もうバレてるのに
バイトの大学生カサハラは、
同じく大学生のモッチャンと
付き合っている。
そのことはバイト先の
ほとんどの人が知っている。
度々、お互いの家の合い鍵を
渡しているのも目撃されており、
二人が付き合っていることは、
周知の事実。
だが、当の本人は、
まだ気づかれていないと
思っているのか、カサハラは
そのことをどうやっても
隠そうとする。
ある日の帰り道、
俺はカサハラと一緒になった。
俺の家とカサハラの家は、
同じ線の反対方向。
駅の改札を抜け、カサハラは
「じゃぁ、こっちなんで」
と反対方向に分かれた。
その後、俺はエスカレーターに
乗る前に、トイレに立ち寄った。
そして、上に上がって電車を待って
いると、こちら側のホームの端に、
なぜかカサハラがいる。
そういえば、モッチャンの家は
俺と同じ駅だったような・・・。
なんだよ、
今日は彼女の家でお泊りか。
わざわざ家の方に帰ると見せかけて
こっちに来るなんて・・・。
俺が「おーい!」
と声を掛けようとした時、
カサハラはこちらを
チラッと見たかと思うと、
スッと柱の陰に隠れてしまった。
いや・・・、
もうバレてるって・・・。
カサハラ・・・、
おまえがそこまで隠したい
のなら、俺も何も言うまい。
俺は気づいていないフリをして
電車に乗った。