アイツとの再会
トイレットペーパーや歯磨き粉などの
日常品が切れたので、
近所のスーパーに久々に
買いものに行った。
ちょうど、お昼どきの
時間だったからか、
3~4台あるレジには、
お客さんがズラーと長蛇の列を
作っている。
レジの方を見ると、
横にはこんなポスターが。
『セルフレジ導入しました』
とある。
でも、セルフレジとはいえ、
全部が機械まかせなわけではなく、
ここのセルフレジは、
店員が、今まで通り、
商品のバーコードを
ピピッと読み取り、
会計をお客さんに、
レジの後ろにある機械で
やってもらう方式。
あれ?でもセルフレジになったってことは、
店員の仕事は減り、
会計の時間は短縮するはずじゃ。
っていうかそのために入れるんだよな。
まぁ、導入したばかりで店員さんも
機械の操作に手こずってるのかもしれない。
そう思って、隣のレジの方を見ると、
1人の東南アジア系の男が働いている。
「あ・・・アクバルだ」
先月、小さな女の子のために、
天井に飛んで行った風船を
取ってあげようと
共に協力をしたアクバル。
(詳しくは過去記事で)
そのアクバルが担当するレジにも
長い列ができていたが、
どうせならと、あえて、
その列に並ぶことに。
俺の事覚えてるかな・・・?
「アノデスネ~・・・
エ~~コノボタンオシテネ」
アクバルを見ていると、
会計をする機械の前のお客さんに
お世辞にも上手いとは言えない日本語で
一生懸命に説明している。
なるほど、機械の操作に慣れてないのは、
店員じゃなくて、お客さんの方だったのか。
こりゃ、当分の間、長い行列が
できそうだ。
俺の順番が来ると、アクバルは元気に
挨拶をする。
「オマタセシマシタ~
フクロツケル?」
アクバル、1か月前は、
ほとんど日本語喋れないっぽかったのに、
結構、喋れるようになってる・・・
でも、どうやら俺には
気づいてないようだ。
「コレ、シールデイイカ??」
「はい」
っていうか覚えてなさそうだ。
そりゃぁ、毎日たくさんの人と
接客してるんだろうしな、
異国の地で、働くのだけでも
そりゃぁ、大変だろうし、
人の顔なんて覚えてらんないよな。
でも、なんか俺だけ覚えてるのって
なんか悔しい・・・。
そう思って、俺は、レジを
通り過ぎた後も、わざとらしく、
アクバルと目を合わせようとする。
すると、アクバルも
オッという顔をして
こちらを向く。そして、ニコニコ顔で
近づいてくる。
おっ、やっと思い出してくれたか。
「オ~~~ナニシテマシタカ」
「いや~別に何もしてないけど・・・」
「アレカラ、ホラ」
アクバルは、嬉しそうに
短く切った爪を見せてくる。
そうか、あの女の子の風船を
割っちゃった時に俺が忠告したのを
覚えてくれてたんだ・・・
(詳しくは過去記事で)
「お、おう」
すると、隣のレジ担当の
オバちゃんから怒号が飛ぶ。
「ちょっと!!!!アクバル!!!
なにしてんの?!!
持ち場に戻って!!!」
俺と話している間に、
いつの間にかアクバルのレジには
長蛇の列が・・・。
アクバルは、俺に耳打ちする。
「アノオバチャン、チョ~ウザイ」
こらっ!アクバル。
そういう日本語覚えちゃ、メっ!!