イチローの人間味
一昨日は、東京ドームで、
メジャーリーグの開幕シリーズの試合が行われた。
イチローの所属する
マリナーズVSアスレチックス。
スーパーヒーローの来日。
45歳という年齢もあるし、
最近全く打ててないし、
おそらく今日あたり、
実戦でイチローを見れる
最後の機会になるのではないかという
雰囲気はどことなく漂っていた。
試合前、東京ドームには、
イチローの姿を見ようとするファンたちで、
ごった返していた。
東京ドーム近くの俺のバイト先も当然
お客さんで溢れていたが、
いざ、試合が始まると、
店内も一気に静まり返る。
「さぁ、私たちも見ましょう!!!」
大の野球好きのヤマちゃんの一言で、
俺たちもドーム内の中継をスマホで見る。
ヤマちゃんは、ホントは
ドームで見たかったらしいけど、
やはり、チケットが手に入らなかったようだ。
イチローが打席に立つと、
スマホの前の俺たちも大歓声。
「イチローだ!!イチロー!!!」
「このフォームが・・・かっこええんよねぇ~」
イチローの代名詞である、
打席で腕を伸ばし、バットを立て、
袖をまくる姿に、マルオも興奮している。
確かに、かっこいい。
この仕草を子供の時、何度マネしたことか。
試合は、マリナーズが先制するも
イチローは、残念ながら第三打席まで
バットから快音は響かない。
「はぁ~~ダメかぁ~・・・」
「もう29打席もヒット出とらんのか・・・」
そして、第四打席、
チームも7回の裏に追いつかれて4-4で迎えた
8回表ツーアウト、走者を二塁に置いて、
一打勝ち越しの場面でイチローの第四打席。
「次、打てんかったら、
最後の打席になるいうことか・・・」
マルオが寂しそうに呟くので、
俺は喝を入れる。
「おい!!縁起でもないこと言うなや!!!」
「そうじゃね・・・
打て―!!!イチロー!!!」
俺たちは、イチローの
一挙手一投足に注目。
そして6球目。
イチローが打った球は、
ピッチャーの左を抜けて、
転がっていく。その瞬間、
俺たちにも歓声と悲鳴と、ため息が漏れる。
「あー!!!打った!!!」
「キャー――!!」
「ハァ~・・・」
イチローが打った打球は、
惜しくもショートゴロに・・・。
その後、イチローは、交代をつげられ、
結局、それが現役最後の打席になった。
「うぅ・・・イチロー・・・」
横を見ると・・・
ヤマちゃんが号泣してる。
イチロー・・・
日本が誇る世界のスーパースターの引退か・・・
「おい!!お前ら!!!
早く休憩から戻って!!!
今日は営業時間延長するぞ!!!」
店長が叫んでいる。
やべっ、感慨にふけってる
場合じゃなかった。
試合が終わって、東京ドームから
ファンたちが一斉に出てきて、
店内にもイチローファンたちが、なだれ込んでくる。
ヤマちゃんも目を赤くしながら接客。
「い、いらっしゃいませ~!」
「もうっ!こんな時間だよ!
なっかなか試合が終わんないから!」
「あれ?お客さん、終電とか大丈夫なんですか?」
「いや、もう今日はいいよ、終電。
明日はそのまま仕事行く!ハハハ」
カウンターに座ったオジサンは、
今日の試合のために、
石川県からはるばる見に来たと言う。
「兄ちゃん、引退会見見たか?」
「あぁ、ちょっとだけ・・・」
「イチローってクールだよな~!!
涙の一つも見せやがれってんだ!
そう思わねぇ?」
確かに・・・イチローって、
野球にものすごくストイックで、
近寄りがたい雰囲気というかオーラがある・・・
だからこそ、あのグラウンド一周したときでも、
ちょっとでも涙を見せてくれたら、
もっともっと感動しただろうに
なぁ~ってのはある・・・。
最後くらい、人間らしい
イチローを見たいというか・・・
でも、最後の最後までイチローだった。
「ところでさ、イチローには、
元アナウンサーの奥さんいるだろ?」
「あぁ、そうみたいですね」
「でも子供ができなかったんだよ。
でも、実は・・・
アメリカ人の愛人がいて、
子供もいるんだよな・・・」
「え~!?どこの週刊誌のネタですか~?」
「いや!ホントホント。
アメリカに住んでる友達が
言ってたんだから」
え~、かなりウソくせ~・・・
「それからさ、その子供の
名前がジローってんだよ・・・」
「いや~それは・・・」
それからも、オジサンは、下世話な話の
オンパレードだった・・・。
ま、そんな噂が立つのも、
スーパスターの証ってことで。
イチロー選手!!長い間、お疲れ様でした!!