ぺらいちの新人教育
「じゃぁ、アンドゥ君は、
オノ君が担当で」
「えっ・・・!」
店長の指示で新人のアンドウ君には、
俺が教えることになった。
「よろしくお願いします」
アンドウ君は、見た目は、
正直怖そうだけど、
話してみると意外と、ってことも
あるかもしれない。
俺は無理に明るくフレンドリーに
話しかける。
「アンドウ君、体でかいよね~?
筋トレとかしてるの~?」
「いえ」
「じゃぁ・・・スポーツとかしてるの~?」
「いえ、してないです」
アンドウ君は、何を言っても
短い返答のみで、
なかなか話が続かない・・・。
まぁ、入ったばっかで
緊張してるのかもな。
「大学では何て呼ばれてるのぉ?」
「別に普通です」
「そーなんだ~、じゃぁ、
あだ名、欲しいっしょ?」
「いや、別に」
「またまたぁ・・・
じゃぁ・・・ヒロセも言ってたけど、
アンドゥでいい?」
「別になんでもいいです」
「あ~・・・」
・・・なに??この塩対応。
俺、もしかして嫌われてる??
「大学では、何を勉強してるの~?」
「法律です」
「へぇ~法律!難しそうだねぇ・・・」
「難しいですね」
アンドゥは淡々と喋っている。
「テストの点数5点足りないだけで、
その科目の単位、落としましたから」
「えっ!5点だけで?」
「それで留年です」
「あ~~・・・・」
そうだった・・・
アンドゥ、留年してるんだった・・・
「それで内定も取り消しですよ」
「そっか・・・」
うわぁ・・・やべぇ。
アンドゥの表情が怖い・・・
なんか、どんどん
不機嫌になってる気がする・・・。
やっぱこの話題はタブーっぽいな・・・
「アンドゥ、ここ以外も
バイトしてるんだって~?」
「まぁ・・・」
「やっぱ、遊ぶお金もいるもんね~?」
アンドゥは、バカにしたように鼻で笑う。
「フッ・・・いや、
稼がないといけないんで、学費」
「え・・・?学費?」
「さっきも言いましたけど、
留年したんで」
「あ~~~そっか・・・」
アンドゥは、呆れたような
表情で俺を見ている。
ちょ、なんなのコイツ。
留年しといて、なんでそんなに
エラそーなんだ??
こっちが下手に出てたら、
調子に乗りやがって・・・
っていうかなんで
俺がこんなに
気を使わなきゃいけないんだ??
なんか、だんだんイライラしてきた。
「じゃぁ、このオーダー
やっといて」
おれは、ぶっきらぼうに言う。
「分かりました」
すると、アンドゥは
表情を変えることなく、
淡々と作業を始める。
「できました」
俺は、アンドゥが作った料理を
チェックする。
はいはい。
ま、さっきサラッと教えただけだから
どうせ、できるわけ・・・って
できてるし。
いや、そんなわけは・・・
俺は、嫁に対する姑のように
さらに隅々までチェックする。
うん、料理に火は通ってるし、
盛り付けもキレイ・・・
完璧じゃねぇか!!!
・・・え、なに、この可愛くない奴!