ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

    f:id:peraichikun:20190105020429j:plain f:id:peraichikun:20190105020439j:plain

熱意

「おはよう!タクマ!」

「あ・・・おはよう・・・」

タクマから生気が感じられない・・・

f:id:peraichikun:20190429235748j:plain

 

それもそうだ。
サヨちゃんを誘うために、深夜の派遣バイトまでして
1人2万円もする歌舞伎の
最高級チケットを予約したのに、
サヨちゃんが歌舞伎嫌いだなんて・・・
しかも、チケットのキャンセルもできなかった・・・

「あのさ、昨日
 “すずたん”に相談しに
 行ったんだけどさ・・・」

俺が、タクマにそう切り出す。

「え?!!!・・・・で、何て?」

タクマは、藁にでもすがるような目で
喰いついてくる。

「タクマ!!とりあえず、
 サヨちゃん、誘ってみようや!」

俺はタクマの右肩をたたき、檄をとばす。

「え?何、言ってんの?」

タクマは、ポカンとしている。

「いやいや、だから誘ってみなきゃ
 分からないでしょって」

「いや、でも・・・
 歌舞伎が嫌いって言ってるのに、
 わざわざ誘ってみる価値ある?」

タクマは少し呆れた様子で言う。

「あるよ!タクマだって、大変な思いして
 手に入れたチケットでしょ?」

「そうだけど・・・絶対ムリでしょ。
 嫌いって言ってんだから」

「それは、お前が直接、
 サヨちゃんに聞いたことじゃ
 ないじゃろ!?」

「・・・そうだけど!そんな
 可能性が無いことしなくてもさ!」

タクマの語気も荒くなってくる。

「可能性って言うけどさ、
 失敗するのが
 怖いだけなんじゃないん?」

「ハァ?」

タクマは、コチラを
挑戦するような目で見てくる。

「そもそも、可能性重視なら、
 サヨちゃんなんか狙わんじゃろ!?

「お前は、サヨちゃんと歌舞伎に
 行きたいと思ったんじゃろ?
 そのために、寝る間も惜しんで
 働いとった!
 じゃったら、恥かいても、
 何があっても、
 ど~しても、君と歌舞伎に行きたいんだ!って、
 誘えばええと思うんよ。
 そしたら、意外と
 オッケーしてくれるかもしれんし。
 ダメだったら、ダメで、また歌舞伎以外で
 誘えばええ。
 嫌いって他人から聞いたから、止めました、
 じゃ、サヨちゃんに何も伝わらんじゃろ!」

「・・・」

タクマは黙って俺の話を聞いている。

f:id:peraichikun:20190429235831j:plain

 

「何を観に行くか、
 じゃないんじゃない?
 人の心を動かすのは、
 結局、熱意なんよ!!!」

「熱意・・・」

タクマはじっと俺の目を見ている。

「・・・分かったよ。誘ってみる。」

「よっしゃ!!」

俺はタクマの肩をポンポンと叩く。

「・・・でも、まさか、ぺらいっちに
 恋愛を教わるとはね」

タクマの表情が緩む。

「へっ・・・まぁ、ほぼほぼ
 “すずたん”の受け売りじゃけどね・・・」

「ハハハ。やっぱりね!
 ぺらいっちにしては
 やけに筋が通ってると思ったよ~!」

「何を~~!」

「ハハハ」

f:id:peraichikun:20190429235845j:plain

 

実際、俺がタクマに言った言葉は、
ほとんど“すずたん”の受け売りだけど、
昨日、“すずたん”に言われて、
俺もハッとした。

相手の反応を気にするあまり、
嫌われないよう、失敗しないように
相手のことを思うフリをして、
結局、自分の思いや熱意を
伝えようとしてこなかったのかなって。

だから、今の、
金ナシ、女ナシ、仕事ナシの
俺のフリーター人生があるのかなって。