ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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早く、おうちに帰ろうな!

一昨日から、ゲンは、
大学の動物病院に入院している。

ここ最近、ゲンの症状は、
ずっと低空飛行ではあったけど、
一昨日くらいから、
また、グッタリとなってきた・・・
今まで、近所の小さな動物病院で
診てもらっていたが、
病気の原因もイマイチ特定できず、
ゲンの症状も回復しない・・・

そこで一度、機材も充実している
大きな病院で診てもらおう、ということで、
“すずたん”と俺とマルオで
病院に連れて行くことに。

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これで、もしかしたら
ゲンの病気の原因が分かって
治療してもらえるかもしれない・・・
そんな淡い期待も持ちながら、俺たちは、
ゲンを抱き、待合室で待っていた。

すると、病院の先生が、
ぐったりしたゲンの様子を
見るなり慌てはじめる。
そして、
「すぐに輸血しますよ!!!」と、
ゲンを別室に連れていく・・・


・・・・・・・・・・え?


残された俺たちは、
ただ茫然とするしかなかった・・・

まさか・・・!
そんなに悪かったなんて・・・・・・・・

マルオは、ただただ泣き続けていた・・・
俺は、「大丈夫、大丈夫」と
自分に言い聞かせ、動揺する心を
落ち着かせるのに必死だった。

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“すずたん”だけは、つとめて冷静に、
最悪の状況も有りうる、と
ヒロセとタクマとサヨちゃんに、
一応連絡を入れていた。

それからどれだけ時間が経ったのか・・・

「輸血で、とりあえず、状態は落ち着きました」

先生に、そう言われた瞬間、
堰をきったように涙が溢れてきた。

よ、良かった・・・

・・・とにかく助かって良かった・・・

「ゲンに・・・会えますか?」

先生に案内され、病室に入ると、
酸素室という、透明な
アクリル板の扉がついた無機質な箱が
いくつも並んでいる。その中の一つの箱の中で、
横になっているゲン。

「ゲーーーン!!!」

ゲンの体と鼻には、細い管が2本か,3本伸びている。
管の伸びる先には、波形が表示される機械が
あって、絶えずピッ、ピッと、電子音が鳴っている。

アクリル板の扉の真ん中には、
小さい小窓が開閉できるようになっていて、
すずたんが、そこからゲンを少しなでる。

「ゲン・・・よく、頑張ったな」

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“すずたん“が触れても、ゲンは、
意識が朦朧としているのか
かすかに目を開けるだけで、反応しない。

「あぁ、ゲン、辛かったね・・・」

「ゲ――ン・・・なんか、
 狭いところに入れられて
 かわいそうじゃのぉ・・・」

俺とマルオも代わる代わる声をかける。

先生によると、とりあえず最悪の状況は
越えたが、依然、いつ
症状が急変するか分からないとのこと。

検査の結果、ゲンは、
肺炎など複数の病気になっていて、
原因は特定できないらしい。
頭が下がってしまうのは、
または脳の異常、もしかすると
何か腫瘍か何かがあるかもしれない、
ということらしい。
ただ、手術になると、全身麻酔で体力を使うし、
リスクが高い・・・。
とりあえず、入院して、
少しずつ体力を回復させていきましょう、
というような説明だったと思う。

「じゃぁ・・・帰るね。ゲン・・・」

俺が小窓を閉めようとしたその時、
寝ていたゲンがムクッっと起き上がり、
頭をうつむいたまま、
小窓に頭を擦り付けてくる。

「ゲン・・・ダメよ。酸素室に入っとらんと・・・」

俺は、胸が裂けるような思いで、小窓を閉める。

「ねぇ・・・やっぱりゲン、
 連れて帰っちゃぁ、
ダメなん?」

マルオが泣きそうな目で俺を見てくる。
そりゃぁ、俺だって、できるもんなら、
連れて帰りたいよ・・・

それからしばらく、
ゲンは頭を小窓に擦り付けてくるので、
“すずたん”が声をかける。

「ゲン・・・今は、寝て休まないと・・・
 また明日も来るから」

そう言い聞かせるようにつぶやくと、
不思議と言ってることが分かったのか、
ゲンは、やっとあきらめ、横になり、
力尽きたように、スヤスヤと眠り始める。

「じゃぁ、また明日ね。ゲン・・・」

俺たちは、後ろ髪を引かれる思いに
なりながらも、病室を後にした。