ぺらいちさんのおかげ
バイト先で大学生たちが話している。
「やっぱり最初に教わる人って大事よね~」
「マルオ、おまえ誰だった?」
「いや~ワシ、ここでのこと、
ほとんど全部ぺらいちさんに
教えてもろうたようなもんよ。
ホント、今のワシがあるのは、
ぺらいちさんのおかげじゃわ」
マルオ、嬉しいこと言ってくれるな~
確かに同じ広島出身ということで、
特別扱いしたのは間違いない。
マルオとは、ほとんど
同時期に働き始めたのだが、
俺は他の飲食店でも経験があったので、
マルオの教育係として、
皿の洗い方から、料理の作り方、
時には仕事の心構えみたいなものまで、
偉そうに教えていった。
時には厳しく言うこともあったのに、
マルオは人懐っこく、
素直に言われたことを
どんどん吸収していった。
客観的に見ても、1年生の中では
とびぬけて仕事ができるようになった。
今では店長からも重宝がられていて、
教えた自分としては、ちょっと鼻が高い。
しかし、今日、
そのマルオが来ていない。
シフトには入っているのに。
出勤時間からもう15分ほど経っている。
それから30分後、
「すいませんっ!遅うなりましたっ!」
マルオが息を切らして
小走りで店に入ってくる。
そこで店長がすかさず、
マルオに声をかける。
「おいおい、マルオまた遅刻か~!!?」
「はい!ぺらいちさんに教わりました!」
確かに・・・俺も遅刻常習犯だけど・・・
そこは見習わなくていい!