ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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見栄っぱりの焦り

 

バイトの休憩中、コンビニに
タバコを買いに行こうとすると、
「あ、俺も行きます!」
と、大学生トミーが付いてきた。

話しながら歩いていると、コンビニにもう着く
という時になって、トミーが慌て始める。

「あ、やべっ。財布忘れたっ!もーー!」
「え?マジで?」
「・・・ぺらいちさん、
 500円貸してくれませんか?」
「あぁ、ええけど」
「すみません!店に戻ったら
 すぐ返しますんで!」
「ええよ!こんくらい」
 
ホントは、そんな余裕はないのに、
歳が一回りも違う大学生相手なので、
見栄を張ってそう言ってしまった。

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実は、貧乏な俺の今の所持金は2000円。
これであと1週間過ごさなければならず、
自分のタバコも買えず節約しているくらいだ。

「いや!帰ったらすぐ取りに行きますんで」
「ええって!タバコくらい奢っちゃるよ」
「いや!悪いんで、ほんと」

よかった。これで、俺の面子も守られ、
なおかつお金も返ってくる。
奢ると言いながらも、お金が返ってくることを
ひそかに熱望している俺がいる。


その後店に戻ると、団体のお客さんが一気に
来店したらしく、店内がごった返している。

店長が来て、休憩中のバイトに呼びかけた。
「ごめん!店がまわんないから、ちょっと
 みんな休憩から戻ってくれる?」

仕方なく、俺とトミーも仕事に戻る。
団体客のオーダーをさばきながらも
トミーに貸した500円が頭から離れない。

 

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もしかしてこのまま返ってこないんじゃ・・・。

なんとかオーダーをさばき、
店もやっと落ち着いた。
店に戻ったらすぐにお金を取りに行く
と言ったトミーも、すっかり忘れている
ようで、他の大学生と談笑している。

どうしよう・・・。
「あのさぁトミー、
 さっきの500円なんだけど・・・」
と何気なく言ってみるか。

 

・・・あ~、やっぱ、ムリ!!!
奢るって一回言っときながら、
カッコ悪すぎる。
ちくしょう。
しょうもない見栄なんか
張るんじゃなかった・・・。

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結局、店は閉店し、帰宅時間になった。
トミーの姿は見当たらない。

もうあきらめよう。
たかが500円だ・・・。

・・・されど500円。


「ぺらいちさん、これ」
振り向くとトミーが500円玉を差し出している。

「すみません。遅くなって。
 ありがとうございました」
「え?」

返ってきた500円に嬉しくなった俺は、
つい喜びを口にしてしまいそうなのを
堪えながら、必死に演技する。

「ん? あ~、すっかり忘れてたよ。
 いいのに~。
 ・・・いいの?じゃあ」

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俺は受け取った500円玉を財布にしまった。