声がした。振り返ると、大学生ほど若くはない20代半ばくらいの男が満面の笑みで立っている。髪は坊ちゃん刈りで、よく見ると顔には所々ニキビの痕が残っている。 「俺ヒロセ!!! ヨロシュウ!!」男は、そ…
時が来た!金がない。夢もない。女もいない。男32歳、フリーター生活始めました。 「えっと、オノくんね・・・」「はい」「32歳」「はい」「へ~、国立大学出てるんだ」・・・からの~。「今まで、何してたの?」 俺は今、居酒屋のアルバイトの面接を受けている…