なんでそんなに行きたいの?
「じゃぁ、オノ君も、
休憩行っていいよ~」
「は~い・・・」
やっとか・・・
店長のこの言葉を
どれだけ待ち望んだか・・・
フゥ・・・
病み上がりはやっぱりキツイ・・・
休憩室に入ると、先に
休憩していたヒロセと
タクマが話している。
「え~~~~?!
大家さんとこ行ったん?!!
なんで・・・
なんで誘ってくれへんねん!!!」
「あ~、そういえばこの前、
ヒロセいなかったね~」
「いなかったね~!ちゃうやろ!!」
ヒロセがタクマに
向かって叫んでいる。
そして、矛先は俺の方にも・・・
「なんや!!ぺらいっち!!!
この前も俺に黙って、みんなで
カラオケに行ったらしいやないか!!」
「いや・・・この前は
たまたま集まっただけで・・・」
「なにぃ~~~?!俺だけ
のけモンかいな・・・」
ヒロセはがっくりうなだれている。
「いや、そんなに行きたかったなんて
知らんかったから・・・」
「行きたいに決まってるやろ!!」
「そうなんじゃ・・・」
「いやさ・・・なんや
あの大家さんと会うと
癒されるいうか・・・」
すると、タクマもそれに同調する。
「分かるわぁ~、大家さん、
俺らの話めっちゃ
ウンウン聞いてくれるし」
「せやねんな!!」
まぁな~・・・俺も
バイトでめっちゃ疲れた後でも、
あそこに行くもんな~
みんな、なんだかんだで
大家さんに惹かれてるんだな。
「それに、かわいい
サヨちゃんもいるし~」
ハァ・・・コイツは例外か。
「お前は、サヨちゃんさえおれば、
ええんじゃろ?」
「え~?!!もしかして
妬いてんのぉ~~??
自分がモテないからって~~」
「なにぃぃ?」
「大人げな~い、もう30過ぎでしょ~?」
コイツ・・・
俺は、だんだんイライラしてきて、
自然と語気が強まる。
「うっさいバカ。
お前もいずれそうなるんじゃ!」
「は?バカ?
あ、サヨちゃんも言ってたよ~
オノさん、おっさんだって!!」
ハァ???
こうなると、もう止まらない。
「は?あんなブスから
どう思われようが
どうでもええし!」
「はいはい。そんなこと言ってるから、
ぺらいっちはその年まで
彼女いないんじゃない?」
「は?余計なお世話じゃ!
おまえは、女とイチャついとけ!
でも、もう大家さんとこには来んなよ!
迷惑じゃけ!」
「いや、全然、あんなとこ、
行きたくもないね~!
じゃっ!俺はサヨちゃんと2人で
仲良くやりますわ~~」
「勝手にやってろ!」
タクマは、手を振りながら、
休憩室を出て行く。
残された俺とヒロセ。
くそっ、腹が立つ・・・
「あーあ。やってもうたな・・・」
「ええよ!あんな奴!」
「あ・・・俺も、もう休憩終わりや」
休憩室から出て行こうとしたヒロセが
ボソッとつぶやく。
「まぁ・・・分からんでもないけどな・・・」
「は?なにが?!」
「いや、実は、アイツ親父おらんらしいからな」
「・・・・・・知っとるよ」
そうか・・・
タクマは大家さんのこと・・・
・・・俺はクソだな。