ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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背に腹は代えられぬ

舞台の稽古で、バイトに入れないと言っていた
ヒロセが久々にバイト先に顔を出してきた。
なにやら色んな人に
ビラを配りながら話しかけている。

「カサハラ~頼むわぁ~~、
 絶対損はさせへんから!」

「いや~、その日はちょっと・・・」

「え~!!じゃぁ、トミーは?
 お前は観に来てくれるやろ?」

「えっと・・・確認してみます」

「おう、ホンマ頼むで!メールでええからな!
 おっ!!!!ぺらいっち!!!」

ヒロセは、俺を見つけると、
走って向かってくる。

「ぺらいっちは、当然、
 観に来てくれるんやろ?!」

「は?」

「ぶ・た・い!!俺の!!」

ヒロセは、無理矢理、ビラを俺の手に
つかませる。

「あぁ、舞台ね」

「はい!!全日程、予約ね!
 おおきに~!!」

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え・・・まだ、なんも言ってないけど。
まぁ、全日程は無理でも
1日くらい、観に行ってあげよう。

俺も役者やってたから、
気持ち分かるしな。
実は、小劇団の舞台に出る役者って、
ギャラをもらえるどころか、
大体30~40くらいの
チケットノルマがあって、
そのノルマを達成できないと、
足りない分、自腹になってしまう。

ただでさえ、舞台の稽古で
バイトに出られず、キュウキュウなのに、
さらに自腹なんて・・・って
俺もノルマ達成するために必死だった・・・。

昔から仲のいい友達は、
付き合いで、毎回、来てくれたりするけど、
舞台のために時間と
お金をかけてくれる人って
けっこう限られてくる・・・。

それでも、演出家には、
「役者になろうってのに、
 40~50人も集められないなら
 やめちまえ!」なんて言われるし、
実際のところ、お客さんを集められるかで
配役も変わる・・・

「アンドゥ~~!おねが~い!」

ヒロセは、あろうことか新人のアンドゥにも
声をかけている。
最初は、アンドゥのこと、
自分のシフトが無くなるから、
イジメて追い出そうって言ってたのに。

背に腹は代えられんということか・・・
でもそいつは、
無理だと思うぞ、ヒロセ。

「金、無いんで」

アンドゥは全く相手にしていない。

「分かった!半額でええから!!」

「いや、ヒマでもないんで」

「え~~・・・」

やっぱり・・・。

ヒロセは、一通り、
バイトに声をかけた後、
店内のいたる所に
舞台のビラを貼り付けていく。

「よっしゃ、これでよしっ!!」

おいおい・・・さすがに
店の入り口のドアに貼るなよ・・・


ヒロセが帰った後、
店長が叫んでいる。

「おい!なんだよコレ!!」

ヒロセが店内に貼り付けたビラは
ことごとく店長に、はがされていく・・・。

「あ!こんなとこにも!!
 なんなんだよ!コレ!
 ダメだよもう!!」

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ヒロセ・・・頑張れ~