俺の大家さんが人気の理由
今日は、バイト後、ヒロセと
大家さん家に向かう。
「俺、大家さんち来んの始めてやわぁ~」
「え?そうだっけ?」
でも・・・まさか、こんなに、
大家さん家に、人が来たがるとは。
ここんとこ、すごい頻度で
大家さん家に集まってるような気がする。
でも・・・いくら俺たちが居心地いいからって
毎日のように大人数で押しかけてもな・・・。
まぁ、大家さん優しいから、今は
来るもの拒まずで、受け入れてくれてるけど。
案外、無理してる部分もあると思う。
大家さんだって、
ちょっとは、一人の時間が欲しいと思うし。
俺だって、たかだか数日間、
派遣社員のハマーンが居候に来ただけで、
ストレス溜まりまくりだったもんな・・・
ピンポーン
大家さん家のインターホンを鳴らすと
聞き覚えのある声が。
「どちら様でしょうか?」
・・・サヨちゃん?
また来てんのか。
「あ、オノです」
「あぁ。どうぞ、お入りください」
「いたぁぁぁぁぁいっっっ!!!」
ん???
大家さんの叫び声・・・
「え?ココっすか?」
え?タクマの声・・・
あいつもいるのか?
でも、な、なにしてるんだ・・・?
「お~、オノ君ぅぅん・・・お疲れぇぇぇぇ」
リビングに入ると、サヨちゃんと、
床にうつ伏せになった大家さんに
またがっているタクマが。
「タクマ・・・え?なんで?」
「あ、ぺらいちさんじゃないですかぁ~。
あれ?もしかして、この前のこと
まだ気にしてます?大丈夫っすよ!
俺はもう、怒ってませんから~」
・・・いや、俺が
怒ってたんだよ!!!
「・・・で、何してんの??」
「マッサージっすよ。フーンっ!」
「あっ!いっ!たっ!!・・・
ちょっと、最近腰が痛くてね・・・
うっ!イタっ!!」
大家さんは悲鳴を上げている。
すると、横で見ていたサヨちゃんが
タクマに指導している。
「ちょっと失礼致します。
押すときは・・・点ではなく、
面で押すと良い、かと」
「へぇ~、さっすがサヨちゃん!
プロは違うな~」
「あぁ~気持ちいい~~
いやぁ~~、マッサージ資格持ってる
サヨちゃんがいてくれて助かったよ~~」
「いえ、そんな大層なものではございません」
まさかサヨちゃんにそんな特技が・・・
そうだ・・・マルオの事、
大家さんに相談しなきゃ。
「あのぉ・・・大家さん」
「んん?なに?」
「あのぉ・・・もうすでに、
こんなにいっぱい人がいるのに
なんなんですけど・・・
ココに来たいって言ってるやつがいて・・・」
「うん、いいよ」
「え?いいんですか?」
「そりゃぁ、こんなとこに来たいって
言ってもらえるんなら光栄だよ」
「でも、これ以上来たら
迷惑じゃないですか?」
「全然、迷惑じゃないよ~。
カラオケの練習も
多い方が楽しいし」
「でも・・・」
「いやいやホントに逆に助かってるよ。
最近ゲンの散歩行くのもしんどいから、
サヨちゃんにも、よく行ってもらうしね。
それに、この家にこんなに
若い人の声が溢れるのは、
何年ぶりだろう・・・
タクマ君にもマッサージしてもら・・・
がっ!!イタっ!!」
すると、どこからか、柴犬のゲンが
テクテクと俺の前に歩いてきて、
お腹を見せてゴロンと横になる。
俺がポカンと見ていると、
横からサヨちゃんの声がする。
「お腹をさすってあげると喜ぶ、かと」
「へ?あぁ・・・」
サヨちゃんに言われた通り、
お腹をさすると
ゲンは気持ちよさそうにしている。
それを見てみんなが笑う。
「アハハ!ゲン笑うてるみたいやで!」
「ホントだ!」
あぁ・・・なんなんだろう。
この暖かい空間は。
大家さん家に来ると、不思議と
普段抱えてるモヤモヤとかが
薄れていく・・・。
俺も含めて、みんなが
大家さん家に来たがる
理由がなんとなく分かった気がした。