ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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男前プラス!

「オノくん、写真持ってきた?」
店長にそう言われたが、なんの
ことだかさっぱり分からない。

「証明写真」
あー!!忘れてた!
建物に入るための従業員証を作る
から、今週末までに証明写真を
撮って来いって店長から言われて
たんだった。

「えーー!たのむよ~明日までに
 絶対に持ってきてよ」
「すみません。わかりました。」

次の朝、チャリを思い切り漕ぎ、
駅に隣接された証明写真の機械に
潜り込む。
写真を撮るために30分前に家を
出るつもりが、寝坊してしまった。
ゆっくり写真撮影してる暇はない。

 

 

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『撮影モードを選んでください』

最近の証明写真機は、撮影機能に
様々なバリエーションがあるらしい。

<通常 800円>
<男前+(プラス)900円>
<美肌なんとか 1000円>

この際、どれでもいいけど、100円で
男前にしてくれるならこれにしよう。
俺は軽い気持ちで<男前+>を選ぶ。

しかし、よく見たら寝癖がひどい。
せっかく、<男前+>にしたんだから、
寝癖くらい直さないとな。
ワックスを取り出し、ハネた髪の毛を
整える。これでよし。
俺は、設定をスキップして進める。

『撮影は2回です。』

なるべく不自然に見えないように
微笑み、キメ顔をキープしながら、
撮影ボタンを押す。

『撮影を開始します。3、2、1』
パシャッ

やばい、まばたきしてしまった
気がする。
まぁ、もう一回あるし。気を取り
直して2回目の写真撮影。
表情を整えて撮影ボタンを押す。

『撮影開始します。3,2・・』

あ!・・・そういえば、
椅子の高さ調節するの忘れてた!
よく見たらさっきから目の高さ
大分ズレてるし!これじゃ、頭が
見切れてしまう。

でも狭すぎて、椅子の調節なく、
体を下に下げるのは無理だ。
その時、一瞬の判断で、咄嗟に
目線を合わせるために顔を前に出す。
パシャッ。
我ながらファインプレーだった。

『どちらか選択してください』

1枚目。
やはりヒドイ半目だ。そのくせ
口元は微笑んでいるので怖い。
おまけに頭は見切れている。

そして2枚目。
なんだこれは。まず、顔を前に
出し過ぎたのか、顔がやたらとデカい。
しかも、なぜかアゴが強調されて、
猪木みたいな表情になっている。

見切れたニヤケ半目か、
フレーム一杯の猪木か。
究極の二択・・・!

 

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しかし、取り直す時間もないため、
仕方なく2枚目を選択し、急いで
バイト先に走る。

「オノくん、写真」
「はい・・・持ってきました」
「ん?・・・ふざけ過ぎでしょコレ。」

差し出した写真をよく見ると、
ドアップの猪木のヨコの余白に、
ちゃっかり<男前+>と記載され
てあった。
くそぉ、何気なく選んだ<男前+>
のせいで、よけいに失笑を買って
しまった・・・。

結局、みんなに散々バカにされた
あげく、店長に撮り直しを言い渡された。