こんなに好かれるなんて・・・
今日は、去年のカラオケ大会のDVDを
見させてもらいに、
マルオと一緒に、“すずたん”ちへ。
すずたんちへ向かう途中、
マルオは口数少なく、なぜか緊張しているようだ。
「あれ?お前、すずたんち初めてじゃないじゃろ?」
「あ、はい・・・」
「え?なんで緊張しとん?」
「いや、緊張しとる・・・っていうか・・・」
まぁ、いいか。
今日は、去年のカラオケ大会の映像を見て、
色々参考にせんと!
ピンポーン。
『オノです』
『おっ、いらっしゃい~
ワンワン!!!!』
珍しいな。インターホンの後ろでゲンが吠えてる。
ガチャ。
ドアを開けると、ゲンが
吠えながらフローリングを
ツルツルと滑りながら、走り込んでくる。
ワンワン!!!
「ひぃぃぃっ!!!」
その瞬間、マルオが俺の後ろに隠れる。
「どしたん???」
「・・・こわい・・・」
「はぁ???怖い???でも、
この前、来た時は平気だったんじゃろ?」
「いや・・・実は、
必死に逃げとったんです・・・」
ワンワン!!!
「ひぃぃぃぃっ!」
「・・・そんなに??!!」
「いや、ワシ動物全般無理なんじゃ・・・」
マルオはずっと俺の後ろに隠れながら、
ゲンを遠ざけながら、部屋に入っていく。
「どうしたのマルオ君」
“すずたん”は、俺の後ろに
隠れるマルオを見て
不思議そうに見ている。
「なんかコイツ、ゲンが怖いらしいです」
「え?そうなの?」
「いや~ワシ、動物がちょっと無理で・・・
特に犬は・・・
昔、咬まれてから・・・」
「大丈夫大丈夫、コイツは咬まないから」
“すずたん”は、ゲンを抱っこし、
別の部屋に連れて行く。
「よし、じゃぁ見ようか~」
こたつのテーブルには、
“すずたん”が用意してくれた
赤ワインと山盛りの枝豆が。
「“すずたん”、このセット好きですよね~」
「いや~これはもう、私のルーティーンだから。
ま、遠慮せずにどうぞ~」
「ヤッター!いただきま~す!」
俺とマルオは、ワインを一口飲み、
枝豆をつまむ。
ん~!!!!枝豆のほどよい塩味~
赤ワインと枝豆って、正直合うのか?
って思ったけど意外とイケる!
去年のカラオケ大会の映像が
流れ始めると、3人で、
テレビ画面を見つめる。
まず、会場が、結構
ちゃんとしたホールでびっくり。
公民館の一室とかでやるのかと思ってた・・・
トップバッターから、演歌を中心に
歌っている。
着物を着ていたり、
タキシードを着ていたり、
みんな服装もちゃんと選んでる・・・
「次は私だね」
「おっ!!きたきた!え・・・・・」
そこには、派手な
アロハシャツを着た“すずたん”が。
すずたんは、尾崎紀世彦の
「また逢う日まで」を熱唱している。
♪2人でドアを閉めてぇ~
2人で名前消してぇ~
その時心はぁ~何かを話すだろぉ~~う
うん・・・“すずたん”の当日の服装は、
みんなでちゃんと選ばないとな・・・。
「ひぃぃぃぃぃっ!」
突如、マルオが叫び声をあげる。
「え??!!どした?」
隣の部屋に連れていかれたはずのゲンが
いつの間にかマルオの隣で
鼻をクンクンしている。
「うわぁぁ~~な、なんで・・・?」
すると、ゲンは突然、
マルオに抱きつかんばかりに迫っている。
「うわぁあぁ~助けてくれぇぇ~~!!」
「ゲンはマルオ君が相当好きみたいだね~」
「そんなぁ~~~~・・・・」
マルオは、ついにあきらめたのか
ゲンにされるがままに。
「ほら、触ってみいや~」
俺がけしかけると、
マルオは震える手で、
恐る恐るゲンに手を近づける。
「え・・・え・・・」
すると、ゲンは
マルオの手にスリスリと擦り寄っていく。
「え?・・・ワシ・・・好かれとる??」
理由は、よく分からないが、
普段、人見知りのゲンがここまでなるなんて、
相当気に入られたみたいだ。