ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

    f:id:peraichikun:20190105020429j:plain f:id:peraichikun:20190105020439j:plain

ありがとう、ゲン

ゲンの心臓が止まった、と連絡があって、
俺とマルオは、“すずたん”と
急いで病院に向かった。

病院の駐車場に車を停め、
病棟の下に駆け寄ると、
時間外だからか、入り口が閉まっている。
慌てて横のインターホンを押すと
すぐさま、病院の
研修生らしき女性が飛んできた。

「こちらです!!!」

足早に歩いていく女性に
案内された病室に入ると、
部屋の中心に置かれた寝台に
ゲンが寝かされており、
そこに、5~6人のお医者さんが囲み、
1人の医者がゲンに
心臓マッサージを施している。

「フッ!フッッ!フッッ!!!」

ゲンは、意識がないのか、
目を閉じたまま、口を開けている。

「っゲぇぇぇぇン!!!」

部屋に入った途端、“すずたん”は、
寝台に駆け寄る。

「ゲぇぇん!!!
 頑張れぇぇぇえ~~~・・・・ぅぅぅ」

“すずたん”は泣きながら、声を絞り出している。

「頑張れぇっぇぇぇぇ!!!」

俺とマルオも、ゲンに必死で呼び掛ける。

ゲン・・・頼むから、頼むから
目を開けてくれぇぇぇ・・・・

「いちっ、にっ、さんっ!しっ」

「・・・秒経過です。交代です」

「フッ!!フッッ!!フッッ!!!」

俺たちが、ゲンに呼びかけている間も、
お医者さんが交代で
心臓マッサージを続けている。

「ゲぇぇぇん!!!頑張れぇぇぇ!!!」

それから、さらに何人かの医者が
心臓マッサージを繰り返す中、
医者の一人が、“すずたん“を呼び止める。

「・・・よろしいですか?」

「ぅぅぅ・・・はい」

「・・・いま、1時間ほど、
 心臓マッサージを

 続けているんですが・・・」

「・・・はい・・・」

「これ以上続けても・・・
 残念ですが・・・」

「・・・・そう、ですか
 ・・・わかりました。

 ありがとうございます・・・」


そんな・・・
そんな・・・
ゲンが・・・そんな・・・

 

 


ゲンは、体をキレイにしてもらって
四角い大きな箱に入っている。
ゲンの顔は笑っているようで、
今にも目を開けそうだ。

f:id:peraichikun:20190824015026j:plain

 

ゲン・・・

箱を持つと、
途端に、また、涙が溢れてくる。

「ぅ、ゲぇぇぇぇん・・・」

数日前、朦朧としながら
入っていた酸素室のアクリル板の小窓から
しきりに出ようとしていたゲンの姿が
頭に浮かぶ。

ゲン・・・、帰りたかったよね。
ごめんね・・・
痛かったよね、苦しかったよね・・・
なんにもしてやれなくてゴメン・・・。
もっと、一緒にいてあげたかった。
もっと一緒に遊びたかった。
もっと一緒に散歩に行きたかった。


遅くなったけど・・・
一緒に家に帰ろう・・・


それから、俺たちは、ゲンを
“すずたん“ちに連れ帰った。

しばらくして、連絡を受けた
ヒロセやタクマやサヨちゃんも
次々と、“すずたん”ちに駆け付け、
ゲンと対面し、泣き崩れる。

「うぅぅぅぅ・・・・
 なんでやぁぁぁ、げぇぇぇん・・・」

「お医者さんが・・・1時間も、
 心臓マッサージしてくれて・・・
 ゲンも、頑張ったけど・・・
 ダメじゃった・・・ぅぅぅ」

説明しているマルオも泣いている。

それから、しばらく、俺たちはみんなで
箱の周りに座り込み、
ゲンの頭や体を撫でてやる・・・。

ただ泣きながら、
誰も何も話さないまま、
時間が過ぎた。

f:id:peraichikun:20190824015336j:plain

 

もう泣き晴らしたと思っても
ゲンの顔を見る度に、涙が溢れてくる。

いたずらっぽく笑うゲン、
ワガママにリードを引っ張るゲン、
オヤツ欲しさに甘えてくるゲン・・・

色んなゲンの姿が浮かんでくる。
さみしい・・・さみしいよぉ・・・ゲン。

「でもさ・・・」

“すずたん”が口を開く。

「ゲンは・・・幸せ者だよ。
 こんなにも、みんなに愛されてね・・・」

そうか・・・
まだ、実感もないし、
うまく気持ちの整理もつかないけど、
ゲンが少しでも、幸せだったんなら、
救われる気がする・・・

“すずたん”は、俺たちの顔を
1人1人見る。

「それに・・・
 こうやって、みんながここに
 集まるようにしてくれたのも
 ゲンのおかげだと思うしね・・・
 私は、もう、この子には、
 感謝しかないよ・・・」

いや、感謝したいのは、
俺たちの方だ・・・
ゲンと出会えて、
とっても癒されたし、
楽しかったし、幸せだったよ。


ありがとう・・・ゲン。

f:id:peraichikun:20190824015359j:plain



ありがとう

まだ実感もあまりないけど、
少しは落ち着いた・・・ので、
あの日の事を書き残しておこうと思う。

ゲンが入院してから3日間、
俺たちは、ゲンの様子を見に
病院に足を運んだ。
タクマやサヨちゃん、ヒロセも時間を見つけて
代わる代わる見舞いに来てくれてたらしい。

f:id:peraichikun:20190822024514j:plain

 

俺とマルオは、“すずたん“と一緒に、
その日も、朝から
ゲンの見舞いに病院に行った。

相変わらず、ゲンとは、
酸素室のアクリル板の小窓越しにしか
触れられなかったけど、先生によると、とりあえず、
腎臓の異常数値が
正常値に戻ってきたので、
もう少し様子を見ましょう、ということだった。

良かった・・・
もう少し時間はかかるかもしれないけど
とにかく、一日でも早くゲンに元気になって
帰ってきて欲しい・・・

f:id:peraichikun:20190822024533j:plain

 

それから、 “すずたん“ちに帰ってきたのが、
午後8時ごろ。
家に着くと、“すずたん“が、カツ丼の出前を
頼んでくれた。

「二人とも、毎日、ありがとうね。
 さぁ!食べて食べて」

「ありがとうございます!」

“すずたん”は毎日、気丈に振る舞ってるけど、
内心穏やかではないのは分かってた。
俺とマルオも、ゲンが入院してから数日は
気が気がでなく、食べ物も
なかなかノドを通らなかった。
でも、やっとゲンの症状も
なんとか峠を越した・・・という感じがして、
カツ丼を3人で、頬張ろうとしていたところだった。

“すずたん”ちの家の電話が鳴った。

ドキッ・・・

病院からは、何かあったら連絡が
来るようになっている。
だから、ここ数日は、“すずたん”ちの電話が鳴ると
毎回、何かあったんじゃないかとビクビクし、
その度に、セールスや営業の、何でもない電話だと分かり
胸を撫でおろしていた・・・

「私が出るよ。・・・・はい、スズキです」

今回も、きっと営業だろう・・・
そう思い、俺はマルオと
明日は、病院に何時に行くか、
話をしていると、隣の部屋から
すずたんの声が小さく聞こえる。

「・・・・はい・・・・わかりました」

戻ってきた“すずたん”は、無理に冷静を
装おうとしているのか、顔がひきつっている。

「ゲンの容態が・・・急変、したらしい」

「・・・・え?!」

「さっき、心臓が止まった、・・・って・・・
 今・・・心臓マッサージをしてるらしい・・・」



・・・・????

頭が真っ白になり、何が何だか分からない。

・・・・え?どういうこと?
心臓が止まった・・・?
昼間会った時には、元気だったのに・・・
数値も正常に戻ったって言ってたのに・・・

 

「フゥ~~~・・・・」

“すずたん“は、椅子に腰かけ、
大きく息をつく。

「とりあえず・・・カツ丼食べて・・・」

“すずたん“も、混乱していたのだろう、
俺たちに、カツ丼を食べる様に促す。

「・・・いや!すぐ病院に行きましょう!」

f:id:peraichikun:20190822024554j:plain


俺とマルオが、立ち上がると
“すずたん“も、ハッとして、
ゆっくり立ち上がる。

「・・・うん。行こう」

車を運転している間も、
一秒でも早く病院へ・・・と
はやる気持ちと、
とにかく落ち着け落ち着け・・・と
言い聞かせる自分が
ごちゃまぜになっている。
後部座席からは、
マルオのすすり泣く声が聞こえる。



あぁ・・・やっぱり、だめだ。
思い出すと、辛くなってきたので・・・
この後は、また書きます。


早く、おうちに帰ろうな!

一昨日から、ゲンは、
大学の動物病院に入院している。

ここ最近、ゲンの症状は、
ずっと低空飛行ではあったけど、
一昨日くらいから、
また、グッタリとなってきた・・・
今まで、近所の小さな動物病院で
診てもらっていたが、
病気の原因もイマイチ特定できず、
ゲンの症状も回復しない・・・

そこで一度、機材も充実している
大きな病院で診てもらおう、ということで、
“すずたん”と俺とマルオで
病院に連れて行くことに。

f:id:peraichikun:20190816003559j:plain

 

これで、もしかしたら
ゲンの病気の原因が分かって
治療してもらえるかもしれない・・・
そんな淡い期待も持ちながら、俺たちは、
ゲンを抱き、待合室で待っていた。

すると、病院の先生が、
ぐったりしたゲンの様子を
見るなり慌てはじめる。
そして、
「すぐに輸血しますよ!!!」と、
ゲンを別室に連れていく・・・


・・・・・・・・・・え?


残された俺たちは、
ただ茫然とするしかなかった・・・

まさか・・・!
そんなに悪かったなんて・・・・・・・・

マルオは、ただただ泣き続けていた・・・
俺は、「大丈夫、大丈夫」と
自分に言い聞かせ、動揺する心を
落ち着かせるのに必死だった。

f:id:peraichikun:20190816003646j:plain


“すずたん”だけは、つとめて冷静に、
最悪の状況も有りうる、と
ヒロセとタクマとサヨちゃんに、
一応連絡を入れていた。

それからどれだけ時間が経ったのか・・・

「輸血で、とりあえず、状態は落ち着きました」

先生に、そう言われた瞬間、
堰をきったように涙が溢れてきた。

よ、良かった・・・

・・・とにかく助かって良かった・・・

「ゲンに・・・会えますか?」

先生に案内され、病室に入ると、
酸素室という、透明な
アクリル板の扉がついた無機質な箱が
いくつも並んでいる。その中の一つの箱の中で、
横になっているゲン。

「ゲーーーン!!!」

ゲンの体と鼻には、細い管が2本か,3本伸びている。
管の伸びる先には、波形が表示される機械が
あって、絶えずピッ、ピッと、電子音が鳴っている。

アクリル板の扉の真ん中には、
小さい小窓が開閉できるようになっていて、
すずたんが、そこからゲンを少しなでる。

「ゲン・・・よく、頑張ったな」

f:id:peraichikun:20190816003828j:plain

 

“すずたん“が触れても、ゲンは、
意識が朦朧としているのか
かすかに目を開けるだけで、反応しない。

「あぁ、ゲン、辛かったね・・・」

「ゲ――ン・・・なんか、
 狭いところに入れられて
 かわいそうじゃのぉ・・・」

俺とマルオも代わる代わる声をかける。

先生によると、とりあえず最悪の状況は
越えたが、依然、いつ
症状が急変するか分からないとのこと。

検査の結果、ゲンは、
肺炎など複数の病気になっていて、
原因は特定できないらしい。
頭が下がってしまうのは、
または脳の異常、もしかすると
何か腫瘍か何かがあるかもしれない、
ということらしい。
ただ、手術になると、全身麻酔で体力を使うし、
リスクが高い・・・。
とりあえず、入院して、
少しずつ体力を回復させていきましょう、
というような説明だったと思う。

「じゃぁ・・・帰るね。ゲン・・・」

俺が小窓を閉めようとしたその時、
寝ていたゲンがムクッっと起き上がり、
頭をうつむいたまま、
小窓に頭を擦り付けてくる。

「ゲン・・・ダメよ。酸素室に入っとらんと・・・」

俺は、胸が裂けるような思いで、小窓を閉める。

「ねぇ・・・やっぱりゲン、
 連れて帰っちゃぁ、
ダメなん?」

マルオが泣きそうな目で俺を見てくる。
そりゃぁ、俺だって、できるもんなら、
連れて帰りたいよ・・・

それからしばらく、
ゲンは頭を小窓に擦り付けてくるので、
“すずたん”が声をかける。

「ゲン・・・今は、寝て休まないと・・・
 また明日も来るから」

そう言い聞かせるようにつぶやくと、
不思議と言ってることが分かったのか、
ゲンは、やっとあきらめ、横になり、
力尽きたように、スヤスヤと眠り始める。

「じゃぁ、また明日ね。ゲン・・・」

俺たちは、後ろ髪を引かれる思いに
なりながらも、病室を後にした。

忘れてても・・・

ゲンが、体調を崩してから、
2か月近くになる。

ここ数日、俺たちは、
毎日交代で、“すずたん“ちに行って、
泊まり込みで、
ゲンのお世話をしてるんだけど・・・
これが、なかなか結構大変。

最近のゲンは、認知症のせいか、
ほとんど眠れないらしく、
数時間で、すぐ起きて、ワンワンと鳴きだす。
そうなったら、
少し歩かせて様子を見て、
また寝かしつける・・・
“すずたん“は、毎日、
そうやっているうちに、
寝不足が続いて、体調を崩してしまった。

昨日も、夜中、
リビングでウトウトしていると、
急に、ドンッと大きな音がして、
ゲンの鳴き声が響き渡る。

ワン!ワン!・・・ワン!!!

行くと、ゲンが倒れたまま、鳴いている。

f:id:peraichikun:20190807051858j:plain


元々ヘルニア持ちだったのが
この期間で、さらに、足腰が弱くなり、
自分で起き上がれないことも多くなった・・・。

「わぁ~、またコケとる・・・ヨイショっ」

駆け寄って、ゲンを起こすと、
ゲンは、うつむきながら、
またフラフラと歩き出す。

俺は、ゲンの進行方向に回り込んで、
ゲンの顔をまじまじと見つめる。
ちょっと前まで、あんな若々しかったのに
いつの間にか、すっかりヨボヨボの
お爺ちゃんの顔になったなぁ・・・

f:id:peraichikun:20190807051916j:plain

 

「お~い、ゲンちゃ~~ん」

俺の声にも、反応せず、うつむきながら
素通りしていくゲン。

以前は、マルオのことが大好きで、
マルオを見つけただけで、
飛び掛かっていったのに、最近では
マルオにも反応しなくなった・・・

「ゲン・・・寝られないのか?
 ・・・どっか痛いのか?」

なんともやりきれない気持ちになって、
俺は、後ろから、ゲンを抱きしめた。

f:id:peraichikun:20190807051929j:plain



夏前から、急に体調を崩したゲン。
長いこと、お気に入りの座布団の上に
寝転がって動かなかったのが、
最近は、体調は大分落ち着いてきて、
逆に、認知症も手伝って、四六時中、
家の中を歩き回るように。
でも、トイレも分からなくなったみたいで、
よく部屋の中でも、
ウンチやオシッコを漏らすように・・・。

f:id:peraichikun:20190721021321j:plain

 

そこで、俺や、マルオ、
タクマ、サヨちゃん、ヒロセで
交代で、ゲンのお世話や、部屋の掃除を
させてもらうことに決めた。
その代わり、“すずたん“は、
いつも、俺たちのために、
すき焼きや焼き肉を
用意してくれているけど・・・
一体、どっちがお世話されてんだか・・・

「いや~、有難いけど、
 こんな年寄り2匹なんて

 ほっといていいんだよ~?
 私が君らくらい年は、毎晩遊びまくってたよ?
 若いうちは、遊ばないとぉ~ハハハ!」

f:id:peraichikun:20190721021332j:plain

 

“すずたん“は、
俺たちに気を使わせないように、
そうやって無理に明るく振る舞ってるけど、
内心、不安と心配で、いっぱいなんだろうな・・・。

それに、実は、
俺は、こうやって、夜な夜な
みんなで集まれて、なんだか嬉しい。
カラオケ大会の時の“すずたん応援団”ならぬ
“ゲン応援団”だ。

ゲンには、早く元気になって欲しいし、
前みたいに走り回れないのは寂しいけど・・・
ゲンがまた、みんなを
繋げてくれたような気がするんだよな。

いきなりお漏らし

この前、タクマとサヨちゃんのカップルが、
ゲンに会いに来た。

俺は、サヨちゃんのいない隙に、
タクマにこっそり、話しかける。

「そういえば、タクマ。
 サヨちゃんとは、うまくいってんの?」

「誰に聞いてんの?俺だよ?
 どんな女もイチコロだって」

f:id:peraichikun:20190714021425j:plain

 

相変わらず、すごい自信・・・。

「じゃぁ、もうキスもしたんだ?」

「え?それは・・・まぁ」

タクマは、モゴモゴしながら、
話をウヤムヤにして、トイレに立つ。

「ゲンさんのお具合は、どうですか?」

サヨちゃんが、すずたんに質問している。

「う~ん、まぁ、ちょっとずつだけど、
 元気には、なってるかなぁ。
 でも、最近、よく座布団にお漏らしするんだよ・・・
 もしかしたら認知症もきてんのかもしれない」

え・・・ゲンは、今まで、
外でしかオシッコせんかったのに・・・

すると、廊下からタクマの叫ぶ声が聞こえる。

「あ~~~!!ゲン!!ダメだって!!!」

俺たちが向かうと、
廊下には、大きな水たまりが。
オロオロするタクマ。

「なんか、ゲンが廊下で、
 オシッコしだして・・・!
 え?どうしたらいいの?コレ?ねぇ?」

「タクマさん、通してください」

すると、タオルを持ったサヨちゃんが、
ゲンを拭き始める。

「え?!あ・・・、素手で?」

「大丈夫ですよ。洗えば済むんですから」

サヨちゃんは、動揺しているタクマを前に、
手際よく、廊下のオシッコも、
雑巾でふき取っていく。

f:id:peraichikun:20190714021444j:plain

 

あれ・・・
こう言っちゃなんだけど意外・・・

「昔から、乗馬をやっておりましたので、
 わたくし、こういう事には
 慣れておりますので・・・」

乗馬・・・さすがお嬢様・・・。

「ほら!タクマさんは、
 この汚れたタオルと雑巾を
 お風呂場に持っていってください。
 わたくしは、ゲンさんを洗いますので」

サヨちゃんは、タクマにテキパキと
指示を出している。

「はい!!」

あちゃー、タクマ・・・
あんなにエラそーに言っといて、
完全に尻に敷かれてんじゃん・・・。

「ほら!ぺらいちさん!
 突っ立ってないで、
 新しいタオルを持ってきてください!」

「は~い・・・」

あちゃー、こっちにも、とばっちりが・・・

カープが勝てなくなった原因は・・・

「あーあ・・・今日も負けか・・・」

f:id:peraichikun:20190708224646j:plain


只今カープは、8連敗中。
(記事を書いてる途中に、9連敗になった・・・)
つい1か月前まで、首位を爆走してたのに、
あれよあれよという間に、4位に転落。
シーズン序盤の絶不調を思い出させる
出口の見えない長~いトンネル。

俺と同じく、カープファンの
マルオが口を開く。

「前に、ワシ、勝ち過ぎても
 つまらんって言っとったけど、
やっぱ負け過ぎるのも、
もっと、つまらんのぉ・・・」

「そうじゃのぉ・・・」

「う~ん、ぺらいちさん。
 一番の原因は、なんなんですかねぇ?」

「俺は、全ては、
 3連覇が原因じゃと思うけどね」

「え?!3連覇ですか?!」

「うん、そう、今のカープは、
 深刻な貧打じゃろ?」

「はい、誰が打席に立っても打てる気がせん。
 特に、チャンスで全く打てん・・・
 選手もヤル気が無くて
 打てんわけじゃないんじゃろうけど・・・」

「でしょ?やっぱ選手一人一人に、
 三連覇したプライドがあると思うんよね。
 カープは、真面目な選手が多いから、
 俺がここで打たないと!って気持ちが、
 逆にプレッシャーになって、体が固くなる。
 で、よけいに、打てなく
 なっとんじゃないんかね?」

f:id:peraichikun:20190708224654j:plain

 

「なるほど~」

「あと、緒方の采配もね」

「監督も?」

カープの緒方監督は、選手時代から、
義に厚く、性格は真面目で頑固。
今季は、絶不調の選手を我慢して使い続けるも、
選手の調子は上がらず、
相手の意表をつこうとした戦略も、後手に回ることも多く・・・
監督交代を望む声もチラホラ・・・

「監督の宿命ですかね。
 チームがダメになった途端、批判される・・・
 3連覇しとるんですけどね・・・」

「それなんよね。
 根拠のない自信ならともかく、

 3連覇っていう実績ができちゃった分、
 プライドもあるし、よけいに、
 今までの方法を、
なかなか変えれん
 部分もあるんじゃないか、思うんよね」

「なるほど~、3連覇が、
 まさかの足枷になっとると・・・

 じゃけ、選手も監督も、
 破竹の勢いだった、ここ3年間は忘れて、

 0から言う気持ちが大事、と!」

「そういうことよ!!」

とまぁ、ただカープが
好きなだけの素人の2人が
エラそーに、こんなことを
話したところで、じゃけど・・・

「でも、ゲンが、体調崩し始めたのと
 リンクするように、カープも調子を、
 崩し始めたような気がするのぉ・・・」

「確かに・・・」

関係ないかもしれんけど、
ゲンの快復のためにも、
カープには、ここから
這い上がってもらわんといけん!!

初心に戻って、巻き返せ!カープ!!!

f:id:peraichikun:20190708224709j:plain




家族になろうよ

急に体調を崩した柴犬のゲン。
ひとまず、震えも止まり、
ご飯も少しずつ食べれるようになった。
(相変わらず、病院でタダでもらった
不味いドッグフードしか食べんけど)
でも、まだ、座布団に突っ伏している時間は長く、
時たま、震えも起きる。

「震えとる・・・大丈夫かのぉ?ゲン・・・」

f:id:peraichikun:20190703015532j:plain


マルオは、ここんとこ、
ほとんど毎日“すずたん”ちに来ている。

「まぁ、言っても、ゲンも、
 もう年だからな~。
 私が先か、ゲンが先かって
 感じだろうなぁ~ハハハ」

“すずたん”が、笑いながら言うと、
マルオは、泣きそうになっている。

「そんなぁ~・・・
 やめてくださいよぉ~・・・」

「ハハハ!冗談だよ~!」

なんとか回復傾向にあるが、
冗談抜きに、俺も一時は、もしかして、
このままゲンは、死んじゃうんじゃないか・・・
って思ったくらい心配した。
不思議なことに、
目が虚ろなゲンを見ていると、
なんだか本当の兄弟が倒れて
しまったような気持ちにさえなった。

そんな風に、ゲンを心配してくれるのは、
マルオや俺だけではなく、
この1週間ほどの間は、
ヒロセや、タクマとサヨちゃんも、
入れ替わり立ち代わり、
ゲンの見舞いに来てくれた。

ゲンって、ホント愛されてるんだなぁ・・・

でも、よく考えてみると、
ゲンの様子を心配して見に来てくれるのも、
“すずたん”を町内の老人会
カラオケ大会で優勝させるため、
みんなで必死に応援した
“すずたん応援部”のメンバーだ。

あの大会から、はや3か月くらい経つけど、
あの時の楽しい思い出や、
熱い気持ちは、今でも思い出せる。

f:id:peraichikun:20190703015555j:plain

 

みんなで、毎日のように
“すずたん”ちに集まって、
ワイワイ喋りながら飯食って、
一緒にカラオケ練習して、
どうやったら“すずたん”が
カッコよく見えるかを
あーだこーだ言い合ったり・・・
まるで、家族みたいな感じだった。

・・・そうか・・・家族。

最近では、あの時のように、みんなで
頻繁には集まれないけど・・・
いつの間にか、自分の中で
“すずたん”やコイツら、
そしてゲンのことを、
家族のように思うように
なってたのかもしれない。

まさか、東京に1人出てきて、
自分の大家さん、
バイトの大学生たちとのことを
家族のように思うなんて・・・

なんかちょっと、
こっ恥ずかしい気もするけど・・・
幸せなことかもしれないな。



不味いドッグフード

ゲンが体調を崩したことを、マルオに知らせると
すっ飛んで来た。

「ゲンッ!!!」

ゲンは、マルオが大好きなので、
いつもなら、マルオが家に入ってきた瞬間、
飛び掛からんばかりに喜ぶのだけど・・・
座布団に顔を伏せたまま、動こうとしない・・・

「ゲン~~~、大丈夫なんか~?!
うぅ・・どぉしちゃったんじゃ~・・・」
「そうなんよ・・・つい、この間まで
あんなに元気じゃったのに・・・」

マルオは、半べそになりながら、ゲンの前に
座り込む。

「ほら!『ちゅ~る』だよ~!おいで~」

f:id:peraichikun:20190628011130j:plain

 

マルオが、ゲンの好物だった
液状のオヤツ『ちゅ~る』を
開けるが、ゲンは座布団に顔をうずめたまま、
全くの無反応・・・。
あぁ・・・『ちゅ~る』でも、ダメか・・・

ゲンは体調を崩してから、
食欲減退が激しい・・・。

ネットで、ドッグフードを
レンジでチンして温めてあげると
匂いが強くなって、犬の食欲が出るというのを見て、
俺と“すずたん”が、試してみたりしたけど、
それもダメだった・・・

俺は、この前ネットで買った鹿肉を
ゲンの口に持っていく。
「ゲン、嫌がっとりますよ・・・」
「う~ん・・・」

苦しいじゃろうけど、なんか食べんと・・・

「ほら~いい匂いじゃろ~?
食べようね~。
じゃないと元気になれんよ~」

俺が、半ばムリヤリ、
ゲンの口に押し込もうとすると、
マルオが隣で泣きそうな声を出す。

「そんなムリヤリ食べさせちゃぁ、ゲンが
かわいそうじゃぁ~・・・」

俺だって・・・
泣きたいくらいだよ・・・

「元気になるには、
ムリヤリにでも食べさせんといけんのんよ!」

俺は、なおもゲンの口に鹿肉を運ぶが、
ゲンは、頑なに口を閉じている・・・
く・・・ダメだ・・・

「・・・ねぇ、これは?」

すると、冷蔵庫から“すずたん”が
缶詰を持ってくる。
お医者さんが『腎臓をケアするドッグフードだけど、
不味すぎて、食べないと思う・・・』と
一応サンプルでくれた缶詰だ。

「あ~、それはたぶん、ダメですよ。
不味くて、どの犬も食べないって言ってたんで・・・
でも、タダでくれるって言うから
一応、貰って来たけど・・・」
「そうなの?・・・まぁ、ダメもとで・・・」
そう言いながら、“すずたん”は、
カパッと缶詰を開け、ゲンの前に置く。
その瞬間、今まで動かなかった
ゲンがムクっと、起き上がる。

「あ・・・」
「食べたぁ~~~!!!」

f:id:peraichikun:20190628011211j:plain

 

良かった・・・ホントに良かった・・・

でも、まさか、
どの犬も食べなかった
不味いドッグフードを食べるとは・・・
ゲンの好みってシブい・・・

でも、とりあえずひと安心・・・

久々のブログ更新・・・

久々のブログ更新。

実は、2週間ほど前から、
ゲンが急に、体調を崩してしまい・・・
ここ最近は、他の事が手につかなかった。

その日、俺のバイトからの帰りを
待っていたかのように、夜中に
“すずたん”が俺んちの前に立っていた。

「ゲンが・・・、ご飯を食べないんだよ」

「え??!ゲンが?」

f:id:peraichikun:20190623035210j:plain

 

俺は急いで、家裏の“すずたん”ちに行く。

あんなに一日中、
オヤツをおねだりしてたゲンが・・・・・・
でも、確かに、少し気温が上がってきてからというもの、
なんとなく顔が老けたというか、
元気が無くなってたような気もする。
ゲンって実は、13才の高齢
(人間で言うと、80くらいのお爺ちゃん)だから、
いつ体調を崩しても、おかしくはない年齢なんだけど・・・

「こんなの初めてだよ・・・」

“すずたん”は、いつになく不安そうな顔をしていた。

“すずたん”よると、今まで、ゲンは大病はおろか、
病院にもほとんどお世話になったことが無いくらい
元気だったから、まさかゲンが体調を崩すなんて
思ってもみなかったみたい・・・

“すずたん”ちのリビングに入ると、
ゲンは、いつも寝転がっている専用の座布団の上で
虚ろな目をして、丸まって、小刻みに震えている。

f:id:peraichikun:20190623035359j:plain

 

「かわいそうに・・・。寒いのか?」

頭を軽く撫でてやっても、抱きしめてやっても
ゲンの震えは止まらない。

「いつから・・・ですか?」

「いや、さっき帰ってきたら、
 様子がおかしくて・・・
 今日は、もう病院やってないから、
 明日の朝、連れて行くよ・・・」

「僕も、行きます」

そして、次の日の朝、
近所の小さな動物病院に、ゲンを連れて行った。

「うん、腎臓の数値が異常に高いですね」

お医者さんからすると、
こういう症状は見慣れているようで、
検査をした後、点滴をして
その日は帰った・・・

ゲンは、慣れない場所で疲れたのか、
帰ってすぐに、眠りについた。
とりあえず、ゲンの震えは、止まったけど、
ご飯は、まだ食べられていないままだ・・・

腎臓が悪いって・・・
一体、どうしたらいいんだ?