デュエットの部に・・・
“すずたんのカラオケ大会”は、来週の日曜日。
本番に向けて、衣装の白スーツも注文したし、
あとは、“すずたん”の練習あるのみ!
この1週間が勝負!!!
今日も、“すずたん応援部”全員で
“すずたん”ちに集まった。
「あとはなぁ、振付やな!!!
もっと、こうサビのとこは、
コブシをきかせるように!」
そう言うのはヒロセ。
「え?こう?」
「ちゃうちゃう!もっと脇を締めへんと!」
この振付っていうのが結構クセモノ。
俺が役者やってた頃も、セリフを言う時の
ちょっとした動きっていうのが、
一番難しかった。
俺も、元役者として、ここは黙っとれん。
「いや、それは違うじゃろ!
これは演歌じゃないんじゃけ!」
「せやけど、こんくらい
動きないとオモロないやろ!」
「そりゃぁ全く動かんのも変じゃけど、
もっと自然に動かんにゃ!」
「なんやて~?」
コイツ・・・分からず屋め・・・
「マルオは?どう思う?」
「・・・はい?!ワシは・・・
ええと思います!!」
「いや、どっちが?」
マルオを見ると、ゲンとじゃれ合ってる・・・
「よーしよしよし!分かった!分かったけ!」
・・・コイツ、聞いてなかったな。
「っていうかお前、
犬嫌いじゃなかったんかい!」
「いやぁ~、なんか・・・
ちょっとカワイくなってきたんよ」
マルオは照れくさそうに笑っている。
ハァ・・・どいつもこいつも!
「まぁまぁ、ちょっと休憩しよう」
“すずたん”・・・。
「“すずた~ん”!!これパンフレット??」
タクマが、机に置いてあった紙を拾い上げる。
「そうだよ」
「え?これデュエットの部ってあるけどー」
「うん、デュエットもあるよ。
それは、年齢問わず参加できるやつ。
まぁ親子とか孫と出るとかが多いけどね~」
「え、俺、出ようかな~!」
タクマの突然の参加表明。
「え?誰と?」
「そりゃぁ、もちろん・・・!
ねぇ、出ようよ!サヨちゃん!!」
「え・・・いえ、わたくしは・・・」
「いいじゃーん!お願い!!」
タクマは、熱心にサヨちゃんを誘っている。
「おねがーい!俺となら絶対優勝できるって!
選曲は任せるからさ~!」
最初渋っていたサヨちゃんも、
タクマの熱意に負けたのか
しばらく考えた後、首を縦に振る。
「それなら・・・承知しました」
「え?マジ?ヤッター!!!
なに歌う?なに歌う?」
「では・・・『銀座の恋の物語』で」
「・・・・・・・・え?誰の歌?」
「え?ご存じないんですか?
石原裕次郎と牧村旬子」
「・・・いや~知らない」
困惑したタクマは“すずたん”に助けを求める。
「“すずたん”知ってる?」
「いや、まぁ聞いたことはあるけど・・・
若いのに、よく知ってるねサヨちゃん」
「わたくしの祖母が、よく歌っておりまして」
サヨちゃん・・・
どんだけ古い曲知ってるんだ?
でも、タクマ・・・フフフ。
この選曲はさすがに、予想外だったろう・・・
「・・・よし!!!じゃぁ、練習するよ!!!
え~と、なんだっけ?銀座の・・・?」
「『銀座の恋の物語』でございます」
「分かった!!!」
これは面白くなってきた・・・