ハーゲンダッツ キャラメルトリュフ
「みなさんでどうぞ~」
毎日のように店に来てくれる
常連客ハラダさんは、
会社の経営者らしく、
いつも気前よく差入れをくれる。
今日はあのハーゲンダッツ!
ハーゲンダッツなんて高級品は、
自分では買う事はほとんどないので、
ホントにありがたい。
「わぁ~、ヤッター!」
マルオと俺は、
もらった袋を覗き見る。
バニラやグリーンティー、
ストロベリーなど、
いろんな種類が入っている。
「ぺらさん、どれがええですか?」
「いや、もうハーゲンダッツなら
どれも美味いし、どれでも・・・」
「じゃぁ、おれコレがええ!!」
え?
マルオが手にしたソレは、
一つだけ、他とは明らかに違う
オーラを放っている。
「キャラメルトリュフ?」
パッケージには、
いかにも特別感がありそうに、
金色で『期間限定』と書かれている。
ムム、・・・俺もコレがいい。
やっぱ期間限定には弱いもの。
しかも、どれでも良かったくせに、
マルオが欲しがってると、
急に俺も欲しくなってくる。
「じゃぁ、ワシこれで!」
「まぁまぁ!そんな慌てんなや。
あとで平等にジャンケンよ」
「え~!!
でもこれ1個しかないけぇ・・」
「とりあえず冷凍庫に入れとこうや」
「くぅぅ・・・ワシ絶対勝つけぇ!」
「フフ、どうかな?」
「え!?
ぺらさん、さっき何でもええって
言っとったのに!」
「んんん~?
そんなこと言ったっけ!?」
マルオよ。
世の中、そう甘くないぜ・・・。
俺とマルオは、一旦袋を
従業員用の冷凍庫に入れると、
誰も触らないよう、定期的に
冷凍庫の周辺を警備する。
「マルオ、そっち見といて」
「はい。じゃけど、ぺらさん、
抜け駆けは、許さんけぇ・・・」
「わかっとる、わかっとる!」
よし、誰も・・・
「あれ?」
無い!
少し目を離した隙に、
冷凍庫から袋が無くなっている。
後ろを振り向くと、
店長がいつの間にか
冷凍庫から袋を取り出し、
中身を物色している。
「よーし!みんな!
ハラダさんからの差入れ!!
食べていいよー!!」
とバイトに声をかけながら、
店長は、ササッと袋から
一つ取り出した。
「あ・・・」
俺はすぐさま袋の中を確認しに行くが
・・・案の定無い!
一つしかなかった、
限定のキャラメルトリュフが、
無い・・・。
「あ゛~~~、
ワシのキャラメルトリュフ~~」
俺の横でマルオが叫んでいる。
マルオ・・・。
世の中、甘くないな・・・。