ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

    f:id:peraichikun:20190105020429j:plain f:id:peraichikun:20190105020439j:plain

ヒロセは地球を守ってた

先週末、夕方から
ヒロセの出演する舞台を観に行った。

俺とマルオが、待ち合わせの駅前に着くと、
広場のベンチ前で、
最近、付き合い始めたばかりの
サヨちゃんとタクマが手を振っている。

「こっちこっち~!」

タクマの顔もデッレデレだし・・・。
当然だけど、2人の距離感が、
今までよりも、なんだか
近くなってるような気がして、
こっちも思わず照れてくる・・・

f:id:peraichikun:20190520160831j:plain

 

「オノく~ん!」

改札の方に目を向けると、
俺のアパートの大家さんの“すずたん”が
俺の名前を呼んでいる。
そして、“すずたん”の後ろからは、
ぞろぞろと歩いてくる
5人のオジさんたち。

「この人たち、みんな
 芝居が好きな人たちだから。
 タツさんなんか、
 昔、役者やってたんだもんな?」

“すずたん”にそう紹介されたのは、
白髪の角刈りのタツさん。
確かに、すごい雰囲気がある・・・。
タツさんを筆頭に、
5人のオジさんたちは、
みな、上背もあり、かっ腹が良いため、
なんだか“すずたん”の
用心棒か何かにも見える。

「じゃぁ、そろそろ行きますか」

俺たちは、10人ほどで、
ぞろぞろと劇場に向かう。

席は自由席らしく、
俺たちは、後方の
関係者席の目の前に陣取る。

場内に、お客さんは、
チラホラ集まってきてはいるが、
ほとんど俺と同じくらいか
俺より若い人たちが多い中で、
腕を組んで座るタツさん擁する
俺たちの集団は、かなり浮いている。

きっと、周りからは、
どこの有力者たちだ?みたいな目で
見られているに違いない・・・。

 

しばらくすると、舞台の幕が開ける。

舞台の内容は、ざっくり話すと、
人類は猿から進化したと言う、
ダーウィンの進化論は間違っている、
という論文を発表するところから始まり、
実は、人類の祖先は、
別の惑星から来たというような話。
高度過ぎる科学技術ゆえの戦争や、
環境汚染により、惑星に
住めなくなってしまい、
移住してきた人類の祖先たち。
そして、今、地球は、
祖先と同じ道を辿っている・・・

というような、言ってしまえば結構、
ありがちな内容だった・・・。

劇中、“すずたん“やタツさんたちを
チラ見すると、腕を組んだまま
真剣に舞台を見ている・・・

と思ったら、微妙に前後に揺れてる・・・?
あれ?寝てる・・・????

我らがヒロセはというと、
地球防衛軍か何かの一人として
出演していて、

『地球がぁーーー!!!』

と絶叫するセリフを何度も連呼していた。

そして、ヒロセたち地球防衛軍のおかげで
地球は守られた・・・

f:id:peraichikun:20190520160851j:plain

 

舞台終わりには、
ヒロセも客席に挨拶に来る。

「いやー!ありがとうな!!!」

メイクも落とさず、
汗をかいたヒロセの表情は、
なんだか晴れ晴れとしている。

「うん、ヒロセ君、良い声出てたね」

“すずたん”がそう言うと、
ヒロセも満面の笑みで答える。

「ありがとう!!
 みんなホンマ、ありがとうな!!!」

すると、“すずたん“の後ろにいたタツさんが
ヒロセに握手を求めている。

「良かったよ・・・
 でもね。一つだけ。君が、あそこで
 振り返るところがあるでしょ?」

「あ、はい!」

「あそこは、もっとこう・・・
 タメを作ったほうが
 哀愁が出てくるんだよね」

「あ、なるほど~・・・」

「あとね・・・ストーリー全体の中での
 自分の役の立ち位置を考えていくと
 もっと、存在感出てくると思うよ」

「は~なるほど・・・
 とても勉強になります!」

ヒロセは、演技について
色々と話すタツさんを
どこか事務所のお偉いさんか何かと
勘違いしたのか、ものすごく畏まりながら、
名刺を渡している。

「こういうものです。
 どんな役でもやります!

 どうか、よろしくお願いします!」

f:id:peraichikun:20190520160920j:plain

 

タツさんも、まんざらでもなさそうに
うんうん、とほほ笑んでいる。

いや、違うんだけどな・・・
タツさん、寝てたし・・・

でも、ヒロセも大変だろうな・・・

俺も、大学卒業後、
小劇場の舞台でやってたけど、
小劇場の役者って、ノルマはきついし、
そんな簡単に、注目を浴びれるわけないし、
食えるようになるわけでもない・・・
それで、俺はあっけなく
辞めてしまったんだけど・・・

でも・・・
なんか舞台上の生き生きとした
ヒロセの表情を見てたら、
ちょっと羨ましくなった・・・