ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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絶対ババアを倒す!!

「“すずたん”!もう最初の

 ♪うつむきかけたぁ~のトコで、

 全然うつむきかけてない!!
 もっと悲しげに!はかなげに!!」

自分の恋愛以外の事には、
ほとんど熱くならないタクマが
珍しく張り切っている。

「う~ん、難しい。ちょっと休憩しない?」

「ダメダメ!もっかい!」

実は昨日、“すずたん”には内緒で、
今週末の老人カラオケ大会の
前回前々回の優勝者の偵察に行ってきた。

その優勝者のお婆ちゃんは、
表はニコニコ顔だけど、
裏はマジクソムカつくババア。
あんな奴には負けて欲しくない・・・と
俺たち“すずたん応援部”は燃えていた。

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「“すずたん”!!!絶対優勝しましょう!!!」

俺がそう言うと、“すずたん”は苦笑いしている。

「いやいや、優勝はさすがに無理だよ~」

「何言ってるんですか!
 やるからには、優勝目指さないと!」

「そーだそーだ!!」

マルオもゲンと戯れながら、拳を突き上げる。

「ど、どしたの~?急に。
 今日はみんな、なんだか怖いよ・・・」

「え?そ、そうですか・・・?」

俺がマゴついていると、
すかさず、ヒロセが入ってくる。

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「実は昨日、見に行ってん!」

「え?なにを?」

「前回優勝者!!」

「え?・・・えーー?!会ったの?」

「せや!あんなババアに
 負けとったらあかんやろ!」

「え?話したの?」

「まぁ、ちょっとやけどな。
 マジでクソババアやったわ」

「あ~、会っちゃったか~」

「なんかスゲー、上からモノ言われて
 俺たちムカついてんスよ」

と、タクマも横から入ってくる。

「まぁ・・・あの人は、
 自分に自信があるから・・・

 実際上手いし」

「敵を褒めてどうすんねん!」

「いやいや、ハナからあの人を
 抜こうなんて思ってないから」

「え~!!そんな弱気じゃ
 アイツに勝たれへんって!」

「いや、だから・・・
 勝とうと思ってないんだって・・・」

“すずたん”は苦笑いして言う。

「でも・・・昨日“すずたん”のことバカにされて、
 俺たち許せないんですよ」

俺がそう言うと、タクマも反応する。

「そうそう、大会出ない方がいいとかも
 言ってきたらしいじゃないですか!」

そうだ・・・
昨日の記憶が蘇ってきて、
怒りがフツフツと湧いてくる。

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「まぁまぁ。昔からあの人は、そうなんだよ。

 私の妻とも仲悪かったから。
 私の妻がいたときは、ずっと2位だったからね」

「え?!“すずたん”の奥さん、
 そんなに上手かったんですか?」

「ん~まぁね。そのせいで、
 私は比較されて大変だったけど」

そうか、あのババアは、
“すずたん”の奥さんに負けたことを根に持って、
“すずたん”に辛く当たってたのか・・・

「ま、カラオケは、楽しく歌うのが一番!
 あの人はあの人。気にしない気にしない~」

“すずたん”は笑っている。

すると、隣の部屋で
ゲンと遊んでいたマルオが戻ってくる。

「よっしゃぁ!!じゃぁ絶対優勝じゃぁ~!
 ワシ、あんな奴に負けとーない!」

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「だーかーらー!」

“すずたん”は、腕をあげ、
マルオを殴るフリをする。

「ハハハ!」

いやー、“すずたん“って
お人好しというか、大らかというか。

でも、俺、自分以外の人のために、
こんなにも腹が立ったのって
久しぶりだな・・・。