はよう入れ!
バイト後、家に帰ろうとしていると、
家の前になぜかマルオを発見。
なにやらコソコソしている。
「なにしとん?お前」
「え??あ!!ぺらいちさん!」
突然の声に驚き、
マルオはビックリしている。
「いや・・・ゲンと遊びたい思うて、
来たんじゃけど・・・」
「いや、この前、
遊んだばっかりじゃろ?」
ちょっと前まで犬嫌いだったのが、ここまで
犬好きになるのも珍しいな・・・
「で?なんで入らんのん?」
「いや~、どうしようかな~
思うとったんですよ」
「いや、普通に入ればええじゃん」
「いや、バーベキューで
来たばっかじゃし・・・」
「何を気にしょんな。はよ入れや」
「ええんですかねぇ・・・?」
「は?ええに決まっとるじゃろ」
ま、俺んちじゃないけど・・・。
「こんばんは~!」
俺たちが挨拶すると、
“すずたん”は、いつも通り笑顔で
迎えてくれる。
「おうおう、今日は
マルオ君、来たんだ」
「ご無沙汰しとります~」
マルオはペコリとお辞儀をする。
「いや、この前、会ったばっかりじゃろ・・・」
俺がそう言うと、
マルオは、顔を赤くしている。
「あ、そうじゃった・・・」
「アハハ。まぁ、何も無いけど上がりなよ」
向こうからは、すでに、カリカリという、
フローリングを走ってくる
ゲンの爪の音が聞こえてくる。
「わぁ~~ゲン~~~」
ゲンはマルオに飛びつくと、
ひとしきりじゃれ合っている。
そして珍しく、
俺の方にも向かってくる。
「お、おいでぇ~ゲン」
俺が手を広げると、
ゲンは、いきなり俺の顔を
ベロベロと舐めまわす。
「うわぁっ」
あれ・・・確かゲンって嫌な時に、
舐めるって“すずたん”言ってたような・・・
まぁ、いいか。
マルオとゲンは、
いつものように追いかけっこして
遊んでいる。
「実は、今日は
ゲンにプレゼントがあるんよ」
マルオは、カバンから
『C』のロゴが入った赤いキャップを取り出す。
「え?!カープのキャップ?!」
俺は叫ぶ。
「そうなんよ。カープ公式グッズの
ペットキャップなんよ!」
マルオは、そのキャップをゲンにかぶせる。
うん、ゲンには赤がよく似合ってる。
「うわ~ありがとう!でも、マルオ君には
この前もオヤツ買ってもらったのに・・・」
“すずたん”は俺たちの
懐事情を気にしているようだ。
「いや、ネットで安かったけぇ。
気にせんといてください。
それに・・・」
「それに?」
「いや、プロ野球が、
この前開幕したんじゃけど、
最近、我らがカープが、ヨワぁて・・・」
そう、カープは、主力の丸選手や
精神的支柱だった新井選手が抜けたせいか、
開幕ダッシュに失敗し、
ここ数試合、散々な負け方をしている。
「今年こそは4連覇、
んで日本一に
なってもらわんにゃいけんのに・・・!!!」
マルオは拳を握りしめて熱弁している。
「そこで・・・」
「そこで??」
マルオは、カープのキャップをかぶったゲンを
ヒョイッと両手で高く持ち上げる。
「ゲンを担いで、
『ゲン担ぎ』じゃぁ~~!!・・・って」
「・・・・・・」
マルオ渾身のギャグに、
俺と“すずたん”は呆気に取られる。
ゲンも、持ち上げられるのは、
あまり好きではないのか
必死にマルオの腕から下りようとしている。
「ほら、ゲンも嫌がっとるで・・・」
「あぁ・・・」
さて、マルオのサブい
『ゲン担ぎ』が効果を
発揮する時は来るだろうか。
頑張れ!!カープ!!!