“すずたん”試着会
先週末、カラオケ大会を直前に控える
“すずたん”の衣装合わせを決行。
俺たちは、“すずたん”を
松山千春に変身させるため、
次々に持参した白色衣装を着せていく。
なぜ白色かと言えば、
youtubeで見た松山千春の動画が
たまたま(?)白い衣装が多かったから。
まずは、タクマが先輩から
貰ったという白いジャケット。
思った以上に、
“すずたん”が着るのに苦労している。
「う・・・キツイね」
やはり、タクマが着る
サイズの服は“すずたん”には
無理があるようだ。
特に腕回りなんかハチ切れそう・・・
これはナイ・・・
すると、マルオが待ったをかける。
「いや、じゃけどサイズが合っとらんだけで、
ちゃんとしたサイズを着た想像してみると
違うかもしれんですよ?」
「そう?」
俺たちは、“すずたん”をマジマジと見つめる・・・
「うん・・・やっぱナイね」
「そうだね」
次は、サヨちゃんとタクマが推していた、
あまり飾らないシンプルな衣装。
白のシャツとジーンズの組み合わせ。
「ほぉ・・・わたくしは良いと思いますが」
「うん、なんか休日のパパって感じでいいかも~」
サヨちゃんとタクマはそう言うが、
なんだか決め手に欠いている。
「でも、やはりサスペンダーを・・・」
そう言って、サヨちゃんは、持参した
サスペンダーを“すずたん”に着させる。
うん・・・・
「じゃぁ、次は俺の番やな!ハイ!」
ヒロセは、紙袋から真っ白のスーツを取り出す。
わざわざ、知り合いの衣装さんから
借りてきてくれたらしい。
「絶対ええで~!!“すずたん”!!」
みんなの期待の眼差しの中、
“すずたん”はおもむろに白スーツを羽織る。
「オ、お~~~・・・」
白いスーツって、誰が来ても
ガラ悪い感じにしかならないと思ったけど、
案の定、ガラ悪い・・・
「さ~ら~に~!!」
ヒロセは紙袋から、色眼鏡を取り出す。
「松山千春と言ったらコレしかないやろ。
はい!ちょっと“すずたん”これ着けて」
“すずたん”はヒロセに言われるままに、
色眼鏡をつける。
「どうかな?」
「最高!!!ブラボー!!!!」
ヒロセは手放しで絶賛しているけど・・・
完全にチンピラヤクザの完成だ。
「ええ威圧感しとるわ~~!」
いや、果たして威圧感はいるだろうか・・・
“すずたん”も、どうも納得がいかない様子。
「いや~、ちょっとこれ
完全に危ない人だよ~。
怖がられるのはちょっと・・・」
じゃぁ、あとは・・・俺の持ってきた
白タートルネックのセーターだけだ。
俺の思い出のセーターに“すずたん”が袖を通す。
タクマのジャケット同様、
俺のぺらぺらサイズの服だから
“すずたん”は少し窮屈そうだし、
丈が長すぎるけど・・・
「どうかな?」
「いや~~白スーツの方がええて!!」
ヒロセは譲らない。
「あら・・・?でも、
なんだか一番しっくりきている、かと」
サヨちゃんにそう言われると、
ちょっと複雑だけど・・・
「でもこれ良いね。ねぇ?」
「うん!ワシもなんかええと思う!!」
タクマとマルオも賛同するが、
ヒロセも食い下がる。
「え~!じゃぁ・・・
せめてこの眼鏡だけは!!!」
ヒロセは、“すずたん”に
色眼鏡を付けるよう懇願する。
「え~~・・・これは・・・」
そう言いつつ、しぶしぶ
色眼鏡をかける“すずたん”。
「あれ?良くない?」
「いや、ええですよ!コレ!」
「せやろせやろ?やっぱ眼鏡ええやろ??」
確かに、白スーツのヤクザ感が消えて、
マイルドになったからか、
色眼鏡が良いアクセントになっている。
「どうです?“すずたん”?」
姿見をのぞきこむ“すずたん”。
「うん・・・!なんかこれなら、
松山千春になりきれるような気がするね。」
「よーし!!じゃぁ、これでいこう!!!」
こうして、“すずたん”の衣装は、
白タートルネックに色眼鏡に決まった。
「え?じゃぁ、オノ君
このセーター借りてイイの??」
「え・・・あ、はい」
“すずたん”に新品を買ってあげるのは、
サプライズだ!