博才がない
バイトに向かう途中、
駅前の宝くじ売り場の
スピーカーから音が聞こえる。
「今ならキャリーオーバー3億円!!!」
はぁ・・3億円もいらないから、
10万円でもいいから当たらないかな・・・
買いもしないのに、
そんな想像をする。
・・・いやいや、ムリムリ。
そんな甘い考えでどんだけ
お金をドブに捨ててきたか。
パチンコ、競馬、麻雀。
ギャンブルと名のつくものには一通り、
手を出してきた。
しかし、どれも散々な結果。
負けが重なり生活費にまで手を出し、
ついには消費者金融で
借金も繰り返した。
信用も無くし、友人も失い、
親も散々泣かせてきた・・・
以前、地元に帰った時、
たまたま寄った占い師の
おばあちゃんにもこう言われた。
「あんたぁ、ギャンブルはする?
博才ないからせんほうがええね。
生まれつき博才がある人は、
なにやっても勝てるけど、
あんたぁにはない。損するだけよ」
そう、俺には博才はない。
真面目にコツコツ。
今日もバイト頑張るぞ!
更衣室で着替えていると、
大学生のトミーが話しかけてくる。
「ぺらいちさん、
今週末の競馬買います?」
トミーは先月、
初めて買った馬券が当たって、
儲けたので調子づいてるらしい。
バカ。・・・それが落とし穴だよ。
俺もビギナーズラックで
調子に乗ったのが
地獄への始まりだった。
「お前も俺と同じ匂いするから
絶対止めた方がいいって」
俺は一応年上として、トミーを諭す。
「いや、おれ絶対博才ありますわ。
今回勝ったら何買おうかな~」
「いや、そんなおいしい話が
転がってるわけないからさ」
「えー?マジで行かないんすか?
買わないと当たるもんも
当たらないスよ」
「ムリムリ。損するだけだって」
「でも2番人気以降のオッズが
10倍っすよ。10倍!!!
千円が一万円ですよ!」
「いやいや・・・」
「もしかしたら100円が
100万円になるかも
しれないんですよ!?」
「・・・」
数10分後には
トミーと賭ける馬を
真剣に選んでいる俺がいた。