伝説
東京ドームには、
競馬の場外馬券場WINSがあるため、
バイトの大学生たちは
競馬部というものを作り、
休憩になると
みんなの予想大会が始まる。
俺も直感で参戦。
「おれ、この馬にしようかな」
「いや、今日は1600mの短距離だから、
適正はこの馬だね。
前走で4着なんだけど
最後追い込んできてたし、
今回絶対来る。
今回得意の左回りだし。
しかも毎年このレースでは
ディープ産駒
(父親がディープ・インパクト)
が勝ってるってデータもあるから」
膨大なデータを駆使し、
もっともらしい解説をするのは店長。
「へぇ~そうなんですか。
じゃぁそっちの方がいいか」
にわかファンの俺はホイホイと
店長の予想に乗ろうとする。
「止めた方がいいですよ」
そこへカサハラが止めに入る。
カサハラ曰く
過去10戦ほど連続で、
店長が本命とする馬は
負けているという。
中にはダントツ1番人気で
優勝確実とされていた馬でさえ、
店長の予想に選ばれ、
負けてしまうという伝説まで作った。
それからというもの、
大学生の間では、
店長の買った馬を外せば勝てるとさえ
言われるようになっていた。
「今回は違うんだな~」
と豪語する店長だったが、
さすがに、そんなクソ予想屋の言うことを
聞くわけにはいかない。
俺は店長の予想する馬をはずし、
最初の直感の馬に賭けた。
そしてレーススタート。
俺の買った馬は、
出だしは良かったものの
後続にどんどん追い抜かれビリ。
そしてなんと、
店長の一番推していた馬が
大差で勝利。
10連敗の店長の悪運を
凌駕するほどツイてない俺って・・・
「うぁ~~~!」
横でなぜか店長の
雄叫びが聞こえる。
「え?店長の買った馬じゃないですか!」
「・・・いや~俺、
最後の最後で変えたんだよ。
オノくんと同じ馬に」
「え?」
・・・店長の予想する馬は外れる。
その伝説はやはり本物だった。