ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

    f:id:peraichikun:20190105020429j:plain f:id:peraichikun:20190105020439j:plain

KA・BU・KI


「KA・BU・KI!KA・BU・KI!」

タクマが中華鍋を振りながら、叫んでいる。

「今日も頑張るぞ~!!!」

タクマは、なかなか、デートに行ってくれない
サヨちゃんを、歌舞伎デートに誘おうとしている。
しかし、歌舞伎は、けっこうお金がかかると聞き、
急きょ、店長にかけあって、
シフトを大幅に増やしてもらったらしい。

「歌舞伎、歌舞伎、言うてるけど、
 歌舞伎のこと知ってんの?」

ヒロセはタクマにつっかかる。

「いや・・・」

「ハハハ!そんなんで、
 歌舞伎見に行っても恥かくだけやて」

ヒロセが笑うと、
今度はタクマがつっかかる。

「じゃあヒロセ!おまえは知ってんのかよ!」

「ハ、ハァ?そりゃぁ、知ってんで!」

「何を知ってんだよ!」

「・・・拙者親方と申すは、
 ご存じのお方もござりましょうが、
 お江戸をたって二十里上方・・・

ヒロセは、いきなり早口でまくしたてる。

「なんだよそれ」

「あら?ご存じない?『外郎(ういろう)売り』」

f:id:peraichikun:20190415030630j:plain

 

なつかしい・・・
『外郎売り』とは、声優や俳優が、
発声練習や滑舌を鍛えるために暗唱する
10分くらいに及ぶ歌舞伎の演目。
そういえば、俺も役者やってた時、
散々やらされた・・・

「タクマ、『外郎売り』くらいは
 全部暗唱できんとな」

ヒロセはドヤ顔で、タクマに言う。

「こういう知識をサラッと出すと、
 女の子は
ワぁ~、そんなことも
 知ってるの?ステキ―ってなるんや」

いや、ドン引きされるじゃろ・・・
まぁ、でも歌舞伎のこと全然
知らんよりはええんか?

そこで、俺も休憩中、
少しだけ歌舞伎の事を
ネットで調べてみると、
意外と耳寄りな情報が出てくる。

「タクマ!!今、調べたらさ、
『イヤホンガイド』と『筋書』っていうのを
 借りた方がいいらしいよ!」

「なにそれ?」

「上演中の歌舞伎のセリフや背景を
 分かりやすく解説してくれるらしい」

「へぇ~そんな便利なものが!」

「うん、2つで2000円じゃけど!」

「オッケ!」

「これで安心やなタクマ」

ヒロセは、タクマを小突く。

「それでさ、演目と演目の間に
 30分くらいの
幕間っていう、
 お食事タイムがあるらしいんよ」

「へぇ~」

「座席でも食べれるらしいけぇ、
 注文しとけば
スマートじゃろ?」

「ほぉほぉ。ありがとう!
 ぺらいっつぁん!!」

「うん。だいたい1000円くらいで、
 一番良いのじゃと
3500円くらい」

「オ、オッケ!!」

「ちなみに、歌舞伎の席の値段も
 色々あるんじゃってよ?
 6000円とか4000円の席も
 あるらしいよ?

 幕見席っていうのに至っては、
 1000円でいけるらしい!!
 まぁ、ほぼ立ち見みたいなもんだけど」

「いや!!どうせなら一番値段の高い、
 最高の席をとる!」

タクマは豪語する。

f:id:peraichikun:20190415030650j:plain

 

「え?一番高いのって、
 確か2万くらいやろ?」

ヒロセが言うと、
タクマの顔が一瞬引きつる・・・。

「に、2万・・・?!!」

「タクマ~、そない頑張らんでも、
 サヨちゃん、実家、金持ちなんやろ?
 出してもらえば、ええや~ん」

「そんなの、男がすたる!!」

タクマ、かっけぇ・・・
確かに、サヨちゃんは、
家にお手伝いさんがいたという
くらいのお嬢さんだけど・・・
例え、金が無くても好きな子の前では
カッコつけて、オゴりたいんだよな・・・
分かる・・・
でも二人で4万か・・・

「よう言った!!頑張れ!タクマ!!!」

俺が言うと、タクマも応える。

「おう!!!」

f:id:peraichikun:20190415030707j:plain


「はぁ~・・・今は、男女平等の時代やで!
 俺なんか、ラブホ代ですら、
 平気で割り勘とかしてんで、ハハ」

ヒロセ・・・