5日前
年甲斐もなく落ち込んだ。
久々に見つけた恋・・・
もうどうしようもなく
恥ずかしくて、辛くて・・・
この気持ちを整理するのに
時間がかかった。
5日前、アンナの誕生日会で
アンナがバイトを
辞めると聞いたとき、
突然のショックと同時に、
辞めることを
知らされていなかったことに
とても動揺した・・・
なんで言ってくれなかったんだろう。
言おうと思えば、
いつでも言えるはずだったのに・・・
結局、俺はアンナにとって
その程度の存在だったんだな・・・
なんだか胸にポッカリ穴が
開いたような感じだった。
そして、アンナの誕生日の翌日、
アンナの最後の出勤の日、
バイトをやめていくアンナに
俺はどうしても
プレゼントを渡したかった。
その日は、平日なのに、
東京ドームで
「スーパージュニア―」とかいう
韓国のアーティストのライブがあって、
お店も結構、混んでいた・・・。
別に韓流を否定する気はないけど、
今日ばかりは韓流アイドルを恨んだ。
誰だよスーパージュニアって。
どうでもいいよ!
最後なのに・・・
最後なのにぃぃぃぃぃ!!!!!
全然アンナと話せない・・・
その日は、結局、忙しさに追われ、
アンナと休憩時間もかぶることもなく、
ほとんど話しもできなかった。
だから休憩中、
ダメもとで、LINEを送ってみる。
『今日終わったら
二人で飲みに行かない?』
・・・・・
チラチラとLINEを開いて、
既読がついてから、
返信がしばらく来ない間、
心臓が破裂しそうだった。
『ちょっと用事があって・・・』
えっ、そ、そんな・・・・。
あっ、でも、ここで、
引き下がってはダメだ・・・!
『渡したいものがあって、
ちょっとでいいんだけど・・・』
『わかりました!』
おっしゃ!!!
チャンスだ。
最後のチャンス。
『じゃぁ、終わったら、
スカイフラワーのとこで』
バイトが終わったのは、夜11時30分頃。
アンナの終電まで1時間もない・・・
ドームシティのイルミネーションは
もうクリスマス仕様だ・・・
そうか、もうそんな時期か。
あ~、クリスマスを
アンナと過ごせれば!!
なんだか胸騒ぎがする。
アンナにプレゼントを渡して、
そして・・・
俺の気持ちも、伝えたい。
もう、最後かもしれんし・・・。
そういえば、タクマは、
もうプレゼント渡したんだろうか・・・
もし、もう渡して、
告白なんかしてたら・・・
そしてもう二人は付き合ってたりしたら
とてもサブいことになる・・・
「お待たせしましたっ!」
走ってきたアンナからは、
いい香りが漂っている。
「ごめんね。急に呼び出して。」
「渡したいものって、なんですか?」
「これ、誕生日プレゼント」
「え?! わ~~!
ありがとうございます!!!」
「開けてみてや」
「え~?いいんですか?」
アンナの笑顔。
やっぱりかわいいな・・・
「え?!ジェラート・ピケ~!!!?」
「・・・もしかして、好きじゃない?」
「え~~!いや、
らしくないっていうか、
ぺらいちさん、なんか
メルヘンチック~アハハ!」
くぅぅ。この笑顔が俺のものになれば・・・
けど!
「あの、オレ・・・アンナのこと好きじゃわ・・・」
「・・・・・え?」
「その・・・付き合ってほしい」
うわ~~~、言っちゃったよ。
死にそう・・・。
「え~~~?!ちょっと?!本気ですか?」
え・・・・・
「だめ、かな・・・?」
「私、彼氏いますよー!!」
うわぁ・・・・・
こ、声が出ない・・・
「だっ!!だよね~~!!!!
タクマ?でしょ??」
裏返った声で必死に取り繕うので限界だ。
「タクマ?!!何言ってるんですか~!
違いますよ~~!」
「え?ちがうの?」
「いや、普通のサラリーマンですよ。
あ、そういえば、
ぺらいちさんと同い年?かな~」
「え??」
同い年・・・まじかよ・・・。
「それで、彼が
海外勤務になりそうなんで、
結婚して一緒に行くんですよ~!
それもあって、バイト辞めよって」
うへぇ・・・
結婚、海外勤務・・・
しかも俺と同い年。
そりゃ、俺なんて眼中にないよな・・・
ううう・・・
「そうなんだ!!
まぁ!さ!!!ね!!また二人で飲もうよ!」
「ハハ!だから~
海外行っちゃうんですって~」
うわ~そうだよ・・・
何言ってんだ俺。
もう、消えてしまいたい・・・
告白なんて、しなけりゃ良かった・・・・・・
もうここにいるのが辛い・・・
「じゃあ・・・終電でしょ?
あ!!!それは、嫌だったら、
捨ててくれていいからね!!」
「アハハ~!わかりましたっ!
じゃぁ・・・」
「うん、元気で・・・」
クリスマスまで1か月。
東京ドームのイルミネーションが
キラキラと輝いている。
♪きっと君は来ない~
一人きりのクリスマス・イブ~
俺の頭の中では、
山下達郎の「クリスマス・イブ」が流れていた・・・