ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

    f:id:peraichikun:20190105020429j:plain f:id:peraichikun:20190105020439j:plain

不可!!!

数日前、ばったり遭遇したサヨちゃんから
衝撃の事実を知った。

歌舞伎を好きではない、むしろ嫌いだと・・・

その時、タクマに電話したけど、
派遣のバイトなのか、繋がらず・・・

とりあえず、歌舞伎のチケットをキャンセルさせないと・・・
と思い、タクマにLINEは送っといたけど・・・

そして翌日、タクマから折り返しの電話がきた。


『もしもし、ぺらいっち?どうしよう・・・』


f:id:peraichikun:20190426012523j:plain

 

いつになく、タクマの声に元気がない。
よく考えたら、そりゃぁショックだよなぁ・・・
歌舞伎のチケットのために、寝る間も惜しんで
お金貯めてたのに・・・
サヨちゃんが歌舞伎嫌いなんて・・・

『まぁ、元気出せよ・・・。とりあえず、チケットは
 キャンセルするしかないじゃろ・・・』

俺がそう言うと、タクマの泣きそうな声が
返ってくる。

『チケット、キャンセルできない・・・』

『え?なんで?!!』

タクマ曰く、歌舞伎のチケットは、
現金払いだろうが、クレジット払いだろうが
基本、キャンセルできないのだそうだ・・・。
マジかよ・・・

『ぺらいっち・・・買ってくんない?』

『え、ちょ、ちょっと待って、2万でしょ??』

『いや・・・俺のも合わせて4万』

『なんでやねん!!』

じょ、冗談じゃないっ!!!

確かに、俺も、歌舞伎を薦めたうちの一人だから、
責任感じなくはないけど・・・

いや!そもそも最初に、
歌舞伎が良いって言い出したの
俺じゃないし・・・!!カサハラだし・・・!

ともかく!俺にそんな余裕はねぇ・・・!!!

タクマには、なんとか
他の策を考えると言って
電話を切った。

f:id:peraichikun:20190426012558j:plain

 

う~ん、どうしよう・・・
ここは、年の功を頼りに
“すずたん”にでも相談してみるか・・・
今月の家賃の支払いも、
まだだし・・・

「あのぉ・・・
 ちょっと相談があるんですけど・・・」

「おっ、久しぶりだね。相談?」

“すずたん”は座布団で寝転がるゲンを
撫でている。

「あ、とりあえず、家賃を・・・」

俺は“すずたん”に家賃の入った封筒を渡した後、
タクマがサヨちゃんを誘うために、
歌舞伎の一番高い席を予約したことを話す。

f:id:peraichikun:20190426012620j:plain

 

「歌舞伎かぁ~、いいねぇ~
 私も大好きで、けっこう見に行くよ!」

「あ、そうなんですか!」

おっ、これは
もしかして“すずたん”なら
チケット買い取ってくれたり・・・

「それが・・・」

俺は、サヨちゃんから、歌舞伎が大嫌いだという事を
聞いてしまったこと、そしてタクマが
歌舞伎のチケットをキャンセルできなくて困っていることを
順を追って、“すずたん”に話す。

「・・・ということなんです・・・
 一体どうしたらいいか・・・」

すると、黙って、俺の話を聞いていた
“すずたん”は、ゆっくりと口を開く。

「誘ってみなきゃ、
 分からないんじゃない?」

「え・・・?」

あ、そうか・・・そうかもな・・・。