キスを拒む理由
“すずたん”が、町内会の会合とやらに
夕方から出かけると言うので、その間の
お留守番と、ゲンの散歩を頼まれた。
俺は、せっかくなので大学生のタクマを誘って
お留守番をすることに。
「ゲン~おいで~」
タクマが両手を広げてゲンを呼ぶが、
タクマのことは、不慣れなのか
ゲンは、あんまり近づきたがらず、
フンッと鼻を鳴らして、どこかに行ってしまう。
「あれ~?おかしいな」
「まぁ、ゲンは、基本マルオ以外の
男には、あんまり興味ないからな~・・・」
「うわっ!なにそれ!チャラ!」
お前が言うなよ・・・
まぁ、ゲンは散歩に行きたくなったら
合図するから、とりあえず放っておこう・・・
「そういえばさ・・・」
俺は、タクマの顔を見る。
「キスできた?」
タクマに会うと、必ずそれを聞くのが
最近の俺のルーティーンになっている。
「いんや・・・」
タクマは、不服そうに首を振っている。
でも、あのタクマが、あのチャラいタクマが、
サヨちゃんと付き合ってもう、
半月以上も経つのにキスもしてない・・・
それが、なんだか可笑しいような
可愛いような気がして
つい、からかってしまう・・・
「拒否られるんだよ~
どうしたらいいかなぁ~~?」
「え?ってか、サヨちゃん、
なんて言ってたんだっけ?」
「結婚するまで、キスできないって・・・」
「・・・うーん、なんでなんだろう?
貞操観念みたいなこと?」
「俺もさ、そう聞いたんだけど、
なんか、それとは違うみたいで・・・
口と口を触れ合わせる意味が分からない
・・・って」
「いや・・・え?意味???
そう言われるとな・・・
もしかして潔癖なのか?」
「それも聞いたんだけど、違うんだって。」
「え~?・・・そうなんだ」
「うん。女子寮の部屋も
けっこう汚いんだって・・・」
「じゃぁ、潔癖ではないのか・・・」
うーん、聞けば聞くほど、深まる謎だ・・・
「もしかしてさ・・・お前のこと
好きじゃないんじゃないのぉ?」
「え~!!ちょ、
そんな絶望的な事、言わないでよ~!!」
「ハハ!ジョーダンだよ!」
それにしても、何でだろう?