ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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マンガ「奇妙な共同生活」

今日の記事はマンガ。

主役は・・・
今年の1月まで、俺のバイト先にいた
派遣社員ハマーン。
競艇狂いのせいで、家を追い出されたと、
突然、俺の家に訪ねてきて・・・

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そうそう。
こうやってムリヤリ、
転がり込んできて、
オッサンとオッサンの
数日間の共同生活が始まったんだよ。

ハマーン・・・。
今は、どこで、どうしてるのやら・・・

そんなことより!
かわいい巨乳の女の子、
まだ、紹介してもらってないよ!
ハマーン!!!


過去の記事はコチラ↓ 

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うちの店長は、どんな人でも採る


「なんなんだよ、この店は!!」

店内にお客さんの怒号が響く。

「なになに、どうした?」

俺がホールに出ていくと、
大学生のカサハラがお客さんに対応している。

「申し訳ございませんでした・・・」

「もういいっ!もう帰る!」

立ち上がり、店を出ていくお客さん。

あー・・・帰っちゃった・・・
俺は、カサハラに事情を聞く。

「何があったん?」

「いや・・・なんか、
 アンドゥの態度が悪いって・・・」

「え~~?!!」

カサハラの隣には、アンドゥが
立っている。

「そうなの?アンドゥ?」

「俺は、ただ料理、
 置いただけですけど」

アンドゥは、悪びれもせず、
眉間にシワを寄せている。

いや・・・目つき怖いし・・・
お客さんが怒るのも分かる気がする・・・

「でも、乱暴に皿を置いたんじゃないの?」

「普通に置きました」

アンドゥは、俺を睨みつける様に言う。

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「いや、その顔だって。
 一応、接客業だから、もうちょっと
 笑顔つくるとかさ・・・」

「もともと、こういう顔なんで」

コイツ・・・

今年の新人は、クセモノ揃いだ・・・。
アンドゥと同時期に入ったタカタさんも、
声が小さすぎて、聞き取れないし・・・
この前なんか、
ウーロン茶と、ウーロンハイを
間違えて出すし。
その時は、お客さんが
優しくて許してくれたけど、
万一、お酒を未成年にでも
出してたら、間違えましたじゃ、
済まされない。

っていうか店長、人を見る目、なさ過ぎ。
人手が足りないからって、
誰かれかまわず、採用しすぎなんだよ!
くそっ、もう我慢できん・・・
俺は、イライラしながら店長のところへ行く。

「店長!今回の新人、
 なんで採ったんですか?

 明らかに飲食店に向いてないですよ!!」

俺は、店長に怒りをぶちまける。

「そう?」

店長は、素知らぬ顔だ。

「いや!だって!態度、最悪だし!
生意気だし!使えんし!!」

一通り、俺の愚痴を聞いた店長は、
ニコニコしながら言う。

「いや~、でも実は、オノ君も
 最初は、採用するかどうか
 迷ってたよ?」

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「え“~!!!な、ホントですか??」

「だって、フリーターなのに、
 無駄に学歴だけ高くて
 扱いづらそうだったからさ~」

「え!???」

「プライドも高そうだし」

「え・・・」

「それに・・・」

「いや!もういいです・・・」

マジかよ・・・

・・・まぁ、新人も、
働き始めたばっかだし、
もう少し、様子を見るか・・・

ウィスパー接客

バイト先に、
新人のタカタさんが入ってきて
一週間ちょっと。
でも、まだ3回目の出勤だ。
タカタさん専属の教育係のマルオは、
つきっきりで指導している。

「よっしゃ!じゃぁ!まず挨拶から!
 この前教えた接客7大用語覚えとる?」

「えっと・・・」

タカタさんは、メモ帳を取り出し、読み上げる。

「・・・しゃいませ。
 しょう・・・まちください・・・」

「アハハ・・・緊張しとる?
 もうちょい、声が大きくなると、
 ええんじゃけどね~」

「・・・ハイ」

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そう、タカタさんは、至近距離でも
聞き取れないくらい声が小さい。

タカタさんは、気を取り直したように、
背筋を伸ばす。

「・・・まりました。・・・いたしました」

「うん・・・いい感じ!」

・・・マジか。

「じゃぁ、今日は、実際にお客さんに
 接客してみようや~」

「・・・ハイ」

「いい?まず、おしぼりを渡して、
『いらっしゃいませ~』って言って、
『お茶は、セルフサービスになっております』
 って言うんよ」

「い、いらっしゃいませ・・・
 お茶はセルフ・・・」

タカタさんは、つぶやきながら
メモに書き留めている。

「お、ええよ~ええよ~メモは大事よぉ~」

「・・・」

タカタさんは、少し恥ずかしそうにしている。

「で・・・
『ご注文が決まったら、ボタンでお呼びください』

 って言って、帰ってくるんよ」

「・・・わかりました」

「ハイ、じゃぁこれ、おしぼり持って」

不安そうに、お客さんのところへ向かうタカタさん。
マルオと俺は、陰からこっそり観察。

「マルオ、大丈夫なん?あの子」

「大丈夫よ。メモだってとるし。
 すごい真面目なんじゃけぇ」

いや・・・そうじゃなくて。

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タカタさんの初めての接客の相手は、
競馬新聞を手にしたオジさん。

「・・・ビスです」

「・・・え?」

「お茶・・・ルフ・・・・ビス・・・す」

「・・・ん?」

「お茶??あー、これね!」

案の定、オジさんも
タカタさんの声が、聞き取れなかったらしく、
何度も聞き返している。

「おい、マルオ。やっぱり、まだ
 お前が行った方がええんじゃないん?」

「いやいや、大丈夫よ。
 こういう時に、メモが役立つんじゃけ!」

「・・・タンで・・・びください」

「・・・ん?」

「ご注・・・ボタ・・・で」

「・・・は?」

やはり、聞き取れないらしい。

そして、ついには、タカタさんは、
何を思ったか、自分の持ってるメモ帳を
オジさんに見せる。

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おいおい、ウソだろ・・・
メモ帳、お客さんに見せちゃったよ・・・

「あ~~、ボタン?コレ?」

オジさんも、ようやく理解できたようで、
タカタさんは、笑顔で、こちらに戻ってくる。
隣のマルオを見ると、
我が子を見る様に微笑んでいる。

「・・・ネ!」

マルオは、俺に向かって
グッと、親指を立てる。

・・・ネ!じゃねーよ!!


届け!!

昨日は、世間が、平成最後だとか、
令和おめでとうだのと騒がしかった。
なんか色んな場所に
大勢の人が集まって、
お祝いをしていたらしい・・・

「っていうか、そんなに祝う事なの??
 みんなで集まって、
 一体、何するんじゃろうか?」

俺は、バイトの帰り道、
隣のマルオに話しかける。

「さぁ・・・?
 騒ぎたいだけなんじゃ
 ないんかのぉ?」

マルオも、あんまり興味無さそうだ・・・。

「そんなことより、ぺらいちさん!
 ワシ、ゲンに会いたい!」

「え?今から??・・・」

そして、俺は、マルオと
2人で“すずたん”ちへ。

「久しぶりじゃぁ~
 ゲン、元気かのぉ~」

「おまえ、そればっかりじゃのぉ~」

「いや~~、ワシの興味は、
 カープとゲンだけじゃけぇ~」

ピンポーン。

“すずたん”ちに入ると、
いつものように、ゲンがダッシュで
マルオを迎えに来る。

「お~~!ゲッンーーーー!!
 元気じゃったかぁ~~」

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玄関でゲンと戯れているマルオを残して
リビングに入ると、“すずたん”がキッチンの方で
誰かと話している。

「あれ?サヨちゃん?!!」

「こんにちは」
サヨちゃんは、軽く会釈する。

「あ~、オノ君、いらっしゃい」

“すずたん”は、そう言って手を挙げる。

サヨちゃん・・・来てたんだ・・・
タクマ、あれから、歌舞伎誘ったのかな・・・?

「そうですか・・・」

「そうだよ~」

サヨちゃんと“すずたん”は、話しながら
キッチンからリビングの方に歩いてくる。

「・・・だから、そんなに悩むことじゃあ
 ないんじゃないかなぁ~」

そう言いながら、サヨちゃんの後ろで
“すずたん“は、俺に目配せしてくる。

あ・・・やっぱタクマのことか?

「・・・どうしたの?」

俺が聞くと、サヨちゃんは静かに喋り始める。

「実は、タクマさんに、歌舞伎に行こうと
 誘われたんです」

「へ、へぇ~・・・」

「ぺらいちさんには、
 前にも話したと思いますが、わたくし、
 歌舞伎は、あまり気が進まなくて・・・」

「・・・うん」

「でも、タクマさんには、どうしても、
 と言われるし・・・」

うん、あんなに大嫌いって
言っていた歌舞伎なのに
悩んでいるという事は、
タクマの熱意は、伝わってるのかも??
なんとか、あと一押し!

「実はさ・・・」

俺はおもむろに話し始める。

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「アイツ・・・サヨちゃんと歌舞伎に
 行きたいって、ずっっと言ってたんだよね~」

「???」
サヨちゃんは、なぜ?
というような顔で見ている。

「それに・・・行くなら最高の席だ!っつって
 一番高い席を予約したもんだから、
 そのために、夜な夜なスゲー,
 バイトしててさ・・・」

「え??」

サヨちゃんは、驚いた顔をしている。

「それで、いっつも青い顔してるから
 働きすぎ!って言っても、
 全然聞かなくてさ・・・」

「それは・・・存じ上げませんでした。
 わたくしには、一般席のチケットを貰ったと・・・」

「あ、そうなの?」

さすがタクマ・・・。

「そっか・・・
 ま、アイツも嫌がると思うから
 この事は、言わないで欲しいんだけどね」

サヨちゃんは、頷いた後、
少し考えると、ゆっくりと口を開く。

「・・・承知しました。
 行かせて頂きます・・・」

「ホントに!!?」

サヨちゃんは、早速LINEで
タクマに返事を送っている。

すると、俺のスマホに即着信が。
タクマからだ。

「あ、ちょっと、ごめん」

俺は、廊下に出て、電話に出る。

『もしもし?!ぺらいっち!!!
 今、サヨちゃんから連絡来た!!』

タクマの喜びが
電話越しからでも伝わってくる。

『おう~良かった良かった!』

『ぺらいっち、今、どこ???
 今からそっち行っていい??』

『え?!いや、今は・・・』

今、来たら・・・さすがに
俺もタクマも、カッコ悪ぃぞ・・・

すると、玄関にいたマルオがゲンを抱えて
話しかけてくる。

「あら?何をコソコソ話しよるんじゃ?」

「あ!しーーー・・・・」

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ワンワンワン!!!
あーー・・・っ!

『あれ・・・?ゲン?』

『いやいやいや、違う違う。
 まだ外にいるから・・・
 今日は、ゴメン』

『おっけー。分かった!
 じゃぁ、また明日!』

ふぅ~~アブね~・・・

「え?誰じゃったんですか?」

マルオは、無邪気に笑っていた・・・。

熱意

「おはよう!タクマ!」

「あ・・・おはよう・・・」

タクマから生気が感じられない・・・

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それもそうだ。
サヨちゃんを誘うために、深夜の派遣バイトまでして
1人2万円もする歌舞伎の
最高級チケットを予約したのに、
サヨちゃんが歌舞伎嫌いだなんて・・・
しかも、チケットのキャンセルもできなかった・・・

「あのさ、昨日
 “すずたん”に相談しに
 行ったんだけどさ・・・」

俺が、タクマにそう切り出す。

「え?!!!・・・・で、何て?」

タクマは、藁にでもすがるような目で
喰いついてくる。

「タクマ!!とりあえず、
 サヨちゃん、誘ってみようや!」

俺はタクマの右肩をたたき、檄をとばす。

「え?何、言ってんの?」

タクマは、ポカンとしている。

「いやいや、だから誘ってみなきゃ
 分からないでしょって」

「いや、でも・・・
 歌舞伎が嫌いって言ってるのに、
 わざわざ誘ってみる価値ある?」

タクマは少し呆れた様子で言う。

「あるよ!タクマだって、大変な思いして
 手に入れたチケットでしょ?」

「そうだけど・・・絶対ムリでしょ。
 嫌いって言ってんだから」

「それは、お前が直接、
 サヨちゃんに聞いたことじゃ
 ないじゃろ!?」

「・・・そうだけど!そんな
 可能性が無いことしなくてもさ!」

タクマの語気も荒くなってくる。

「可能性って言うけどさ、
 失敗するのが
 怖いだけなんじゃないん?」

「ハァ?」

タクマは、コチラを
挑戦するような目で見てくる。

「そもそも、可能性重視なら、
 サヨちゃんなんか狙わんじゃろ!?

「お前は、サヨちゃんと歌舞伎に
 行きたいと思ったんじゃろ?
 そのために、寝る間も惜しんで
 働いとった!
 じゃったら、恥かいても、
 何があっても、
 ど~しても、君と歌舞伎に行きたいんだ!って、
 誘えばええと思うんよ。
 そしたら、意外と
 オッケーしてくれるかもしれんし。
 ダメだったら、ダメで、また歌舞伎以外で
 誘えばええ。
 嫌いって他人から聞いたから、止めました、
 じゃ、サヨちゃんに何も伝わらんじゃろ!」

「・・・」

タクマは黙って俺の話を聞いている。

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「何を観に行くか、
 じゃないんじゃない?
 人の心を動かすのは、
 結局、熱意なんよ!!!」

「熱意・・・」

タクマはじっと俺の目を見ている。

「・・・分かったよ。誘ってみる。」

「よっしゃ!!」

俺はタクマの肩をポンポンと叩く。

「・・・でも、まさか、ぺらいっちに
 恋愛を教わるとはね」

タクマの表情が緩む。

「へっ・・・まぁ、ほぼほぼ
 “すずたん”の受け売りじゃけどね・・・」

「ハハハ。やっぱりね!
 ぺらいっちにしては
 やけに筋が通ってると思ったよ~!」

「何を~~!」

「ハハハ」

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実際、俺がタクマに言った言葉は、
ほとんど“すずたん”の受け売りだけど、
昨日、“すずたん”に言われて、
俺もハッとした。

相手の反応を気にするあまり、
嫌われないよう、失敗しないように
相手のことを思うフリをして、
結局、自分の思いや熱意を
伝えようとしてこなかったのかなって。

だから、今の、
金ナシ、女ナシ、仕事ナシの
俺のフリーター人生があるのかなって。


爆勝!!!

カープがやばい!!!熱すぎる!!!
4/17の巨人戦から怒涛の8連勝!!!
昨日は負けてしまったけど・・・
最大8あった借金も一度は全て完済。

「10日前がウソのようじゃ~・・・」

マルオも上機嫌だ。

「そうよ。この前まで、
 もう今シーズンは、ダメかもしれん・・・
 って、あきらめかけとったけぇね・・・」

「やっぱり、巨人戦で逆転勝ちしたのが
 デカかったですよね!!!」

「そうそう!!」

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そう、ホントに、あの日が
ターニングポイントになった。
開幕から、あの日まで、
打てない、抑えられない、守れない、で
どん底の試合が続いていて、もちろん最下位。
このままだと・・・

まだ100試合以上残っていたけど
4連覇どころか、Bクラス(6位中4位~6位)も
ありうるという状況で、
チームが浮上するきっかけすら
掴めないでいた・・・。

そんな時の、あの4/17の熊本での巨人戦・・・。
あの日も、2-2で迎えた8回裏に、
昨シーズン、広島からFA移籍した
丸選手の、古巣への挨拶代わりと言わんばかりの
2ランホームランを浴びせられ、万事休す・・・
あぁ・・・今日もダメか・・・と
中継を見ていた俺も、意気消沈していた・・・

しかし、カープは、
9回表に、一挙に3点を取り、大逆転勝利。

あれは、完全に、丸のホームランで、
火が付いた。
そして、あの日からチームに、
スイッチが入ったように
8連勝!!!!

「でも、今は勝ちまくっとるけ、
 いいけど、長いシーズンじゃけ、
 逆に負け続けることもあるけぇ、
 覚悟しとかんにゃぁね・・・」

「えっ?!いやじゃ~~っ!
 もう、あのどん底の頃には
 戻りたぁない~・・・」

マルオは絶叫している。

「お前・・・この前、勝ち続けるのも
 つまらんって、言いよったじゃろ・・・」

「いやぁ~・・・やっぱり、
 勝つ方がええですわ~」

「お前なぁ・・・」

まぁ、そりゃぁ、そうだ・・・
どんな時でも、ワシらはカープを応援するんよ!
頑張れ!カープ!!!

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不可!!!

数日前、ばったり遭遇したサヨちゃんから
衝撃の事実を知った。

歌舞伎を好きではない、むしろ嫌いだと・・・

その時、タクマに電話したけど、
派遣のバイトなのか、繋がらず・・・

とりあえず、歌舞伎のチケットをキャンセルさせないと・・・
と思い、タクマにLINEは送っといたけど・・・

そして翌日、タクマから折り返しの電話がきた。


『もしもし、ぺらいっち?どうしよう・・・』


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いつになく、タクマの声に元気がない。
よく考えたら、そりゃぁショックだよなぁ・・・
歌舞伎のチケットのために、寝る間も惜しんで
お金貯めてたのに・・・
サヨちゃんが歌舞伎嫌いなんて・・・

『まぁ、元気出せよ・・・。とりあえず、チケットは
 キャンセルするしかないじゃろ・・・』

俺がそう言うと、タクマの泣きそうな声が
返ってくる。

『チケット、キャンセルできない・・・』

『え?なんで?!!』

タクマ曰く、歌舞伎のチケットは、
現金払いだろうが、クレジット払いだろうが
基本、キャンセルできないのだそうだ・・・。
マジかよ・・・

『ぺらいっち・・・買ってくんない?』

『え、ちょ、ちょっと待って、2万でしょ??』

『いや・・・俺のも合わせて4万』

『なんでやねん!!』

じょ、冗談じゃないっ!!!

確かに、俺も、歌舞伎を薦めたうちの一人だから、
責任感じなくはないけど・・・

いや!そもそも最初に、
歌舞伎が良いって言い出したの
俺じゃないし・・・!!カサハラだし・・・!

ともかく!俺にそんな余裕はねぇ・・・!!!

タクマには、なんとか
他の策を考えると言って
電話を切った。

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う~ん、どうしよう・・・
ここは、年の功を頼りに
“すずたん”にでも相談してみるか・・・
今月の家賃の支払いも、
まだだし・・・

「あのぉ・・・
 ちょっと相談があるんですけど・・・」

「おっ、久しぶりだね。相談?」

“すずたん”は座布団で寝転がるゲンを
撫でている。

「あ、とりあえず、家賃を・・・」

俺は“すずたん”に家賃の入った封筒を渡した後、
タクマがサヨちゃんを誘うために、
歌舞伎の一番高い席を予約したことを話す。

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「歌舞伎かぁ~、いいねぇ~
 私も大好きで、けっこう見に行くよ!」

「あ、そうなんですか!」

おっ、これは
もしかして“すずたん”なら
チケット買い取ってくれたり・・・

「それが・・・」

俺は、サヨちゃんから、歌舞伎が大嫌いだという事を
聞いてしまったこと、そしてタクマが
歌舞伎のチケットをキャンセルできなくて困っていることを
順を追って、“すずたん”に話す。

「・・・ということなんです・・・
 一体どうしたらいいか・・・」

すると、黙って、俺の話を聞いていた
“すずたん”は、ゆっくりと口を開く。

「誘ってみなきゃ、
 分からないんじゃない?」

「え・・・?」

あ、そうか・・・そうかもな・・・。

無計画のツケ

バイトからの帰り、コンビニで
買い物をしていると、
ばったり、サヨちゃんと遭遇。
サヨちゃんは、“すずたん”こと
俺の大家さんが所有する
女子寮に住んでいる女子大生。
“すずたん”ちでのバーベキュー以来だ。

「あれ?サヨちゃん?久しぶり~」

「あら、ぺらいちさん」

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サヨちゃんは、ふ菓子の袋を二つ手に取って
買い物カゴに入れる。

「ふ菓子、好きなんだ?」

「ええ」

サヨちゃん、やっぱ変わってるなぁ・・・
カラオケの選曲だって、かなり渋かったし。
たしか『銀座の恋の物語』だったっけ?

そういえば、タクマは、
もうサヨちゃんを歌舞伎に
誘ったんだろうか?
俺は、さりげなく探りを入れてみる。

「でも、やっぱりサヨちゃんって
 古風なモノが似合うよね」

「そうでしょうか?」

「え~絶対そうでしょ~!
 例えば、歌舞伎とかさ」

「歌舞伎は、好きではありませんね」

・・・・・・・え?!!!!

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「マジで?」

「ええ、むしろ嫌いです」

「えぇぇぇぇ!そんなに?!!
 え?だって、日本舞踊とか、
 やってたんだよね?」

「やっていたと言うより、
 やらされていた、と
 言った方が正しいですね」

「へ?」

「もう、嫌で嫌で仕方がなかったんですが、
 やらないと、母がうるさくて。
 東京の大学に出てきたのも、
 日本舞踊を辞めたかったからです」

「へ、へぇ~~そうなんだ~」

・・・やばいっ!!!

なんか勝手にサヨちゃんのこと、
古風なもの好き=歌舞伎好き
って、思い込んでた。
しまった・・・・

この感じだと、タクマはまだ
サヨちゃんを誘っていなかったのか・・・?

でも、1人2万円もするチケットは、
もう予約したって言ってたし、
タクマは、それ買うために
深夜の派遣バイトまでしてたのに・・・
チケットのキャンセルとかって、
できんのか???

俺はサヨちゃんと別れた後、
急いでタクマに電話をかける。

くそっ、出ない・・・
今日も派遣のバイトか?
タクマーーー!!やべぇことになったよぉぉぉ!!!

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わがままなカープファンです

開幕から波に乗れず、
投打が噛み合わないどころか、
打てない、抑えられない、守れない、の
いいトコ無しで、メディアには、
優勝確率0%とか
言われていた広島東洋カープが
復調しつつある。

17日に熊本で巨人に
劇的な逆転勝ちを収めてからというもの、
只今、怒涛の5連勝。
単独最下位も脱出し、まさに鯉のぼりのように
上昇気流に乗っている。

カープの勝ち負けで、
1日のテンションが左右される
俺は、もうテンション上がりまくり!!

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「やったのぉ!!!マルオ!!」

バイトの大学生で、
俺と同じく広島出身カープファンの
マルオに声をかける。

「はい」

あれ・・・?カープが勝っとるのに、
マルオのテンションが、あまり高くない。
すると、マルオが言いづらそうに
口を開く。

「あのぉ・・・、こんなこと言ったら
 怒られるかもしれんのじゃけど・・・」

「ん?」

「なんか・・・・・・
 勝ってばかりじゃと

  面白うない・・・というか」

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「はぁ?????」

何を言いよんじゃ?!こいつは。
選手たちは、いつだって勝つために
必死にやりよるのに!!!

「いや!もちろんカープが勝つのは、
 ぶち嬉しいんじゃけど、
 負けて負けて、どうにもならん時の方が
 応援に熱が入るいうか、
 熱く燃え上がるようなものが、
 こみ上げてくるんよね・・・」

うーん・・・そう言われれば、
まぁ確かに、負け続けてる時は、
「なんしょんじゃ!」って叫ぶくせに、
勝ち始めると、負けてる時よりも
熱が少し下がるのは、ちょっとあるかもしれんけど・・・

「やっぱ弱いもんを応援するんが
 好きなんですかねぇ、ワシらは」

マルオは、呟いている。

「う~ん。まぁ、カープは
 昔からずっと弱かったし、
 他球団に比べて、

 貧乏球団じゃけぇね・・・」

「その弱いカープが、
 ナニクソって、

 巨人とかのスター軍団を
 苦労して苦労して、

 倒すのが、爽快感があるのに・・・
 去年まで毎年、ほぼ独走状態で
 3連覇してしもうたけぇね・・・」

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うーん、確かに、昨年までの
ペナントレースは
目立った対抗馬もいなくて、
正直、ちょっとマンネリ感はあった・・・
元々弱いチームだからこそ、
一旦、常勝軍団みたいになってしまうと、
なんか居心地悪いというか・・・
順調に行き過ぎても、
面白くないっていう・・・
そういう意味では、
今シーズンの開幕からの大苦戦も
いい意味で盛り上がれる
要因になるかもしれん・・・

「じゃぁ・・・もしかして、
 開幕序盤に負け続けたのも、
 松田オーナー(カープのオーナー)
 の策略?演出かも?」

マルオが、ニヤニヤしながら冗談を言う。

「アホ!プロの世界で、
 そんな器用なこと、
 できるわけないじゃろ!」

さすがに、それは無いとしても、
今シーズン、万が一、
ここから、奇跡の巻き返しをはかれば
カープファンは大いに盛り上がるだろうし、
現在4位とはいえ、その可能性も
ゼロではない雰囲気も、
どことなく漂ってきた。

いやぁ・・・それにしても、
負けまくったら、腹が立って、
勝ちまくったら勝ちまくったで、
もっと刺激が欲しくなる、って・・・

ファンって、めんどくさっ。笑


背に腹は代えられぬ

舞台の稽古で、バイトに入れないと言っていた
ヒロセが久々にバイト先に顔を出してきた。
なにやら色んな人に
ビラを配りながら話しかけている。

「カサハラ~頼むわぁ~~、
 絶対損はさせへんから!」

「いや~、その日はちょっと・・・」

「え~!!じゃぁ、トミーは?
 お前は観に来てくれるやろ?」

「えっと・・・確認してみます」

「おう、ホンマ頼むで!メールでええからな!
 おっ!!!!ぺらいっち!!!」

ヒロセは、俺を見つけると、
走って向かってくる。

「ぺらいっちは、当然、
 観に来てくれるんやろ?!」

「は?」

「ぶ・た・い!!俺の!!」

ヒロセは、無理矢理、ビラを俺の手に
つかませる。

「あぁ、舞台ね」

「はい!!全日程、予約ね!
 おおきに~!!」

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え・・・まだ、なんも言ってないけど。
まぁ、全日程は無理でも
1日くらい、観に行ってあげよう。

俺も役者やってたから、
気持ち分かるしな。
実は、小劇団の舞台に出る役者って、
ギャラをもらえるどころか、
大体30~40くらいの
チケットノルマがあって、
そのノルマを達成できないと、
足りない分、自腹になってしまう。

ただでさえ、舞台の稽古で
バイトに出られず、キュウキュウなのに、
さらに自腹なんて・・・って
俺もノルマ達成するために必死だった・・・。

昔から仲のいい友達は、
付き合いで、毎回、来てくれたりするけど、
舞台のために時間と
お金をかけてくれる人って
けっこう限られてくる・・・。

それでも、演出家には、
「役者になろうってのに、
 40~50人も集められないなら
 やめちまえ!」なんて言われるし、
実際のところ、お客さんを集められるかで
配役も変わる・・・

「アンドゥ~~!おねが~い!」

ヒロセは、あろうことか新人のアンドゥにも
声をかけている。
最初は、アンドゥのこと、
自分のシフトが無くなるから、
イジメて追い出そうって言ってたのに。

背に腹は代えられんということか・・・
でもそいつは、
無理だと思うぞ、ヒロセ。

「金、無いんで」

アンドゥは全く相手にしていない。

「分かった!半額でええから!!」

「いや、ヒマでもないんで」

「え~~・・・」

やっぱり・・・。

ヒロセは、一通り、
バイトに声をかけた後、
店内のいたる所に
舞台のビラを貼り付けていく。

「よっしゃ、これでよしっ!!」

おいおい・・・さすがに
店の入り口のドアに貼るなよ・・・


ヒロセが帰った後、
店長が叫んでいる。

「おい!なんだよコレ!!」

ヒロセが店内に貼り付けたビラは
ことごとく店長に、はがされていく・・・。

「あ!こんなとこにも!!
 なんなんだよ!コレ!
 ダメだよもう!!」

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ヒロセ・・・頑張れ~