32歳フリーターの憂鬱
バイトの休憩所で大学生たちが年齢
の話をしている。
「新しく入った子なんて18歳だよ?」
「そりゃそうでしょ。この前まで高校生
だったんだから」
「いいなぁ~。20歳になっちゃったよ
~、やだよぉ」
「10代、あっという間だったよな~」
「俺なんか22だよ。もうおっさん」
「ですね~、あはは」
若僧どもめ。22歳でおっさんだと。
じゃぁ、32歳の俺はじいさんかよ。
「ところでさ、店長っていくつぐらい
なんだろ」
「おまえ知ってる?」
「さぁ・・」
「ぺらいちさ~~ん!店長って何歳か知ってます?」
おいおい、俺に話を振るな。
「・・・40、くらいじゃない?」
俺は一言喋って食事に戻ると、
大学生たちはまたしゃべり出す。
「あぁ、まぁ店長はそんくらいかぁ」
「でも、結構なおじさんですね」
「店長だし、まぁそんくらいの歳が普通
じゃない?」
「じゃぁ、ウチダさんはいくつ?」
「知ってる?」
「さぁ・・・」
「ぺらいちさ~~ん!ウチダさんって
いくつですか?」
ウチダさんは社員の一人で、
次期店長候補といったところだ。
「ウチダさんは・・・28だったかな。」
「え~~~!!!」
「結構おじさんだね~。」
「まぁ社員だからね」
「でも、28歳で次期店長候補かぁ〜」
ハァ、頼む・・・
このまま年齢の話、終わってくれ。
社員より年上でまだ大学生と同じ時給で
バイトしてるなんて・・・。
俺は、なるべく存在感を消しながら
ご飯を黙々と食べる。
「あれ?・・・そういえばぺらいちさん
っていくつなんですか?」
「んゴフぉっ!ゴホッゴホッ」
くそお、結局俺んとこくんのかぁ。
「ん、おれ、は、・・・32」
「え?」
「・・さんじゅうに」
「え?いくつです?」
この・・・何度も言わすなボケェ!
「サンジュウニ!」
「え“~~~~~~~~~~!!!!」
「まじっすか!ぺらいちさん
32歳かぁ~」
「え?うそ!ぺらいちさん32?!!」
あ~もう、そんな大きな声で何度も
言い直さないで〜!
「ということは・・・ぺらいちさんは、
ウチダさんより年上っすか?!」
「え~?なになに~?」
「ぺらいちさんがどうしたって?」
大声を聞きつけて、そこにいなかった
女子大生たちも集まってくる。
はぁ・・・なんでこうなる。
「そうだよ~年下に敬語だよ~、
あはは」
もう笑ってそう言うしかなかった。