アグレッシブなアイツ
ヒロセの舞台を見た後、
ヒロセを交えて、タクマとサヨちゃん、
マルオと“すずたん”、そして
“すずたん”の町内会の友人
タツさんと飲み会をした。
ヒロセは、着替えや、
舞台の片づけがあるらしく、
少し遅れると言うので、
先に飲み始めることに。
俺の隣のマルオは、カクテル一杯で、
あっという間に、顔が赤くなり、
席の反対側では、タクマが、
カクテルにストロー2本をさして
片方をサヨちゃんに差し出して、
カップル飲みをしようとしているが、
ガン無視されている。
それにしても、
タツさんの飲む酒の量の、
すごいのなんのって・・・
まるで水を飲むかのように、あっという間に、
焼酎水割りを飲み干していく。
「いや~、さすがタツさん。
相変わらず、良い飲みっぷりですな~」
“すずたん”が、おだてると
タツさんは、イヤイヤ、と否定しながらも
次の焼酎を注文している。
「ヒロセ君だっけ?頑張ってたね~
26歳?あ~、まぁ、これからだね」
タツさんは、空になったグラスの氷を
カラカラと鳴らしながら話している。
「うん、ヒロセ君は、良かった。
まぁ、出番は、そんなに
多くなかったけどね」
“すずたん”も、早速、
大好きな赤ワインと枝豆を
注文すると、グビグビと飲んでいく。
「でも、ヒロセのやつ、
絶対タツさんのこと、
関係者か何かだと勘違いしてましたよ?」
俺がそう言うと、タツさんは、
「そう?」と、トボけている。
「いや、だって、すごい貫禄ありますもん・・・」
「ハハハ、そんなの、演技演技!!」
タツさんは、豪快に笑い飛ばす。
ヒロセ・・・タツさんが、
ただの近所の芝居好きのオジさんって
知ったらどんな顔するだろう?
それにしても、
ヒロセのアグレッシブさには驚いた。
俺が役者やってた時は、
否定されるのが怖くて、
オーディションはおろか、
どこかの偉い人というオーラだけで
ビビっちゃって、ヒロセのように、
アグレッシブに
話しかけたりできなかった・・・
それで結局、親に大学まで出してもらったのに、
就職もせずに飛び込んだ役者の道も
カンタンに諦めて・・・
その時、ヒロセが、いつもの
ハイテンションで駆けつけてくる。
「遅うなりましたっ!!!
本日の主役、只今参上いたしました!」
「ま、舞台上では、
スーパー脇役だったけどね!!」
「うるへ~~~!!」
タクマのツッコミに反応しながら、
ヒロセも席に着こうとしたところ、
目の前のタツさんを
見て、ヒロセが突然、奇声を上げる。
「え“ぇぇ~~~!!な、なん、なぜ?
ア、アナタ様がっ?!?!」
瞬時に正座したヒロセだったが、
タツさんが、実は、
業界のお偉いさんでもなんでもなく、
ただの“すずたん”の町内会の友人だったと
聞かされて、態度が急変。
いきなり関西弁&タメ口でまくし立てる。
「なんやぁ~、ビックリさすなや~!
あぁ、あぁ。“すずたん”の??
まぁ、でも、ありがとうな!
あ、俺、年齢関係なく、タメ口で話すねんけど
許してな!そういうポリシーで、
やらしてもらってますぅ~
そっちんが、壁つくらへんやろ!?」
なんて身の軽さだ・・・
すると、“すずたん”が、
ワイングラスを傾けながら、
ヒロセに語り掛ける。
「ヒロセ君・・・タツさんに、
タメ口はヤバイんじゃないかなぁ~?
だって、タツさんって、実はね・・・」
つづく・・・