禁煙チャレンジ
バイトでは、まだ結構な数の
スモーカーがいる。
この10月からタバコの値段が
上がったのも手伝って、
周りでも禁煙しようか、
なんて声もチラホラ聞くようになった。
俺もそろそろ・・・と思うが
そう簡単にはいかない。
誰しもが、一回は禁煙に
チャレンジするが、
誰かが禁煙しようとする素振りを
ちょっとでも嗅ぎつけると、
周りの喫煙者がそれを必死で
阻止しようとするのだ。
バイトの休憩場所で
タバコを我慢していると、
店長が聞いてくる。
「あれ?オノくん吸わないの?」
「俺、やめますわ」
「ええ~?ほんとに~?」
店長は、隣でかまわず、
タバコをスパスパ吸い、
煙をこちらに吹きかけてくる。
「一本吸う?」
「え?いや・・・いいです」
さらに、タバコのお使いを頼んでくる。
「オノくん、ちょっと
マルメン買ってきて」
そんなことをしたら吸いたくなる・・・
もちろん店長は
それを分かってやっている。
買ってきたタバコを開けると、
「いいよ、一本吸っても」
ここでジ・エンド。
俺の禁煙は2日ともたなかった。
そしてある時は、店長が
禁煙を始める空気を出し始める。
「体のためにやっぱり
タバコ止めた方がいいかなぁ」
すると、俺は、どこかから
借りてきた曖昧な知識を引っ張り出す。
「体に悪いって言っても、
東京の空気はそれ以上に汚いスから、
タバコ止めても意味ないスよ」
「そうかなぁ」
「それに、やっぱり
どっかでストレスを逃がさないと
いけないんじゃないスかね」
「だよなぁ・・・
おれ家庭的ストレスあるしなぁ。」
「溜めるのは良くないスよ」
「そうだね」
こうして喫煙者の
足の引っ張り合いは続いていく。