嫉妬
「かわえー?ね?かわえーやろ?」
演劇フリーターのヒロセが
最近できた彼女の写真を
見せて回っている。
この前出た舞台で恋人役を演じ、
そのまま付き合ったらしい。
俺は隣にいたマルオに話しかける。
「あいつ浮かれすぎじゃろ」
「なんかヒロセさん、
今日店に彼女連れてくるんじゃと」
も~どんだけ自慢したいんだよ・・・
「ぺらいちさんは、
彼女欲しゅうないんですか?」
「あ、おれ?俺は今は要らんね~。
付き合うとかってたいぎーし」
そう言いながら、
俺は内心穏やかではなく、
嫉妬心がメラメラと燃え始める。
いいなぁ・・・
でも・・・どうせブスだろ。
絶対ブス!頼む!!
ありえんくらいの
ブスであってくれ・・・!
そしてまもなく、
ヒロセの彼女がご来店。
店の入り口で店長に挨拶している。
「はじめまして~」
モデルのようなスラっとした体型に、
小さな顔。さわやかな笑顔。
まじかよ・・・
口惜しいくらいカワイイ。
その後、ヒロセはわざわざ
厨房までみんなの感想を聞きに来る。
「ぺらいちちゃ~ん、どう??
どやった俺の彼女」
ヒロセの得意げな顔がやけにムカつく。
「いや~まぁ、
良さそうな子じゃね!!」
なにがぺらいちちゃ~んだ。
なんでこいつ俺より年下なのに
タメ口なんだよ。うぜー。
嫉妬で、いつもなら
気にならないことにさえ
イラついてくる。
「じゃ、俺はこれから彼女と
一緒に飲むから!ヨロシク!」
「お~!楽しんでの!」
クソ、早く別れてしまえ・・・
ヒロセが厨房から去ったところで、
俺は思わず隣のマルオに本音を漏らす。
「やっぱ彼女欲しいのぉ、マルオ・・・」
「いや・・・ワシは彼女おるけぇ・・・」
「あ~・・・そうなんじゃ~・・・」