無計画のツケ
バイトからの帰り、コンビニで
買い物をしていると、
ばったり、サヨちゃんと遭遇。
サヨちゃんは、“すずたん”こと
俺の大家さんが所有する
女子寮に住んでいる女子大生。
“すずたん”ちでのバーベキュー以来だ。
「あれ?サヨちゃん?久しぶり~」
「あら、ぺらいちさん」
サヨちゃんは、ふ菓子の袋を二つ手に取って
買い物カゴに入れる。
「ふ菓子、好きなんだ?」
「ええ」
サヨちゃん、やっぱ変わってるなぁ・・・
カラオケの選曲だって、かなり渋かったし。
たしか『銀座の恋の物語』だったっけ?
そういえば、タクマは、
もうサヨちゃんを歌舞伎に
誘ったんだろうか?
俺は、さりげなく探りを入れてみる。
「でも、やっぱりサヨちゃんって
古風なモノが似合うよね」
「そうでしょうか?」
「え~絶対そうでしょ~!
例えば、歌舞伎とかさ」
「歌舞伎は、好きではありませんね」
・・・・・・・え?!!!!
「マジで?」
「ええ、むしろ嫌いです」
「えぇぇぇぇ!そんなに?!!
え?だって、日本舞踊とか、
やってたんだよね?」
「やっていたと言うより、
やらされていた、と
言った方が正しいですね」
「へ?」
「もう、嫌で嫌で仕方がなかったんですが、
やらないと、母がうるさくて。
東京の大学に出てきたのも、
日本舞踊を辞めたかったからです」
「へ、へぇ~~そうなんだ~」
・・・やばいっ!!!
なんか勝手にサヨちゃんのこと、
古風なもの好き=歌舞伎好き
って、思い込んでた。
しまった・・・・
この感じだと、タクマはまだ
サヨちゃんを誘っていなかったのか・・・?
でも、1人2万円もするチケットは、
もう予約したって言ってたし、
タクマは、それ買うために
深夜の派遣バイトまでしてたのに・・・
チケットのキャンセルとかって、
できんのか???
俺はサヨちゃんと別れた後、
急いでタクマに電話をかける。
くそっ、出ない・・・
今日も派遣のバイトか?
タクマーーー!!やべぇことになったよぉぉぉ!!!