ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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あらオノ君

バイトから帰り道、
自分の家の前を歩いていると、
後ろから声をかけられる。

「あら?オノ君?」

「あ・・・」

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しまった・・・
“すずたん”だ・・・

実は、数日前、ヒロセの舞台を
観に行った後の飲み会で、
突然キレて、帰ってからというもの、
俺は、“すずたん”に会わないように、
会わないように避けていた。

今夜も、ちゃんと鉢合わせしないように、
注意してたはずなのに・・・

“すずたん”は、コンビニの袋を片手に持ち、
足元にいるゲンは、不思議そうな顔をして
俺の顔を見ている。

「あ、すみません・・・」

あんな風に、“すずたん”の友達のタツさんに
キレちゃって・・・
きっと、幻滅しただろうな・・・
正直、“すずたん”に、
会わせる顔なんて無いよ・・・。
俺は、軽く会釈した後、すぐにでも
その場を立ち去りたかったが、
足元には、いつの間にか、
ゲンが擦り寄ってきている。
そして、撫でてくれ、と言うように
前足で、俺の足をカリカリとかいている。

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ゲン・・・
・・・そうだよな。
やっぱ、このまま何も言わずに去るのは
ダメだよな・・・

俺は、ゲンの頭を軽く撫でると、
“すずたん”に思い切って切り出す。

「あの・・・
 この前の飲み会のこと
 なんですけど・・・」

「あぁ、うん」

“すずたん”は、じっと俺の目を見ている。

「・・・ホントに、すみませんでした」

“すずたん”は、頭を下げている俺を、
少しの間、黙って見ている。
え?なに、この沈黙???
うぅ・・・怖い・・・
なんて言われるんだ・・・

俺が、恐る恐る顔を上げると、
“すずたん”は、
ゆっくりと重々しい口調で、
話し始める・・・

「オノ君・・・」

「はい・・・」

「とりあえず、飲もうか」

「え?」

“すずたん”は、持っているコンビニの袋を掲げてニヤッと笑う。

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「立ち話もなんだしね」

「あ・・・じゃぁ、はい」

「あれ~?なんか緊張してる?」

「あ・・・いや」

「ハハ、そんなオノ君見るの、
 初めてだよ~」

そう言って、笑いながら
家の方に歩いていく“すずたん“。

「・・・ハハ・・・」

う~ん、なんだか気が重い・・・
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか
足元では、しきりにゲンが
俺の足に、まとわりついていた。