ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

    f:id:peraichikun:20190105020429j:plain f:id:peraichikun:20190105020439j:plain

通り雨のあとに

 f:id:peraichikun:20190105020429j:plain f:id:peraichikun:20190105020439j:plain


先日、一年ぶりに、
大学時代の友人たちと会った。

いつもつるんでいた
4人のうちの一人タカが
3年前、病気で亡くなってから
毎年、そいつの誕生日近くになると、
集まり、墓参りするのが恒例になっている。

大学卒業と同時に、
何を思ったか、俺は、役者を目指し、
今ではフリーターという
フラフラ具合だが・・・・
俺以外の3人は、
まっとうに就職し、働いていた。

「あ!!リョウさん!!久しぶり~」

「おう!ぺら!」

f:id:peraichikun:20190215012048j:plain

 

リョウさんは、浪人した分、
年齢が一つ上で、4人の中で、
アニキ的な存在。
東京でサラリーマンをやった後、
地元に帰って、教師になり、
2年前には結婚、子供もできた。
今日のために、はるばる地元長野から
バスで駆けつけてくれた。

「かわいい嫁さんと子供ちゃん元気?」

「おう、毎日風呂入れさせるのが俺の仕事よ」

「え?嫁さんを???」

「アホか!」

「ハハハ!!」

昔は、こうやって一緒にバカ話ばっかしてた
リョウさんも、すっかりパパだ。

「あ、ヒガシも来たで」

向こうから、嫁と子供を
引き連れたヒガシがやってくる。
ヒガシは、大学から大学院に行った後、
化学メーカーに就職した。
俺らの中では一番早く結婚し、
子供も二人いる。

「お~!ヒガシ~・・・・」

俺とリョウさんは目を合わせ、絶句する。

あれ・・・?
ハ・・・ハゲとる?!!!
去年まで、大丈夫だったのに・・・?!

「おー、ゴメンゴメン。
 途中、子供が中々動かんで」

小学生ほどの男の子が、
ヒガシに手を繋がれ、
まだ3歳ほどの小さな男の子が、
スレンダーな若々しい奥さんに抱っこ
されながらイヤイヤをしている。

しかし、俺とリョウさんは、
ヒガシの薄くなった頭にしか
目がいかない。
もうしわけ程度に残された頭頂部の髪が
ハゲを一層きわ立たせている。

f:id:peraichikun:20190215012144j:plain

 

おまえ・・・
ハゲ散らかしとるやないかっ!
今すぐ、そうイジリ倒したいものの、
奥さんがいる手前、
俺とリョウさんは、
二人でグッと笑いをこらえる。

「じゃぁ、行きますか」

駅からタクシーに乗って、
亡くなったタカの墓があるお寺へ。
寺の境内に入ると、
それまで晴れていた空が、
急に曇りだす。

ピカッ!ゴロゴロ!!!

「こりゃ、一雨くるな~」

俺たちは、お墓の入り口で、
水を汲み、タカの墓に向かう。

「おーい、タカ~。また来たぞ~」

「俺らもなんとかやってるぞ~」

杓子の水でお墓をキレイに流し、
お供えの花を入れ替える。

サーーーー・・・・

うわっ、さっきまで
あんなに晴れてたのに、
いきなり霧のような小雨。

「この雨・・・タカが挨拶に来たみたい」

ヒガシがボソッと言うと、リョウさんも
それに同調する。

「あいつ・・・雨男だったもんな~」

「そうだな~!ハハハ!!!」

f:id:peraichikun:20190215012204j:plain

 俺たちが笑い合っていると、
いつの間にか雨は上がり、
晴れ間が射していた。