家族になろうよ
急に体調を崩した柴犬のゲン。
ひとまず、震えも止まり、
ご飯も少しずつ食べれるようになった。
(相変わらず、病院でタダでもらった
不味いドッグフードしか食べんけど)
でも、まだ、座布団に突っ伏している時間は長く、
時たま、震えも起きる。
「震えとる・・・大丈夫かのぉ?ゲン・・・」
マルオは、ここんとこ、
ほとんど毎日“すずたん”ちに来ている。
「まぁ、言っても、ゲンも、
もう年だからな~。
私が先か、ゲンが先かって
感じだろうなぁ~ハハハ」
“すずたん”が、笑いながら言うと、
マルオは、泣きそうになっている。
「そんなぁ~・・・
やめてくださいよぉ~・・・」
「ハハハ!冗談だよ~!」
なんとか回復傾向にあるが、
冗談抜きに、俺も一時は、もしかして、
このままゲンは、死んじゃうんじゃないか・・・
って思ったくらい心配した。
不思議なことに、
目が虚ろなゲンを見ていると、
なんだか本当の兄弟が倒れて
しまったような気持ちにさえなった。
そんな風に、ゲンを心配してくれるのは、
マルオや俺だけではなく、
この1週間ほどの間は、
ヒロセや、タクマとサヨちゃんも、
入れ替わり立ち代わり、
ゲンの見舞いに来てくれた。
ゲンって、ホント愛されてるんだなぁ・・・
でも、よく考えてみると、
ゲンの様子を心配して見に来てくれるのも、
“すずたん”を町内の老人会
カラオケ大会で優勝させるため、
みんなで必死に応援した
“すずたん応援部”のメンバーだ。
あの大会から、はや3か月くらい経つけど、
あの時の楽しい思い出や、
熱い気持ちは、今でも思い出せる。
みんなで、毎日のように
“すずたん”ちに集まって、
ワイワイ喋りながら飯食って、
一緒にカラオケ練習して、
どうやったら“すずたん”が
カッコよく見えるかを
あーだこーだ言い合ったり・・・
まるで、家族みたいな感じだった。
・・・そうか・・・家族。
最近では、あの時のように、みんなで
頻繁には集まれないけど・・・
いつの間にか、自分の中で
“すずたん”やコイツら、
そしてゲンのことを、
家族のように思うように
なってたのかもしれない。
まさか、東京に1人出てきて、
自分の大家さん、
バイトの大学生たちとのことを
家族のように思うなんて・・・
なんかちょっと、
こっ恥ずかしい気もするけど・・・
幸せなことかもしれないな。