奇跡の出会い
「ねぇ~ぺらいっち~!!」
今日もタクマは、甘えた声ですり寄ってくる。
「なに・・・?」
「ねぇ~次は、いつサヨちゃんと
会わせてくれるのさー?」
やっぱり。
「・・・あのさぁ、
サヨちゃんのどこがええわけ?
あんな畏まっちゃってさ~・・・
フリーターの俺が言うのもなんだけど、
世間知らずだしさ・・・
料理もしたことないんだってよ?」
「へぇ~そうなんだぁ~!!
じゃぁ、俺が教えてあげないと!
とりあえず、
サヨちゃんの電話番号教えてよ」
「いや、俺も知らんし!!
ってかタクマは、
サヨちゃんじゃなくても、
他に女の子いっぱい、
いるでしょ???」
「いや、だって『運命』だなぁ~って思って」
「ハハ・・・そんな大げさな」
すると、タクマは急に真面目な表情になる。
「あのさぁ、世界に
人間がどれだけいると思ってんの?」
「・・・は?」
「70億だよ?70億!
そんな中で、出会えたんだよ?
もう奇跡でしょ!!運命でしょ!!
大切にしなきゃ!!!」
「はぁ・・・」
・・・どっかで
聞いたようなセリフだな。
まぁ・・・でも、確かに
人と人が出会うのって、
生まれた時代、
国や地域・・・って考えると、
たとえ、すれ違うだけでも、
ものすごい確率かも・・・
そうか。タクマは
一つ一つの出会いを
ものすごく大切に思ってるのか。
それに比べて、俺は・・・
出会えた奇跡なんて感じられずに、
人の嫌いなとこばっか見て、
否定的に考えてしまう。
そうか・・・そういう風に
考えてるのかタクマは。
俺も、単に好き嫌いじゃなくて、
もうちょっと出会いを
大事にしないといけないのかもな・・・。
「あ、この決め台詞、
いつもナンパの時に使うやつね!」
「・・・」