「なにしてるんですか?」
「ちょっとオノくん、来てくれる?」
先日、朝に出勤してすぐに
店長に呼ばれた。
その横にはオレンジ色の髪をした
男の子が。
いかにもチャラそうだ。
「この子、今日から働くタクマくん」
「うぃ~す。おねしゃーす」
でも中々端正な顔立ちをしてて
坂口健太郎にちょっと似てると言えなくもない。
「ちょっとさぁ、新しい制服が、
女子更衣室に届いてると思うから、
着方とか教えてあげてくんない?」
「え?いいですけど、
なんで女子更衣室に?」
「新しいのは全部あっちに届くんだよ」
「へぇ~そうなんですか。
じゃぁ、行こうか」
俺はタクマを連れて
女子更衣室へ向かう。
でも女子更衣室か・・・
入ったことないし、
ちょっと気が引けるな。
コンコン。
部屋の中には誰もいないようだ。
うわぁ~
扉を開けた瞬間、
男子更衣室では嗅いだことのない
フローラルな香りが漂ってくる。
四畳半ほどの広さの更衣室に
2人で入る。
しかし、男用の制服らしきものが
見当たらない。
業者が置いていったなら、
いつもすぐ分かるところに
置いてあるんだけど。
「う~ん、ないなぁ~」
「店長呼んできますか~?」
「うん、たのむわ~ごめんね~」
「うぃっす」
ありゃ。チャラそうに見えて、
意外と気が利くじゃん。
俺は一人で制服を探し続ける。
それにしても香りがすごい。
男子の汗臭い部屋とは大違いだ。
でも制服らしいものないぞ・・・
あ、まさかロッカーに
入ってるのかな。
でも一応女子ロッカーだしな・・・
コンコン。
お、戻ってきた。
「はいよー。店長何て言って・・」
笑顔で振り向くと、女子大生のトモコが
目を丸くして立っている。
丁度出勤してきたらしい。
「な、なにしてるんですか?」
俺は女子ロッカーの扉に
手をかけてしまっている。
「い、いや、ちがうちがう!
制服探してたんだって」
慌てて手を引っ込め、
説明しようとトモコの方に
手を伸ばすと、
トモコはびっくりして
スッと俺の手を避ける。
「え?制服?
誰の制服・・・ですか?」
汚いものでも見るような目で俺を見るトモコ。
「いや、いやいやいや、
そうじゃなくてね・・・」
慌てれば慌てるほど怪しまれていく・・・。
その場はなんとかトモコの誤解を解いたものの、
その後しばらく、女子バイトの間で
この事が延々と語り継がれることになった。