ス―ハー軍団
この前、カラオケで
“すずたん”の歌を録音して
聞かせてみたものの、結果なぜか“すずたん”は
自分の歌声に自信を持ってしまったようだ。
その自信こそが、
進化を阻んでいたものだった。
なんとかその自信をぶち壊さなければ!
そう意気込んで、俺は、バイト後、
ヒロセとタクマを引き連れて
“すずたん“の家に行く。
LINEではサヨちゃんも先に来てるはず。
「おぅ~、みんな来たのか・・・」
「お疲れ様でございます」
コタツに入ったすずたんは
テーブルに突っ伏している。
あれ?なんか雰囲気が暗いぞ・・・
「どうかしたんですか?」
「いや、もう自信なくしちゃったよ・・・」
え???
「え?でも昨日はあんな
自信満々じゃったじゃないですか・・・」
「ハハ、いや、そんなもの無いよ・・・
昨日はああ言ったけど
ホントは自信なんかないんだよ。
もう、君らにどうにかしてもらえるレベル
じゃないような気がしてね・・・」
え・・・
マジかよ・・・
実はショックを受けていたのか・・・。
まぁ、考えてみりゃ、そうだよな。
自信がある人だったら、
わざわざ、俺らに教えてくれなんて
頼まないもんな・・・。
でも、そんなに落ち込んでたなんて。
「そんなことないですよ!!!
やれることはまだあります!!」
俺はおもむろに、
すずたんちのCDコンポに
松山千春のスーパーベストを入れる。
♪うつむきかけぇ~たぁ~
貴方の前をぉ~
静かにぃ~時は~なが~れぇ~~
なんだか歌詞がピッタリすぎたのか
タクマがプッと吹き出す。
「ぷっ!ハハ!そうですよ!すずたん!!
まだ3週間あるし!」
すると、すずたんにも、やっと笑顔が。
「みんな・・・ありがとうね」
♪めぇ~ぐぅる~めぐる~季節のな~か~でぇ~
貴方はぁ~なにをぉ~見つけるだろぉ~~
曲が終わると、すぐさま
ヒロセが立ち上がる。
「よっしゃ!まずは腹式マスターやっ!」
ヒロセは、シャツをまくり上げ、下腹を出すと
呼吸とともに出したり、引っ込ましたりを繰り返す。
「こうやで。こう。こう。スーーーハーー」
すると、すずたんも立ちあがりヒロセのマネをする。
「こう?こう?」
「ちゃうちゃう!こう!!!」
いつの間にか俺たちも、
ヒロセとすずたんの横に並ぶ。
「こう?こう?」
「せやせや!!上手いなぁ~ぺらいっち!」
「そう?まぁ、俺も
ちょっと役者かじってたからな~」
「ほら!すずたんも!!」
「よーし!!!」
「おっ!ええで!!!ええで!!」
なんか・・・傍から見たら変な光景だけど・・・
俺たちは、一晩中、スーーーハーーしていた。