食事制限
ある時、お店に病院から
電話がかかってきた。
社員の健康診断の結果についてで、
その中でも寿司職人ハマーンの血糖値が
異常に高いという。
平常な人が80くらいのところ、
ハマーンは300あるという。
原因は明らかに、
毎日びっくりするほど、まかないを食べ、
毎晩のようにガールズバーに
通っているからだ。
病院で、このままではヤバイと
言われたハマーンは、店長指導のもと、
食事制限をすることになった。
糖質はもちろん、炭水化物もダメで、
脂質、カロリーが高いものもダメ。
摂っていいのは、糖質の低い
こんにゃくや豆腐、野菜だけ。
「めんどくせぇなぁ」
そう言いながらも、店長が毎日、
ハマーンのまかないをみんなとは
完全に別にして
特製ハマーンメニューを作る。
物欲しそうに、みんなの賄いの
天ぷら蕎麦や豚キムチ丼を見つめる
ハマーンにも店長は容赦ない。
「これ、食べていい?」
「ダメに決まってるでしょ」
「なんで~?」
「死んでもいいなら食べていいよ」
「う~~」
もちろん、大好きなお酒も飲めない。
毎日日課のガールズバー通いも、
店長から禁止された。
「ハマーン、ガールズバー行ってないよね?」
「行ってないよ」
「ほんとにぃ?でも家では
飲んでるんじゃないのぉ?」
「飲んでないっ!」
店長にしつこく問い質され、だんだんと怒りモードになってきたハマーン。
「ならいいけど、飲んでたらもう
まかない作んないからね」
そんな日々が続いたある日、
派手めの若い女の子二人がご来店。
カウンターでハマーンと何やら
楽しそうに会話している。
「昨日は来てくれてありがとね!」
「え?ああ・・・」
店長の方をチラチラと見ながら、
居心地の悪そうなハマーン。
店長に会話を聞かれていないことを確認し、
安堵した様子のハマーンだったが、
その日、店長の
ハマーン特製メニューは作られなかった・・・。