差し入れ
今日は久々の休みで、
朝からフラっとパチンコに行ったら、
なんだかツキまくりで、
出るわ出るわ。
普段は全部お金に換えるけど、
今日はなんだか
良い事をしたい気分だ。
そうだ。バイトの大学生たちに、
差入れでも持っていこう。
普段先輩らしいこと
なんもできてないしな。
俺は、パチンコ屋の景品の
お菓子が大量に入った袋を持って、
バイト先に向かう。
休憩所に着くと、まだランチの時間
が終わってないのか、誰もいない。
もよおしてきたので、とりあえず
袋を机に置いてトイレに。
俺がトイレで踏ん張っていると、
ランチを終えた大学生たちが
戻ってきたらしく、
休憩所の方がガヤガヤしてくる。
「ウソ?!!!
なにこれ?!差入れ?」
「めっちゃあるじゃーーん!!」
お、騒いでる騒いでる。
「え~、誰~?超優しくない?」
あ、オレオレ。
俺が持ってきましたよ~。
やっぱ良い事をすると気持ちがイイ。
みんなも喜んでくれるし気分も最高。
俺はトイレを切り上げ、
休憩所に颯爽と向かう。
すると、ふいに後ろから
呼び止められた。
「あれ?ペライチさん?」
「おう、カサハラ」
カサハラは、親が外資系の役員クラス
だとかで、ブランドのことなど
良く知らない俺でも分かるような、
質のいい服や靴、高そうなバッグや
時計を、いつも身に着けている。
カサハラは、何やらキレイな紙袋を
手にしている。
「あ、これGODIVAの差入れです」
「え・・・?」
いやいやいや、
それ最高級のチョコやんけ!
なんで今日~~~~~~!!
今GODIVAなんか出されたら、
俺はどんな顔してパチ屋の景品の
お菓子を渡せばいいんだよ。
くそぉ、余計なことを・・・。
俺はカサハラの後ろに隠れるように
休憩所に入っていく。
カサハラは、一箱何千円もしそうな
GODIVAのチョコレートを
何箱も机に広げていく。
「えー!?カサハラ、
どしたのこれ!?」
「なんか新作が出てたんで
買っちゃいました。
みんなで食べてください」
「やった~~~!」
「うわっ!ウマすぎーーー!!」
俺が机に置いていた袋は、
いつの間にか部屋の隅に
追いやられ、未開封のポッキーや
たけのこの里が、忘れ去られた
ように散乱している。
「あれ?ペラさん食べないんですか?」
「あ、うん・・・」
俺のイマイチな人生を
象徴しているかのような事件だった。