タクマの背中
「意外過ぎる・・・」
俺はいつもの喫煙所で、
先日送られてきた
親父のLINEを見返していた。
親父ってこんなに面白かったのか・・・
あんなに普段、
あんまり喋んない親父が。
しかも、ひそかにブログも
チェックしてくれていたなんて・・・
ちょっと恥ずかしい気もするけど、
でも・・・
なんだか嬉しいな・・・
ガチャ。
「ぺらいっち!!」
「おう」
最近では、俺がここで
タバコを吸っていると、
決まってタクマがやってくる。
「どうしたんスか?そんな背中丸めて~
あ~!!!
まだアンナ引きずってんスかぁ??」
「ちげーよ」
「いや、絶対そうだ!!
もぅ~ぺらいっち、
終わった恋は、もう
どうにもなんないんスから。
俺なんか、もう次のターゲット
見つけちゃったもんねー!」
「え?!早っ!」
相変わらず軽いなぁ・・・
俺もこいつみたいに
切り替え早くなってみたいよ・・・
「ハッハッハ!!
ぺらいっちは、どうせ、
アンナとのLINEを
また見返してたんじゃないのぉ~?
女々しいっスよ!」
「ちげーって!」
そりゃぁ、アンナのことは、
まだそんな簡単には
吹っ切れないけど・・・
「いやさ・・・実は俺、
個人的にブログやってるんだけど、
アンナとのこと書いたんよ。
そしたら昨日、
親父からこんなLINE来てさ・・・フフッ」
俺はタクマに、
親父からのLINEを見せる。
「へぇ~~・・・・・・」
「いや!それだけかよ!!
俺の親父、基本無口だから
こんなん書く人じゃないって
思ってたんだよ。
人は見かけによんないんだな~って」
「ふ~ん。。。まぁ良かったんじゃないスか」
おいおい、
なんか反応があっさりしてんな。
タクマならもっと
面白がってくれると思ったのに。
「タクマの親父も、
おまえのこと心配してると思うよ~。
勉強もせんで、次々女の子代えてさ!」
「うーん、俺、父親?
いないから、よくわかんねっスわ」
え・・・。知らんかった・・・
「あ、そうなんだ・・・」
「なんか病気で死んだらしいっス」
「そうかぁ・・・」
「ま!小っちゃい頃なんで、
全然記憶ないんスけどね!!」
そう言うと、タクマは、
くるりと背を向けて喫煙所から出ていった。
・・・そうだったのか。
タクマは、明るくて、
チャラくて、調子良くて・・・
てっきり、両親に
甘やかされて育ったもんだと
思ってたけど・・・
親父といい、タクマといい、
人って、ホントに
上辺だけじゃ分かんない・・・