ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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ハマーンが来ない

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「あいつ!なんで来ねえんだよ!!!」

朝から店長が怒りMAXだ。
糖尿病を患っている派遣社員ハマーン
月曜から2日間出勤していないらしい。
月曜、火曜と「病院に行く」と
電話してきたらしいが
3日目の今日はついに連絡もつかない。

「クソっ!しょうがねぇな~」

店長は、仕方なく
ピンチヒッターの
職人タカさんに連絡する。
タカさんは腰の曲がったお爺さんで、
たまにしか出勤してこない。
今日も家で休もうとしていたようだが、
仕方なく来てくれた。

ハマーンが来ないんだって?」

「そうなんだよ。
 相当辛そうな声だったから
 家でぶっ倒れてんだろ、どうせ。ハハ」

しかし、タカさんは笑って一蹴する。

「ちがうよ。
 ボート(競艇)だよ。
今、愛知で
 『ボートレースダービー』っての
 やってるんだよ。」


確かにハマーン競艇場がある
平和島に住むほどの
競艇狂いということは、
みんなの知るところではある。

「まさか~。それはさすがにないでしょ」

「いや、月曜から来てないんでしょ?
 ダービー月曜からだもん」

「え~?・・・ちょっと調べてみて」

店長に言われ、調べてみると、
たしかに今週の月曜から
『ボートレースダービー』という、
競艇ファンにとっては外せない、
年に一度の一大イベントが
愛知で始まっている。
ハマーンが休みだした日程と
バッチリかぶっている。

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これは・・・競艇行ったな・・・

「うん、絶対、来ないね」

タカさんは自信を持って言う。
人生経験の長いタカさんが言うと
なんだか信憑性がある。
そんな中、店長は一人反論する。

「いや、それはない!!
 もし今日来なかったら、
 もうクビだよ!クビ!!」

「じゃぁ賭けるかい?
 今日ハマーンが来るか来ないか」

タカさんは不敵な笑みを浮かべている
・・・

そして、いつの間にか、
タカさんと店長の間で、
ハマーンが今日
出勤してくるか、
出勤してこないかの
賭けが始まる。

「賭けって、何賭けんの?ジュース?」

「いや、それじゃつまんないから
 焼肉オゴリね。バイトの分も」

タカさんはノリノリだ。

「ヤッター!!!」

その場にいたバイトたちも、
焼肉をオゴッてもらえると聞いて、
店長を賭けから降ろさせない
ムードをつくる。

「店長は来る方でいいんですね?」

「え、おいおい・・・焼肉?!!」

店長はいきなり大きな金額になり
少し尻込みしているようだ・・・

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「え、ちょっと待って。
 マジかよ。
焼肉って・・・。
 うーん・・・
 いや、今回は、ホントに
 辛そうな声だったから、
 あれは演技じゃないと
 思うんだよな~・・・」

みんなの『早く決めろ』という
視線が店長に注がれる。

「よ、よしっ。・・・来る!

 来いっ!ハマーン!バカヤロー!!!」

 


そして・・・
昼過ぎになり、
何も知らないハマーン
ひょっこり出勤してきた。

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「店長、悪い!!
 スマホのバッテリーが切れてて・・・」

いつもならハマーンに対して
毒舌の店長も、賭けに勝ったからか、
心なしか優しい。

「お~ハマーン・・・!!
 大丈夫か?体?」

ハマーンが来ないことを
確信していたタカさんは
ビックリしている。

「おい、ハマーン!何で来たんだよ!
 競艇行ってたんだろ?」

「え・・・?い、い行ってないよ~」

あやしい・・・

結局、ハマーンが昨日、一昨日
競艇に行ってたのか、
真相は分からないが、
俺たちバイトからしたら
焼肉を食べれれば
どちらでも良かったのだった。

「タカさん、ゴチになりまーす!!!!」