ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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マルオの新人教育

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昨日からバイト先に入ってきた
新人のタカタさん。
美大の短大で絵を学んでいるらしい。
タカタさんは、今まで倉庫内作業の派遣バイトしか
したことがないらしく、飲食店でのバイトは
初めてらしい。

「じゃぁ、マルオ、教育係ね」

店長に、そう言われると、
マルオは明らかに動揺している。

「え~~、ワ、ワシが???」

そうか・・・マルオも、
1年くらい働いてるから
もう教える立場になったんだな。
時が経つのは早い・・・。

「ワシ、マルオ言います。
 なんか
教えることになったけぇ、
 よろしくね」

「・・・がいします」

タカタさんは、か細く、
小さな声で答える。

「じゃ~~~~・・・・とりあえず・・・」

歩きながら店内のテーブルの配置を
教えていくマルオの後ろに、
タカタさんは黙って付いていく。

「テーブル番号が、ここからここが、
 1から10じゃろ。んで、こっちが・・・」

店内を一通り、周って戻ってくる2人。

「ん~まぁ、そんなもんじゃね・・・あとは、
 お客さんが実際来てから教えるけぇ・・・」

「・・・はい」

タカタさんが頷き、
二人は、店の入り口の前で
並んでお客さんを待っている。

しかし、今日は東京ドームで
目立ったイベントは無く、
お客さんも中々入ってこない。

「・・・・」
「・・・・」

丸いお盆を抱えたマルオとタカタさんは、
気まずそうに、2人並んで立っている。

おいおいマルオ、
まだ他にも教えることあるだろ・・・

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しばらく見ていても、
二人とも微動だにしないので、
俺が声をかける。

「おい、マルオ、挨拶とかは教えたん?」

すると、マルオはハッと気づいたように
タカタさんに話しかける。

「そ、そうじゃ。
 接客7大用語って知っとる?」

「・・・」

タカタさんは、ゆっくりと首を傾ける。

「あ~そりゃぁ、知らんか。
 えっとね・・・

 挨拶は、できるだけ元気に大きな声で・・・」

すると、マルオは、
無理に笑顔をつくり、大声を張り上げる。

「いらっしゃいませーーー!」

「・・・」

「・・・少々お待ちください!!」

「・・・」

「・・・かしこまりました!」

「・・・」

マルオは、タカタさんに
復唱して欲しかったのか
いちいちタカタさんの顔を見ながら挨拶するが、
タカタさんは、マルオを見て、
ただ頷いている。

「あの・・・一緒に・・・」

「あ・・・・すみません」

そして、一通り、二人で、
接客7大用語を復唱した後は、
マルオも、緊張がほぐれたのか、
積極的に話しかけているようだ。

「タカタさんの出身はどこなん?」

「・・・・・きです」

「え?」

マルオは時々、耳を近づけ、
話を聞き返している。

「・・・・・きです」

「アッハッハッハ、
 そうなんじゃ~!へぇ~~~!」

タカタさんの声が小さいのもあって
遠くからでは、2人の会話は
良く聞こえないけど
何やら楽しそうに見える。

「おいおい。さっきは、
 何を楽しそうに話しとったんやマルオ!」

俺はマルオにこっそり聞いてみる。

「えっと・・・タカタさん、
 絵を描いとるそうです!」

「・・・え?それだけ?!!」

っていうかその情報、
もうすでに知ってたし・・・。

「いや、それがほとんど
 聞こえんかったんですよ・・・」

え・・・
じゃぁ、お前は一体、
何に対して笑っとったんや・・・

 

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