やることなすことイケメン
「聞いてよー。
こないだボーリングでタクマがさぁ」
休憩中、アンナの声が聞こえたので、
休憩室に行くと、
トモコ、そしてタクマが話している。
俺は部屋の外から
必死で聞き耳を立てるが、
内容は所々しか聞こえない。
「いや、だから滑ったんだって!!」
タクマは身振り手振りで、
面白おかしく話しをしていて、
トモコがそれを聞いて大声で笑っている。
「アハハ!え~!!!
それはナイわ~!!!」
「タクマってイケメンなのに、
そういうことするからイイよね~」
アンナも楽しそうだ。
ムムム・・・
ボーリング・・・
くそぉ、当然だけど、
タクマもアンナと
遊びに行ってるのか。
話に入りたいけれど、
内心穏やかではない俺は、
休憩所を去り、
ゴミ捨て場がある裏口に
タバコを吸いに。
フゥ~~~
俺もタクマみたいに面白おかしく
話せれば・・・
イケメンで面白いって卑怯だろ!!!
ガチャ
「あれ?ぺらいっち?」
「・・おう」
タクマだ。
よりによってこんな時に・・・
俺が黙り込んでいると、
タクマが話しかけてくる。
「ぺらいっち、ボーリングできる?」
「・・できるよ。ボーリングくらい」
「俺この前、200越えたんスよ!
7連続ストライク!
今度勝負しましょうよ!!
ぺらいっちアベレージどんくらいスか?」
「え??まぁ普通だよ・・・」
ってかボーリングも上手いって。
やることなすことイケメンかよ。
俺なんか良くて
120くらいだっつーの。
この、自慢男め。
誰が勝負するか。
「そうだ、こないだ、アンナと
食事行ったらしいじゃないすか。
どこ行ったんすか?」
「・・・いいだろ、どこでも」
なんだよ。アンナ、タクマに話したのか。
「なんかツレないなぁ~」
自分でも大人げないと思うけど・・・
嫉妬心と焦りと不安で
どうしようもない・・・
「あーあ、せっかく、イイこと
教えてあげようと思ったのになぁ~」
「なんだよ、それ」
「アンナの誕生日」
「え?!!」
そういえば、誕生日いつか
聞いてなかった・・・
「良い肉の日っス」
「は?」
「11月29日。
俺はもうプレゼント用意しましたよ」
「え?もうすぐじゃん!!」
マジかよ。知らなかった・・・
あぶねー・・・
危うく大事な大事なアンナの誕生日を
スルーするところだった・・・
「・・・なんか、ありがとう
・・・でも、なんでだ?」
「オレ、正々堂々勝負したいんで」
そう言って、タクマは去っていった。
くそ・・・やることなすことイケメンかよ・・・
俺は自分のガキさ加減が嫌になった・・・