大家さんの新しい呼び名
昨日は、大家さんのカラオケ練習の前に
『大家さん応援部』メンバーで
大家さんの家に集まった。
「ぺらいちさんの大家さん、
はじめまして。マルオ言います」
「君がマルオくんか。よろしくね。
話はきいてるよ」
「オノくんと同じ広島出身なんだって?」
「はい、ワシは生まれも
育ちも広島じゃ、・・・です」
「いいんだよ。別にムリして敬語使わなくても」
「はいっ、すんませんです!」
マルオは、初対面の大家さんに緊張しているようだ。
「ところで、前から気になってたんだけど、
オノ君のあだ名?の『ぺらいち』ってのは、
どう言う意味なの?」
すると、『ぺらいち』名付け親のヒロセが、
得意げに説明する。
「名前が『平一』で体もペラペラやから。
ええやろ。俺がつけてん」
「なるほど~・・・」
大家さんは、俺の体をまじまじと眺める。
「うまいね」
「せやろ?!センスの塊やろ!」
「うん、すごく合ってる」
「せや!!じゃぁ、大家さんにも
アダ名つけたるわ!!」
「え?!・・・いや、いいよ」
「いやいやいや!!そもそもなぁ、俺、
『大家さん』のことを『大家さん』って
呼ぶのなんか違和感あってん」
確かに、言われてみれば。
今まで、なんの疑問も持たず、
『大家さん』って俺もずっと
呼ばせてもらってたけど。
「わたくしは、『スズキさん』と
呼ばせて頂いております」
サヨちゃんは相変わらず真面目だ。
「じゃぁ、『スズキさん』でいいんじゃない?」
それにタクマも同調するが、
ヒロセは不満そうだ。
「え~、なんか、つまんない。
もっと、こう・・・
可愛くて、パンチのきいた・・・」
「いや・・・『スズキさん』でいいよ~」
大家さんは、底知れぬ不安を
感じているようだ・・・
しかし、こうなったらヒロセは、止まらない。
「だって、これから大家さんのことを
応援するのに、『大家さん』じゃ
俺らも団結できへんで!!」
「いやいやいや、今まで通り
『大家さん』で
十分だと思うけどな~・・・」
大家さんは必死で抵抗するが、
こうなったヒロセは誰にも止められない。
「『リンリン』は・・・
ちょっと可愛いすぎかなぁ・・・?」
「リンリン?!!!」
「せや。スズだからリンリン」
「いや、それは、ちょっと・・・」
「え~~、ええと思うで『リンリン』」
すると、黙って聞いていた
マルオがスマホを見せる。
「あのぉ~『あだ名ツクッタ―』っていう
サイトがあるの知っとります?」
「なんやそれ」
「名前入れると、あだ名の候補を
出してくれよるんですよ」
大家さんは、『リンリン』が
よほど嫌だったのか、
助かったとばかりに食いついてくる。
「へ~、それは、面白そうだね!
どんなのがあるの?」
「え~と・・・『すずず』とか」
「『すずず』???うーん、
なんか発音しづらそうだね・・・」
マルオは、次々に読み上げていく。
「じゃぁ、これはどうじゃろ?
・・・『すずたん』」
・・・カワイイ。
それからも、みんなから
色々候補が出るが、結局決まらず・・・
「・・・やっぱ、
『リンリン』がええんとちゃうか?
なぁ、リンリン?」
「イヤ!!『リンリン』はイヤ!」
「なんでやねん~
じゃぁ、『リンリン』か『すずたん』
どっちがええねんな?」
「いや、それだったら、
『すずたん』の方が断然いいけど」
「そう言うならしゃーない。
『すずたん』に決定やな」
「いや、そういう意味じゃ・・・
どちらかというとってことで・・・」
「ヨロシク!『すずたん』!!!
あ・・・呼んでみると、中々ええわ!」
こうして、『あだ名命名師ヒロセ』によって、
半ばムリヤリ大家さんの呼び名は
『すずたん』に決定した。
果たして、定着するかは分からないが・・・。