ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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無理してでも

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今日はバイトが早番で
夕方に上がれることになっている。
丁度アンナも今日は夕方で上がる。

どっか行こうって誘いたいな・・・。

この前、服を選んでもらった時も、
お茶でもしようと思ったんだけど、
アンナ、用事があって
急いでいる風だったから、
結局、そのまま別れちゃったし・・・

でもなぁ、断られたらショックだなぁ・・・

そうこうしているうちにアンナは
着替えをすませて帰ろうとしている。

すると、店の入り口に人影が。

「アンナー!一緒に帰ろうよ!」

タクマ?なんで?今日は出勤じゃないのに。

「丁度授業終わってヒマだったからさ。
 今日早番でしょ?これからなんかあんの?」

「えー。別にないけど。」

「じゃ、いいじゃーん。
 ドームシティで遊んで行く?」

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タクマが恋のライバル宣言をしてからというもの、
明らかにアンナへのアタックがものすごい。
事あるごとにアンナに話しかけ、軽妙なトークで笑わせている。
でもまさか、待ち伏せまでするとは・・・

年も近いから話も合うんだろうな。
アンナもまんざらでもなさそうだし・・・。
いやいや、ダメだ。
このままだと完全に置いてけぼりにされて
この恋の競争から脱落してしまう。

「俺もいーれてっ」

俺は気まずさと恥ずかしさをごまかすために、
わざと甘えた声で必死に割り込んでいく。

「えっ、キモっ!」

う・・・
いつもながらのアンナの毒舌だ。
しかし勇気を振り絞ったかいもあり、
3人でドームシティで遊ぶことになった。
しばらく歩いていると、
アンナがいきなり叫ぶ。

「これ乗ろうよ!」

目の前にそびえたつタワー。
その頂上からワイヤーで吊るされた
パラシュートのような形の
ゴンドラが上り下りしている。

その名も「スカイフラワー」。
アンナはこういうのが好きらしい。
大体女の子ってこういうの好きなんだよな・・・。
俺は昔から絶叫系はもちろん、
高所恐怖症で、
こういうアトラクションが大の苦手だ。

「いいよー」

タクマも全然平気そうだ。
くそぉ、俺は一人で地上に残り、
二人が乗るのを見ていようか・・・。
いやいや、ここで男を見せなくてどうする俺。

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「うわぁ~!おもしろそぉ~!」

俺はムリヤリ明るい声を絞り出すが
声が震えてしまっている・・・

係員の案内に従って、ゴンドラに乗ると、
合図とともに、急上昇を始める。

こえぇぇぇぇえええええええ!!!!

あまりの高さに足が震えてしまう。

「うわ~すごい景色ぃ~~ほら見て!」

アンナはとても楽しそうだ。
だが俺はそれどころじゃない。
落ちる!ゴンドラの柵が低すぎて落ちそう!
俺は怖すぎて思わず目をつぶってしまう。
だめだ、なんとかカッコつけないと。
でも目は開けられない。開けたら死ぬ。

「ヤバーイ!!この景色ヤバイね!」

俺は目をつぶったまま、
恐怖を振り払うように、
なんとか大声で叫ぶ。

その後、何度か上昇と下降を繰り返し、
ゴンドラは地上に戻っていく。。

・・・ふぅ、なんとか生還できた。

「わ~~楽しかったぁ~」

ゴンドラから降りた後も、
アンナははしゃいでいる。
その後ろからタクマも
ゆっくりと歩いてくる。

「ねぇ!もう一回乗ろうよ!」

え!!・・・・もうさすがに無理。
しかし、アンナは
もう一度乗る気マンマンだ。
その時、いきなり横から
タクマが出てきてアンナを制する。

「いや!もういいでしょこれは!」

よく見ると、タクマの顔面は青白く、
足もガタガタ震えている。
そういえば、途中から
何も喋らなくなってたような・・・。

タクマ・・・
まさかおまえも無理してたとは・・・

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