ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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恋はいつも真剣勝負

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先日、“フットサルをやろう”と
バイトの大学生が呼び掛けると、
10人ほど集まった。

そして、マネージャーと称して
俺がひそかに恋するアンナも
参加することに!

お昼過ぎ頃、集合場所の
フットサル場に着くと、

「ぺらいっち!」

バルセロナのユニフォームに
着替えたタクマが俺を
手招きして呼んでいる。
いつの間にか呼び方
“ぺらいっち”になってるし。
まぁいいか。
タクマは先日、
俺の恋愛アドバイザーを
自ら買って出てくれた
自称“恋愛マスター”のイケメンだ。

「チャンスっスね」

「なにが?」

「カッコいいところを見せる
 チャンスですよって」

なるほど、一応俺は、
中高サッカー部で経験者(補欠だけど)
ここでは未経験者が大半なので、
アンナにカッコいい姿を
見せられるかもしれない。

「じゃぁ・・・
 まずはホンダ作戦っすね」

「は?」

タクマ曰く、
サッカー日本代表本田圭佑は、
高校時代、敵チームのマネージャーに
一目ぼれし、
“この試合に勝ったら、
付き合ってくれ”と言い、有言実行。
そして、その敵チームだった
女子マネージャーが今の奥さんらしい。

「ぺらいっちも、
 アンナにバシッと言うんすよ」

「いや、スケール違いすぎるし!
 それは真剣勝負の試合だから
 カッコイイんであって、
 こんな遊びのフットサルに、
 真剣さなんて微塵もないよ?」

「ハァ・・・」

タクマは肩をすくめ、
両手のひらを上にあげて
呆れたというような
ジェスチャーをしている。

「だからぺらいっちは、ダメなんスよ。」

「ハァ?」

「恋はいつも真剣勝負っスよ。」

なるほど・・・
ってやっぱりおかしくないか?

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しかし、タクマの
妙に真剣な眼差しに、
またうまく丸め込まれた気がする。
でも・・・このまま
進展しない状況が続くなら、
行動を起こして失敗したほうがいい!
やれることはやってやるぞ!
俺は真剣な眼差しでベンチに
座っているアンナへ
ゆっくり近づいていく。
 
「アンナ、次の試合
 ゴールを決めたら
 俺とデートしてくれ」

「え?いいですよ~」

え?!!軽いっ。
てかいいの?!
思わぬ即答にこちらがビックリする。
冗談だと思ってるのかな。
まぁでも、言ってみるもんだな!

そして試合開始。
周りは初心者が大半と言えど、
何年も運動をしていないブランクはデカく、
中々思うように動けない。
やっと少し動けるようになってきた時には、
スタミナも底をつきそうだ。
時計を見るとまだ5分も経ってない・・・

ハァハァ・・・しんどい。

長年のタバコもたたって、
連続で走ると吐き気がする。

オエッ

これ、ゴールなんてムリかも。

チラッとベンチの方を見ると、
真剣な表情でグラウンドを
見つめるアンナがいる。

・・・いやっ、やるぞ!
 
「ぺらさーん!」

その時、俺の頭上に
フワッとしたロングパスが。
俺はそのボールを胸でトラップ、
そこからノーバウンドでボレーシュート
自分でいうのもなんだが、
華麗なボレーシュートだ。
そして俺の放ったボールは
ゴールに一直線に向かっていく。
いけええー!!!

「甘いっ!!!」

相手キーパーのタクマの
横っ飛びキャッチのスーパーセーブ。

おい!!!

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「ななんでおまえが止めんだよ!」

「あ・・・つい」

タクマは慌ててボールを
ゴールに投げ込むが
そんなオウンゴール
ゴールと言えるのか・・・
結局俺は最後まで
ゴールを決められず・・・。

がっくりと肩を落としている俺に
タクマが言う。

「だから恋は真剣勝負だって
 言ったでしょ」

・・・うるさい!!