ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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俺、やってもうた・・・

前回の続き・・・

「タツさんって、実はね・・・」

俺たちは、一斉に“すずたん”に注目する。

「タツさん・・・
 あのクロサワ映画に出たこともあるんだよ」

???

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俺たちは驚きの余り
一瞬、静まり返る。
・・・・え????!!!
クロサワ!?って、あの世界の黒澤明?
す、すげ・・・・

「クロサワ?誰?」
マルオとタクマはポカンとしている。
「え?あの黒沢明監督を
 ご存じない・・・???」
サヨちゃんは、そんなタクマにドン引きしている。

「タメ口なんかきいて・・・
 申し訳ございませんでした!!」

ヒロセは、額を床にこすりつけている。

「いいって、いいって。まぁ、出たっても、
 エキストラみたいなもんだし」

タツさんが淡々と話すので、
よけいに現実味が帯びてくる。

一時は、タツさんも、
本気で役者を目指していたが、
早々に自分には才能がないと
気づいて辞めたらしい。
その後は、やはり表現者でいたいと思い、
寝る間もない日々を送り、
どうにか出版社に入ったそうだ・・・

「あれ?そういえば、
 ぺらいちさんも、大学卒業した後、
 役者やっとたんですよねぇ?」

マルオが思い出したように言う。

「いや・・・もう辞めたから・・・」

クソ・・・中途半端過ぎて
役者やってたなんて
恥ずかしくて言いたくない・・・

しかし、そこから完全に
話題は俺の方に移り、
タツさんからは、ドンドン質問が飛んでくる。

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「ん?じゃぁ、今は何を?」

「えっと・・・まぁ、その。
 フリーターです・・・」

「大学出たのに、フリーターかぁ、
 それは親がかわいそうだね~ハハ」

「まぁ・・・ハハ・・・」

「え?年はいくつ?」

「・・・33です」

「そっかぁ~結構いってるんだね。
 じゃぁ、何か目指してるの?」

「え・・・」

目指す・・・?
目指すって言われたって・・・
俺は何を目指してるんだ??

「じゃぁ、こう、○○がしたい!
 みたいなこともないの?」

「いやぁ、なんでしょうね・・・」

これがしたい・・・?
俺は一体・・・何がしたいんだろう?

親に大学まで出してもらって
就職もせずに飛び込んだ役者の道・・・。

俺は何がしたくて役者を目指したんだ?
人を感動させたいから?
何かを表現したいから?
いや、正直、そんな
大層な理由なんて全くなかった・・・。
ただ・・・人とは違うことがやりたい・・・
就職するなんて、めんどくさい・・・
でも、モテたい・・・
そんな、感じだった・・・

ハァ・・・俺って、ほんと
何も考えてこなかったんだ・・・
全部が中途半端で、
行き当たりばったり・・・

「もう33だよね?
 どうするの?これから?」

「いや~・・・ハハハ」

俺は笑うだけで、何も答えられない。
そんな自分がつくづく・・・

「もうね、40、50なんてあっという間だよ?」

「え・・・いや・・・」

クソ・・・もう、なんなんだよ・・・
俺だって分かってる、このままじゃ
いけないことくらい・・・

「なるべく早く・・・」

そこまで言われたところで、俺の中の
何かが切れた。

「うっるさいなぁ!!!!
 俺だって、分かんないんですよ!!!」

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咄嗟に出てしまった大声に、
場がシンと静まり返る。

俺はその場にいてもたってもいられなくなり、
荷物を持って席を立った・・・