布教活動
クシュンッ!クシュンッ!
バイトの大学生マルオが
くしゃみを連発している。
「風邪?」
「そうなんですよ。なんか昨日から
ノドの調子がおかしいんですわ~」
「じゃぁ、まずイソジンだね」
俺は、バッグからイソジンを出して
マルオに渡した。
「えー!? ぺらいちさん、
イソジン常備しとるんですか?」
マルオは、驚きと共に俺を見る。
俺は、数年前まで役者をやっていた
のだが、体質的に扁桃腺が弱く、
風邪を引くとまずノドが痛くなる。
役者にとっては致命傷。
その頃から、ノドのケアには
気を付けるようにしており、
ノドに違和感を覚えたらすぐに
イソジンでうがいをしていた。
実際、その習慣を始めてから、
のどが痛くなる頻度が格段に減った。
それ以来、
俺はもう『イソジン信者』となった。
「あのね、変な薬飲むよりも、
絶対イソジンよ!」
しかし、イソジンはあくまで異変を
感じてからの予防。
本当に重要なのは、普段から
『龍角散のど飴』を舐めることだ。
知ってる人は少ないかもしれない
けど、もともと『龍角散』は白い
粉末状のもの。
苦くて結構飲みづらい。
俺は何度もむせて、白い粉を
部屋にぶちまけた・・・。
だから、『龍角散のど飴』なるもの
を初めて発見したときの喜びと
言ったらなかった。
甘い!美味しい!手軽!
持ち運び便利!
食べやすい!ノドに良さげ!
『龍角散のど飴』の良いところを
あげたらキリがない。
それ以来、
俺は『龍角散のど飴信者』となった。
「日頃から『龍角散のど飴』を舐め、
ヤバイなと感じたら『イソジン』で
うがい。このダブルブロック効果で、
俺は二年間風邪知らずだね」
そう言って、マルオに龍角散のど飴を渡す。
「えー?それもくれるんですか?
あざっす! じゃけど、なんでも
持っとるんですね、ぺらいちさん」
その噂は瞬く間に広がり、バイトの
中でも『龍角散のど飴信者』が続出。
ノドが痛そうな人を見つける度、
俺はすぐさま龍角散のど飴を差し出す。
「ぺらいちさーん!すみません!
龍角散のど飴くれませんか?」
「あいよ」
「ぺらいちくーん!アレちょうだい!」
「あいよ」
「ゴホッ。ゴホッ。」
「あいよ」
なんだか最近、龍角散のど飴の減りが
やたらと早くなった気がするが、
まぁいいか。
二日後。
「ゴホッ・・・」
ん?なんだかノドが・・・。
いやいや、
俺はイソジンと龍角散のど飴で
予防してるから大丈夫!
「ゴ、ゴホッ、ゴホッ」
いやいや、そんなハズは・・・・・・。